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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.11 社長インタビュー

デジタルファクトリ

はじめに

植田 製造業の生産システムを構築するデジタルファクトリ、CAPE(Computer-Aided Production Engineering:生産技術支援システム)とはどういうものか、またどのような効果を期待できるのか、お伺いできればと思います。

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HZS 専務 植田 俊

ガディ メーカに伺うと、新製品を開発するときに、時間の短縮に対するニーズは大変大きいと感じます。メーカでは3次元CADでの設計期間短縮に取り組んでいますが、これももう限界に近づいたのではないかと思います。

トータルで新製品の設計から生産のリードタイムを縮めるためには、設計のデータを生産準備でいかに利用するかです。コンカレントエンジニアリング、サイマルテニアスエンジニアリング、CAPEなどセカンドフロントで重要になるのは生産準備です。デジタル設計があっての生産準備ですね。デジタルファクトリはシミュレーションではなく、フレームワークです。

デジタルファクトリとは製品設計以外の業務をデジタル化しましょうということなのです。今は紙で情報のやりとりをしています。設計とのインタフェースを、紙ではなくデジタルで処理をして現場へ出す。それを実現するバックボーンがデジタルファクトリです。

3次元化

安藤 日本と欧米とではその取り組みに差がありますか。

木村 そうですね。3次元化への取り組みに若干の差があります。日本も欧米も、ガディが言ったように生産準備のところでは2次元の紙ベースというのは同じです。

製品設計で日本が欧米と違うのは、欧米は最初から3次元化というコンセプトを持って2次元を使っていたのに対し、日本は3次元データが無くても図面さえ描ければ職人さんがいるから物は作れるという形で2次元を使っていたことです。

しかし日本は今まで以上に生産性向上、コスト削減、リードタイムの短縮をしないといけなくなってきたから、3次元化しないと話にならなくなり、欧米とコンセプトが似てきました。日本で今起きているビッグウエーブは、CADの3次元化と、少しずつですが生産準備のデジタル化が加速度的に早まっているところです。

日本も欧米も3次元の世界をいかに利用するかという形でお互い足並みがそろっていくであろうと思います。

安藤 デジタルファクトリを構築するには、3次元のCADデータ、これが絶対的な条件ですね。

日本も、メーカさんがサプライヤさんに製作を依頼するときに3次元データを出していこうという動きがあります。欧米では3次元でデータを出すのは当たり前ですか。

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システムインテグレーション・サービス事業本部
本部長 安藤 芳博

ガディ 2つの場合がありますね。

ひとつは、日本ではサプライヤというと部品メーカを意味しますが、欧米ではエンジニアリングのサプライヤのことです。大手メーカが、これをこんなスペースでこんな時間で作れるシステムを作ってくださいと、ラインメーカやラインインテグレータなど外のエンジニアリング会社に頼みます。そのとき、3次元データをエンジニアリング会社に出しています。

また、エンジニアリング会社も、部品はここから入って、ここに来て、ロボットがこういう風に溶接して、時間はこれぐらいになる、スペースはこれぐらい必要といったように、ツール、治具を全部3次元、あるいはシミュレーションのデータでメーカに渡します。

もうひとつは、最近デジタルモックアップのトレンドが大きくなり、部品メーカは、車体の部品だけではなく、エンジン周り、インスツルメントパネル周りなどの形で要求されます。デジタルモックアップの中でスペースを決めて、サプライヤに設計を依頼します。サプライヤは少しずつデザインして、その3次元データをアセンブリメーカに戻し、アセンブリメーカが完全なデジタルモックアップとして確認します。

今のヨーロッパのデザインレビューは、メーカ、部品メーカ、試作、サービス、現場、みんな集まって、大きな画面を使い、3次元データでデジタルモックアップを行います。すべての部品がないと評価ができません。みんなで一緒に評価して、問題を見つけて、解決します。だから、3次元、あるいはプロセスの工程のデジタルデータの交換が当たり前は言い過ぎですが、基本的なやり方になってきました。

デジタルファクトリを実現するための要素技術

木村 3次元CADが入ればリードタイムが短縮し、コストが削減できるかというとそうではありません。3次元CADで作成した製品・部品のモデルと、工場の設備のモデルと工程のモデルがお互い重なり合って、リードタイムの短縮、コスト削減、再利用が可能になります。

ガディ 製品・設備・工程の3つのデータがあると、どういう風に物を作るかがわかり、評価できます。今、日本で製造しているものを、来年から海外で生産する場合も、海外のラインに対して誤りのない決定ができます。

3次元CADを入れて設計データを3次元化しても、設備、治具のデータも3次元化しないとだめです。

-デジタルモックアップ-

木村 デジタル試作モデルを使って、製品の機能シミュレーション、生産工程の初期設計をする。品質をどう製品に反映させるのか。製品の機能、たとえばサスペンションの動きなど、逆生産リサイクル、保守メンテナンスなどの生産技術用件をシミュレーションします。

当社では、VALISYS、DYNAMOという商品があります。

-CAPE-

デジタルモックアップで組立性を検討しますが、アセンブリシーケンスをベースにラインの設計、さらに工程の設計、それぞれの組立ての機器、作業を設計する生産技術部門の工程設計が対象となります。

人間の作業性、快適性、負荷、肉体的ストレス、健康安全面を考慮した機械加工、エンジンブロックなどの複雑な工程ラインおよび工程の設計支援がCAPEです。

当社では、ROBCAD、ROBCAD/Manという商品があります。

-デジタルファクトリ-

工場全体を対象にし、しかもひとつの工場だけではなく複数の工場も対象になります。ERPとのリンクも必要です。マクロ的なシミュレーションとしてラインバランスがとれているのかチェックし、ボトルネックが生じるとそれを解決するために、CAPEに戻って検討します。

もうひとつ重要な要素がデータベースです。3次元CADを使ってアウトプットされるエンジニアリングデータをプロダクトデータベースといいます。

CAPEから出てくるプロセスデータベースの中には、工程のデータ、時間軸のデータ、工場設備のデータなどがあり、これをプロセスデータといいます。プロダクトデータとプロセスデータが融合したものがデジタルファクトリデータベースです。

-CADインテグレーション-

また、CADとのインターフェイスは重要です。

当社では、I-DEAS、CATIA、Unigraphicsなどで開発した部品の実CADデータを、DYNAMO、ROBCADにシームレスに取り込むことができます。

-ショップフロアインテグレーション-

デジタルファクトリの中で工程の最適化を図りますが、ロボットのツールパスは、工場のロボットの実機にダウンロードされないといけませんし、制御データもダウンロードできなければいけません。最適化したこれらのデータを実際の工場にダウンロードして、さらにアップロードする。そのクローズループができて、精度の高い検討がデジタルファクトリ上でできると思います。

挿絵

デジタルファクトリの波はどこから

安藤 デジタルファクトリというと自動車メーカが主流のように感じますが、その辺のところはどうでしょう。

ガディ デジタルファクトリを実現するリーディング産業は、自動車産業です。最初にこのプロセスが効果を上げ始めたところは、ロボットがたくさんあり製品が早く変わる、自動車メーカのラインです。ここから始まり、一番利用されているマーケットです。Tecnomatixは、アメリカのボーイングから100万ドルの追加のオーダ、ヨーロッパではエアバスから250万ドルのオーダをいただきました。これは飛行機メーカです。ロボットはそんなにたくさんありませんが、品質、デジタルモックアップの重要性がものすごく大きいのです。飛行機メーカで大きな動きがあります。

それから、重機産業、建機産業です。日本でも世界中でもデジタルファクトリを取り入れないと危ないという認識が結構あります。

木村 一番新しいトレンドとしては、家電です。日本の白物家電の業界は世界一です。このマーケットもロボットではなくて、品質、アセンブリ、全体の製造の流れです。日本でも富士ゼロックス、東芝、日立などデジタルファクトリに着手しています。東芝さんにVALISYSを買っていただきました。家電はアセンブリが難しく、デジタルモックアップが必須になっていると思います。

デジタルファクトリの波は自動車メーカから始まりましたが、今はそこから出ました。すべてのメカニカルアセンブリメーカのところに広がっています。

ガディ 日本の部品メーカもデジタルファクトリのコンセプトを取り入れ始めています。

木村 ピラミッド構造の自動車会社の中でも、裾野まで広い範囲で使っていただく。

頂点にあるアセンブリメーカにとっては、ピラミッド構造全体の期間短縮コスト削減ということでデジタルファクトリは重要です。それをコラボレーションエンジニアリングという形で使っていただいています。

3次元データの対価は?

安藤 メーカさん、サプライヤさんの間で3次元データをやり取りするようになると、そのデータには各社のノウハウが入っていますが、そのデータの所有権は、いったい誰の物になるのでしょうか。

木村 コンテンツに対する価値は今後高まってくることは間違いないですよね。ガディがさっきも言いましたように、欧米の協力部品メーカは部品を納品するだけでなく、エンジニアリングを共同でやる協力パートナも多くあります。そういったところではコンテンツを作ることが商売になります。そのコンテンツを作る工数に対してお金をもらうとか、そのコンテンツを販売することで価格を設定する。対価で何らかのお金を払わないと、デジタル情報は入手できなくなると思います。今現在そうなっているかというと、そうはなっていないですが。

ガディ ポイントは、例えば治具メーカとか、ガンメーカとか設備メーカなどを、どこでいいメーカかどうか判断するかというと、治具がものすごくいいとか、壊れにくいとか、これで判断するだけでは十分ではありません。すばらしい治具でも、治具を固定するときにそのデータが何もなかったら使えないのです。これからはアセンブリメーカの業務にうまくつないでいけるサプライヤがベストになります。

メーカのターゲットは時間短縮です。治具は道具で、メーカの目標ではありません。時間の短縮をサポートしてくれるサプライヤがベストになります。

もうひとつは、アセンブリメーカがサプライヤに時間とコストのプレッシャーをかけていることです。去年のプロジェクトは6ヶ月でできた。今年は5ヶ月にしないといけない。だからこそ来年は4ヶ月ですよと言います。2次元のスタイルで、うまくやっていくノウハウがあったとしてもすぐ限界に達します。大きなブレークスルーをするために、やはり3次元でサイマルテニアスエンジニアリングの形で設備設計し、エラーの無い設備、1回出したらそのままで使える設備を提供することです。このことでタイムプレッシャー、コストプレッシャーに強い一番いいサプライヤになると思います。

木村 そういうことができるのが条件で、共同事業に参画できる、バーチャルエンタープライズが形成できるということだと思います。

さらなるビジョン

-ライブデジタルファクトリ-

木村 これからはデジタルファクトリの中で、実際の設備、工場をモニタリングして、遠隔制御をするというリアルタイム性です。実際の工場とデジタルファクトリの間のタイムラグをなくす方向がひとつのコンセプトとして上がっています。

ロボットの実機のすぐ側に置いて、ロボットをモニタリングし、キャリブレーションして、現場調整した結果をすぐ反映して、ツールパスを作って、ロボットを動かすことで、リアルタイム性が出てきます。これには、ネットワークベース、Webテクノロジを駆使しています。

当社では、ROBCAD/OnSiteという商品があります。

-スマートサーチ-

もうひとつは、ネットワークを使ったスマートサーチです。現有設備、生産技術、生産方法、そういったデジタル化されたデータやノウハウをいかに再利用するかが重要になってきます。それがCAPE、デジタルファクトリの大きな目標でもあります。

たとえば、アメリカの工場でこのラインをどのように作ったか、そのときどんな方法論を取ったのか、それをスマートサーチする。日本の工場でもそれを適応して、シミュレーションしてみるというようなネットワークです。JAVA、VRML、MPEGなどの技術でインテグレーションされています。それと、UNIX、NTの壁を取り払って、CORBA、オブジェクト技術にのっとった形で改良を加えています。それがさらなるビジョンとして、Tecnomatixが考えている次なる姿です。

PDMとのインテグレーション

安藤 デジタルファクトリとPDMとは、どういう関係といいますか、補完しあっていく物なのでしょうか。

木村 補完しあっていく世界ですが、これからの動きの中で、PDMとどう連携を取っていくかというのも重要な要素であると考えています。PDMは、データベース管理システムで、プロダクトデータ、ワークフロー、ソフトウェアのいろいろなツールを起動管理するという機能があります。主たる対象は、プロダクトデータでCADの物理的なデータを管理するツールです。

PDMというシステムは、デジタルファクトリを形成する上でも有効な要素システムだと思います。PDMにプロダクトデータはもちろんですが、プロセスデータも格納し管理します。

PDMインテグレーションという商品で、PDMシステムはMetaphase、Optegraが対象です。

しかし、物理的にそれぞれのデータが格納されているだけでは、再利用できません。再利用するためには問い合わせをするわけですから、データにロジカルに関連性を付ける必要があります。プロダクトのデータ、工程のデータ、設備のデータ、この3つのデータを論理的に三位一体で管理できないといけません。

どの工程でどの設備を使って作られるのかという相関関係を簡単に関連付けられる。しかもPCベースで製品設計者でも、生産技術の方でも、工場現場の方でも生産管理者でもいろいろな部署の方がその関係を付けられ、問い合わせができ、問い合わせをした結果のデータを集計することも必要になります。

これを実現するのがProcess Planner(ユ99年初発表予定)という商品で、製品、工程、設備のデータをドラックアンドドロップで簡単に関係付けられ、アウトプットをマイクロソフトExcel、Projectなど、日頃よく使うofficeツールで集計できます。

このProcess Plannerは、お客様ごとのデータの関連付けのみならず、それぞれ持っておられる個々のモノ作りのノウハウの関連付けも必要で、これを実現するのは非常に難しく、HZSに大いに期待するところです。

HZSに期待すること

木村 デジタルファクトリを構築してサポートサービスさせていただくというのは、コンセプトが大きいだけに非常に難しいですね。

お客様が効果を上げるためには十分なサポートが必要です。マーケットが広がっているだけでなく奥も深いので、お客様の満足を得られるようなサポート、日本での構築を一緒に取り組んでほしいと期待しています。

ガディ Tecnomatixはイスラエルのメーカですが、日本でブレークスルーを実現するために、日本のユーザのニーズ、マインド、やり方をよく理解しないといけません。技術的にもカルチャ的にも、ビジネス的にもどういうふうにうまくソリューションを出せるかというのが、日本テクノマティックスの一番大きなチャレンジです。パートナさんと一緒に、技術的にもカルチャ的、ビジネス的にも、もっと強いお互いのインテグレーションを実現するために、やはりHZSさんからのインプットを期待しています。

植田 今日はどうもありがとうございました。

会社プロフィール

Tecnomatix 沿革

1983年社名ROBCADとして設立
1986年ROBCAD販売開始
1987年BMW、VolkswagenがROBCAD導入決定
1988年スポット溶接、塗装モジュールの発表
1990年FordがTecnomatixをコーポレート標準に認定
1993年NASDAQに株式公開
1994年IBM、FMCからVALISYSを買収獲得
1995年PART開発のためC3を買収
DYNAMOの開発開始
1996年GMがVALISYSを北米の全工場に導入
マツダがTecnomatixの全製品をMDIプロジェクトに採用決定
1997年Ford C3PプロジェクトでCAPEが採用決定
PeugeoiがDYNAMOをデジタルモックアップ標準として採用
AESOPを買収しラインシミュレータSimple++を製品系列化
1998年SDRC、UnigraphicsSolution Inc.、Mechanical Dynamiscと業務提携

日本テクノマティックス株式会社 沿革

1989年日本アイテック株式会社が国内代理店として契約締結
1992年テクノマティックス日本駐在所を開設し、ROBCADのサポートを開始
日立造船情報システム株式会社が国内代理店として販売開始
1994年日本テクノマティックス株式会社を設立
1996年日本テクノマティックス韓国を設立
1997年株式会社セイロジャパンがPARTの国内代理店として販売開始
人物写真
副社長 ガディ ベッカー 様
人物写真
日本テクノマティックス株式会社
マーケティングディレクター
木村 友則 様