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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.11 お客様事例

RPシステムを利用した試作品造り

シャープ株式会社様は、テレビ、パーソナルコンピュータ、電子レンジ、冷蔵庫などをはじめとした商品の開発、生産を行う世界的な電機メーカです。国内はもとより、東南アジアの拠点であるタイをはじめ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、中国、ブラジル、アメリカ、イギリス等、販売拠点は32カ国、事業所は67カ所があり、世界各国に開発、生産、販売拠点を誇っています。昨年9月にロストワックス・樹脂プロトタイプ用レーザー焼結システムEOSINT-P350(独EOS社)をHZSよりご導入いただき、開発部品の試作において大きな成果を出されています。今回は、RPシステム導入の背景、RPシステムを利用しての試作について、今後の課題などを中心に、生産技術開発推進本部 生産技術開発センター 電化生産技術開発部 主任研究員 亀山様、電化システム事業本部 本部長室 副主任 中野様にお話をお伺いしました。

事業内容について

電化システム事業本部では、冷蔵システム事業部、調理システム事業部、空調システム事業部、ランドリーシステム事業部、ハウスエレクトロニクス事業推進部の4事業部と1事業推進部が同じ敷地内に隣接していまして、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、洗濯機など白物電化商品を一括して開発、生産、販売しています。

この業界では、このように一カ所に集まっているのは珍しく、この環境を活かして融合した製品開発を進めています。同じ敷地内ですから、人を集めてプロジェクトを組めば、すぐに新しい製品が開発できる便利性があり、1つのコンセプトに基づいた"モノづくり"が行いやすくなるわけです。

また同じ敷地内に、電化商品開発研究所があり、2~3年先の商品を開発しています。

海外では、タイ、フィリピン、中国、マレーシア、ブラジル、アメリカ、イギリスなどに白物電化商品の事業所があります。

タイ、中国では一部設計も行っていますが、基本的には日本で企画、設計し、その国の風土にあった製品を生産するようにしています。当本部としては「消費地生産、消費地販売」を基本としております。日本市場においては、ほんの一部輸入している部分はありますが、ほとんどの製品を日本工場で生産し出荷しています。

また、会社全体の事業展開として現在は、情報端末ツール「ザウルス」やパーソナルコンピュータ「メビウス」、ビデオカメラ「液晶ビューカム」など液晶を中心にマルチメディア時代に向けた取り組みをしています。その他に、映像機器「フラットハイビジョンテレビ」、音響関連ではMDやヘッドホンプレイヤー、携帯電話、PHS関連にも力を入れています。

人物写真
生産技術開発推進本部
生産技術開発センター
電化生産技術開発部
主任研究員 亀山 様
人物写真
電化システム事業本部
本部長室 副主任 中野 様

RPシステム導入の背景について

近年、エレクトロニクス業界では開発期間の短縮、リードタイムの短縮が騒がれています。

機器寸法

hwd
プロセスキャビネット1900mm200mm1250mm
コントロールキャビネット1600mm700mm1100mm
最大造形寸法340mm340mm590mm
EOSINT
ロストワックス・樹脂プロトタイプ用
レーザー焼結システム
EOSINT-P350装置

当社も例外ではなく、この状況の中で商品の開発期間の短縮を目的に、RP(ラピッド・プロトタイピング)システムを検討し始めました。既に光造形システムSOUPを導入していましたが、機構部品の強度的な問題や、大物の試作品を作りたいという要望がありましたので、いろいろ検討した結果、1997年9月にHZSからロストワックス・樹脂プロトタイプ用レーザー焼結システムEOSINT-P350を導入しました。

EOSINT-P350での試作

これまでは、試作品を専門業者に外注して10日~2週間程度かかっていたのですが、EOSINT-P350を使うと3~4日で試作品が作成できるようになりました。

EOSINT-P350で試作品を作成するためには、3次元データが必要です。現状では、部分的に2次元で設計を行っている箇所もあり、3次元設計を100%行っているわけではありません。また、製品の種類により、3次元に取り組んでいるものとそうでないものとがありますので、EOSINT-P350を試作に使っているのは、全体の20%弱程度だと思います。

エアコンに関しては、全部品の試作品をEOSINT-P350で作成しており、既に生産段階に入っている製品もあります。

エアコン部品の試作は4日ほどあればできます。

エアコンの形状は長さが800mmぐらいあるのですが、EOSINT-P350の最大造形の大きさが340mm×340mm×590mmのため一度に作ることができないので、形状を半分にして試作するなど工夫をしています。

また、エアコンの内部はたくさんの部品で構成されていますので、設計が終わった部品から製作していくという手順にしています。

実寸法の試作品以外にも縮小モデルを作って、全体の確認も行っています。

これまでは、コストや納期の問題から、ある程度設計や仕様が固まったものでなければ試作には入らなかったのですが、EOSINT-P350導入後は試作品が短期間で作成でき、形状をすぐ確認できるので、設計後すぐに試作に入るようになりました。もし、作成した試作品に都合の悪いところがあれば、データを修正して再度EOSINT-P350で作成するという具合いに手軽に利用しています。

また、EOSINT-P350導入時には大物の試作だけを考えていましたが、小さな部品までも作成依頼がありますので、予想していた稼働率の倍になっています。

EOSINT-P350の効果

試作をEOSINT-P350で行うことにより、設計者のスキルアップにもつながりました。たとえば、ボスがリブを貫通しているような問題のある図面でも、金型メーカにその図面を出して依頼すると、手直しをして製作してくれるようなことがありました。そのため、実際の設計者には問題になっている部分がわかりませんでした。

それが、設計者のデータを直接使ってEOSINT-P350で作成するとボスがリブを貫通した形状ができるので、図面に問題のある部分を設計者にフィードバックでき、検図としても活用するようになりました。今では金型メーカに出す前に修正できています。

その他にも、3次元設計のスキルアップにもつながりました。モデルにボスを付け加える場合、画面上では接合しているように見えても、EOSINT-P350で作成して、材料の粉を取り除いてみるとモデルとボスが別々に作成されるということもありました。データを確認するとモデルとボスの間に隙間ができていました。それからは、設計の段階で設計者がそのことを理解してデータを作るようになりました。

また、EOSINT-P350にデータを入力する前にもCADデータからSTLデータに変換した形状データを、ポジショニングなども考えながらチェックをしています。CAD側で正確な3次元データが作成されていない場合は、必ず画面上(GRADE/Artes)に黒っぽい箇所ができますから、そのときは設計者に確認をして対応するようにしています。

EOSINT-P350の特長

<何でも作成できる>

EOSINT-P350を導入する前は、光造形システムSOUPで試作品を作成していました。SOUPは表面がなめらかでありますが、少し強度不足な点があり、EOSINT-P350は強度的な問題はないが、表面のなめらかさに欠ける等からSOUP、EOSINT-P350それぞれの性能、長所、短所を理解して、効率よく使い分けるようにしています。

エアコンの室外機のファンをEOSINT-P350で作成して実際に室外機に入れて運転してみましたが、問題はありませんでした。

EOSINT-P350は、3次元データがあればどのような形状でも作成できます。たとえば球の形状ですが、通常、2つに分けて加工して張り付ける手法を取らないと作成できませんが、EOSINT-P350であればそのままの球の形状を作成できます。

また、アンダーカットがある形状でも、EOSINT-P350で物を作るときは全く問題なく作成できますので、金型手配時には注意が必要です。

<複数の製品の作成>

ひとつの製品だけならEOSINT-P350で6時間程度で製作できるものもありますが、特に急いでいる場合を除いては、材料の使用量と効率の良さを考慮して、いくつかの部品を同時に作成するようにしています。

たとえば、材料が液体であるSOUPで作成する場合、L字の逆形状だと上面を最後に作るので、サポートを積み上げておかないと落ちてしまいます。ところがEOSINT-P350であれば、材料の粉が製品の回りに詰まっていますので、サポートも必要ありませんし、いくつかの部品を3次元的に配置できるので、空いている空間に別の形状を配置することができます。

粉末の積層ですから平面が少し傾くと、ギザギザの段になるので、仕上がりをきれいにするために、ポジショニングにはノウハウが必要です。

<試作品の例>

まず、エアコン用のファンです。1枚1枚のはねも一体化した形状になっています。

これまでは、それぞれの部分を別々に作成して接着剤で貼り付けていましたが、EOSINT-P350で継ぎ目がない一体化した形状が作成できるので、そのまま性能確認もできます。

RP
EOSINT-P350で作成したエアコン用のファン

次に、導入を検討するために試作した電話機です。設計通り精度良く作成できるので、上と下の部品をはめ合わせることも問題なく仕上がっています。

RP
EOSINT-P350で作成した電話機の閉じた状態
RP
開いた状態

次に、電子レンジの操作パネルです。パネルのボタンを指で直接押す感覚や強度などが確認できます。このように量産に入る前にEOSINT-P350で作成して検証できます。

RP
左:RPシステムで作成した電子レンジのパネル部分の試作品
右:量産した電子レンジのパネル部分にカバーを取り付けている
製品
左図のパネル部分が使われている電子レンジ製品

今後の課題、取り組みについて

EOSINT-P350で作成した試作品はナイロンのため、実際の製品のABS樹脂と比べると材質的にまだ堅いという問題があります。EOSINT-P350で使用できる材料との兼ね合いもありますが、本当はABS樹脂等の材料でも作りたいのです。

また、機構部品の検証以外にもデザインモデルとしても利用したいと考えていましたが、今の段階でデザイン的に満足するためには、塗装してペーパをかける仕上げ作業を数回もする必要があります。

しかし、あまり仕上げ作業をすると、形状が崩れますので、最低でも2回程度でできる方法を考えています。

RP造形の段階で、最終的な製品と同等の質感・艶などを出したいというのが理想です。

環境面では、材料の粉を再利用するための作業で、かなりの粉末が飛び散るので、造形機と付帯設備を分離する等の大きな部屋を確保しなければいけません。また、操作をした後に粉末が体、服などに付きますので、そのまま部屋を出ると他の部屋に粉末が落ちてしまいます。最近はワークステーションの横に置けるインクジェットのものが出てきていますので、そういうものと比べるとEOSINT-P350は環境面で考えるところがあります。

小さい部品は2次元で設計しているものが多いのですが、これから3次元設計が進むにつれEOSINT-P350の利用が本格的になると思います。

また、現在のEOSINT-P350の利用は、事業部によってバラツキがありますので、全ての事業部が全部RPで試作をするとなると今の設備では間に合わないでしょう。

HZSについて

価格ですが、まだまだRPの機械、使用する材料の粉末は値段が高いと思います。それとHZSには、EOSINTで使用できる材料の要望をメーカに出して、積極的に研究してもらうように協力していただきたいです。

EOSINTではHZSの1号ユーザだということもあり、連絡するとすぐに来てくれます。また、EOSINT-P350の利用がオーバーフローした場合には、HZSのRPセンターに協力してもらうこともあります。データの容量が大きいので時間はかかりますが、mailでデータ送信が簡単にできるので大変便利です。

おわりに

実際にEOSINT-P350で造形しているところを見学させていただき、材料の粉末を焼結し、粉末を積み重ねるという工程を繰り返すことによって造形されていく様子がよく分かりました。EOSINT-P350の造形が終了すると、造形する領域の縁が硬化してバケツの入れ物のようになり、その中に造形した物が粉末といっしょに入っているそうです。身近な電化製品が、このような試作の工程を経て、製品になっていることがわかり大変勉強になりました。

たいへんお忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

本社大阪市阿倍野区長池町22番22号
創業大正元年(1912年)
資本金2,040億円(平成10年3月31日現在)
従業員24,100名
売上げ高1兆7,905億円(平成9年度)
(国内53%、輸出関連47%)
営業品目ビデオ、テレビ、パーソナルコンピュータ、MDプレーヤー、エアコン、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機などエレクトロニクス製品全般
製品
液晶デジタルビューカム
製品
パーソナルコンピュータ
(Mebius)
製品
Hi-Visionテレビ(FLAT)
電化システム事業本部:大阪府八尾市北亀井町3丁目1番72号
拠点外観
電化システム事業本部

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