人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.12 | お客様事例
GRADEを使った検査具設計・製作

グリーンフィクス株式会社様は、部品単位の小型ゲージから内外装総合検査具、クルマ全体を検査する大型ゲージまで、設計・開発・製造・検査を一貫して手がける国内有数の総合検査具メーカです。常にお客様のニーズに応えるべく、GRADEシステムによる生産システムを構築され、技術開発力と製造力の飛躍的な向上を図られています。
今回は、GRADE/CUBE-NC、GRADE DASH/DRAWを使っての検査具設計、製作について、そして今後の課題などを中心に、取締役 技術部長 中川様、技術部 CAD課 主任 浜口様にお話をお伺いしました。

事業内容について

人物写真
取締役 技術部長
中川 様

弊社は、自動車産業における生産設備関連の仕事で、CHECKING FIXTUREまたはINSPECTION JIGと言われるボディやドアなど、クルマをカタチづくる主要部品の形状検査をする検査具の設計・製作が主な業務になります。
小さい物は手のひらにのるサイズから、車体全体を測定する大物までを製作しており、検査具においては弊社にできない物はないと自負しています。

さらに早くよりカーボンという素材に着目し、主力である検査具はもとより、車両生産ラインの搬送設備、人力作業の軽作業設備、ロボットの周辺設備などの設計・製作にも取り組んでおり、"軽量・高剛性"というカーボンの特性を活かして動力源(電気、燃料)の低減、作業者の疲労度の軽減などに効果をあげています。そしてそれらの開発に伴い、カーボン素材を社内規格化し、規格部品の販売もできる体制を整えてきました。また他の分野での新素材の研究・開発とその特性を活かすことができる商品開発で、業種・業界にこだわることなく事業を展開しています。

検査具について

検査具は、自動車部品(プレス製品、樹脂成形品)の品質、アッセンブリ品質を精度面から保証するための道具です。検査具で読み取った偏差データを金型などの部品成形工程にフィードバックし、その部品の精度面での品質確保に役立てています。
内装部品の樹脂製品やシート、インパネ、ドア、フロア、ハンドルなどは、検査の段階で製品を取り付けて実車状態を全部再現し、以下5つの項目の評価・確認作業などを行っています。

① デザインの評価

② 建付け性の確認

③ 建立て性の確認

④ 数値で表せる部分の確認

⑤ 商品価値を高める上での感覚的な確認

1車種についての検査具の種類は、ボディ検査、試作ボディ検査、内装検査、フロント廻り検査、リヤ廻り検査、インパネ検査といろいろな部分に対しての検査があり、基本的には、電装品以外はすべて検査の対象になっています。

GRADE導入の背景について

人物写真
技術部CAD課
主任 浜口 様

初期のボディー設計は、板間で自動車のボディのデザイン線を等倍のスケールで描き、フリー定規で設計者が曲線を描いて、三面図に落としていくという手法でした。
検査具のモデルデータは、車そのもののデータから法線方向に伸ばした線や面が必要です。以前は、延長する部分の自由曲線の割り出しは、三角法スケールをかけた寸法を設計者が電卓で計算していました。

その作業をコンピュータ化する目的で当時、その機能があったHZSのGRADE/Gを1988年に弊社の基本システムとして導入しました。
作業としては、寸法の割り出しと図面を描くことに分かれていましたので、段階を経てCAD化を進めました。

まず初めに、寸法を割り出す作業をCAD化しました。計算ではスムーズに割り出すことのできない自由曲線を速く、そして精度良く作り出すことができるようになり、さらに設計期間を短縮することができました。
次に、図面を描く作業にCADを導入し、ここでもリードタイムを短縮することができました。

導入当初は、オープンリールでいただいたデータを読み込んで、モデルは表示できましたが、その次の手順が分からない状態でした。3次元システムを操作したことがなかったため、GRADEでサーフェイスを作るとき、作りたいサーフェイスをどのように表現するのかが手探り状態で戸惑いました。
そのようなことも、GRADEの操作に慣れてくると解消され、それまで頭の中で行っていた作業、計算をGRADEのコマンドに置き換えるだけでしたから、移行はスムーズに行うことができ、導入から半年後には効果が現われました。
検査具業界で3次元データを受領できる動きが見え始めたと同時に検討に入り、それから半年後には導入していました。もし導入が2~3年遅れていたら、現在の業績は上げられなかったと思います。

世の中の動きを見ながら、スピーディな決断ができたので、他メーカとの差別化ができ、営業の面でも有利になりました。
導入にはかなりの投資をしましたが、リードタイムの短縮、作業の効率化が実現できましたので、それに見合う結果は得ています。
去年の8月には、Autodesk Mechanical Desktopを5台導入し、PC化にも取り組んでいます。

GRADE/CUBE-NC,GRADE DASH/DRAWを使った検査具設計・製作について

以前は、設計・モデリング・製缶・加工・組み立て・検査・納品の各工程を順番に経由しないと次の仕事に取り掛かれない状態でした。
しかし、GRADE導入後は、同じデータで設計業務や加工データの作成業務も平行して作業でき、物作りのプロセスを変革することができました。その相乗効果で検査具精度の格段の向上と製作期間短縮など、それぞれの仕組みに見合う効果を出しています。

現在、弊社のお客様から100%CADデータで支給していただいています。お客様によってデータの形式はさまざまですが、基本的には"IGESフォーマット"です。いろいろなシステム間のデータ授受に関するインターフェースをHZSが揃えており、またその実績もありますので、準備作業での技術的なトラブルも少なく非常に助かっています。
いただいたデータは、社内システムですべて処理ができるという基本スタンスを取っていますので、各工程の作業計画に従い、準備作業を進めています。データの内容を確認して、作業担当者が必要なときにいつでも呼び出せるように、デイスク内に格納しています。

CAD/CAMのオペレータは、50名ぐらいで、平均年齢は27歳、4~5名のグループ単位で作業しています。特化させる意味でモデリング担当、NC担当と専業化していますが、グループ化して問題を起こさないようにしています。
また、新人に関しては初めてCADを扱うわけですから、既成概念や余分な知識がなく、2次元よりも3次元のほうが入りやすいすいようです。

操作画面
フロント廻り検査具
操作画面
パネルサイドアウター検査具

3次元は2次元に比べ、形がはっきりと確認できますし、ビジュアル的にも、色が付いたり、回転しますから、そういった意味で日常の感覚に近いからでしょう。
作成しているモデルデータの面数は、およそ1,000面、ファイルの容量は、3~4MBが平均です。パソコンは、最新機種を導入するようにしていますが、少し古い型になると10MBぐらいのモデルだと操作が難しくなることがあります。

大きなモデルは性能の良い最新のマシンで処理し、小さなモデルは、それにあった性能のマシンを使うというふうに使い分けをし、運用で問題回避しています。また、ソフトに関しても単純なモデルはパソコン版のCADソフトを使い、検査具のような細かい作り込みが必要な場合は、GRADEを使用するという使い分けをしています。

CAD室
CAD室

モデリングしている部署と工場は、別々のところにあるので、オンラインでデータを転送して作業を行っています。遠隔地とのトラブル対応、打ち合わせなどはテレビ電話を使います。電話やFaxよりも顔を見て話すので意志の疎通がとりやすいですし、移動のコストもかからないので効率が良いです。

挿絵

今後の取り組みについて

最近では、自動車メーカでの新型車種の立ち上げ期間の短期化に伴い、検査具の納期も4~5年前と比べると半分程度に短くなっていますので、開発当初より短納期・高品質を確保する必要がでてきています。
現在のような情報社会の中で、弊社のような一企業でも、技術力において他メーカとの差別化が図れれば、自動車産業はもとより、あらゆる産業界に道は開けると考えています。
その意味でも課題は沢山あります。"新素材での商品開発、新サービス、デジタルファクトリー...etc"などすぐにでも取り組まなければならないことが山積みしています。
また、ソリッドへの移行などに関しても検討していますが、弊社の独断で進んでも仕方ないことなので、周りの動きを見ながらタイミングを図っています。もちろん今の時点では、自由曲面や複雑な形状に関して、移行が難しいと思いますが、そのための準備はできています。

また新たな事業として、これら既存の総合技術を活かした"DDS(ダイレクト・データ・サービス)"を位置付け、その構想を具体的に展開しています。狙いはお客さまの必要とする技術を直接サポート支援(現地現物思考)するということで、"お客様といっしょに仕事をしようとする姿勢"で取り組んでいこうとしています。林立するデータサービス業界の中で、他社と違った観点でサービス、支援を実施し、弊社の技術を役立ててもらいたいと考えています。

HZSについて

HZSとお付き合いするようになって、CAD/CAMはもとより、沢山の先端技術に関する情報とその基礎技術のご指導を受け、ここまでやってこれたことをまず感謝します。
GRADEは、協力設計会社での評判も良く、導入の際、ほとんどの方がCADを使うのが始めてで比較的高年齢ということもあり、立ち上げ時に大変心配していましたが、HZSのご指導もあり、順調に立ち上げることができました。

最近では、幅広く活動されているせいか、他メーカと比べても特長が出にくくなっていますので、導入当初のようなサポート・営業を期待しています。
今後も、HZSとのさらなる良い関係を築きあげ、最新情報の入手と基本技術などを身近に接し、弊社が進むべき方向を見出し、着実に歩んでいきたいと考えています。
最後になりましたが、今回このような機会をいただき誠にありがとうございました。

おわりに

グリーンフィクス株式会社様にお話を聞かせていただくまでは、検査具というものがどのようなものかほとんど知らずにいたのですが、丁寧に説明していただいたおかげで理解することができました。普段何気なく乗っているクルマの生産過程の中で、いろいろな工程を経て、新車種が市場に出ているということが分かり、勉強になりました。
お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真
デザインセンター
人物写真
代表取締役
小島 学 様

グリーン フィクス 株式会社

本社名古屋市瑞穂区日向町4丁目2番地
創立1957年7月1日
従業員130名
資本金2,800万円
営業品目車体ゲージ、内装総合検査具、外装総合検査具、内外装総合検査具、カーボン製機器、搬送設備、軽作業設備、ロボットの周辺設備など
検査具
内外装総合検査具
足廻りピッチゲージ
足廻りピッチゲージ
リア廻り建付C/F
リア廻り建付C/F