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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.12 お客様事例

3次元設計への取り組み

株式会社シマノ様は、サイクルスポーツ、フィッシング、アクションスポーツに関する製品の開発・製造・販売をされているトップメーカです。1930年代から海外での活動をスタートされ、今や「世界のSHIMANO」としてブランドを確立されています。常に、既存のものや技術にとらわれることなく、新機能への開発にも積極的に取り組まれています。
今回は、3次元設計の取り組みについて、I-DEAS導入の背景、今後の課題などを中心に、製造技術部 技術システム課 課長 川崎様にお話をお伺いしました。

事業内容について

「シマノ」というと一般の方には釣具が有名だと思いますが、当社は、自転車部品、釣具、アクションスポーツの3つの事業部があります。一番大きいのが自転車部品の事業部です。自転車のフレーム、ハンドル、サドル、車輪、タイヤを除くすべての部品を作っていて、駆動系の部品、変速機、ブレーキなどを扱っています。釣具の事業部は、リール、ロッド、ウェアなど、フィッシングタックル全般を扱っています。アクションスポーツの事業部は、スノーボードおよびビンディング、スノボード用ブーツなどを扱っています。それから冷間鍛造の部門があり、自動車用鍛造部品を扱っています。

自転車部品を中心にお話しますと、8割強が輸出になります。特に北米のマーケットが中心になり、ヨーロッパ、国内という順になっています。販売の拠点としては、シマノアメリカ、シマノヨーロッパがあり、工場は国内に、堺工場、下関工場、海外ではシンガポール、マレーシア、中国にあります。高級クラスのものは日本で製造していますが、低級クラスのものを中心に海外に広げています。現在、製造技術の面から国内の技術をマレーシア、中国の方へ技術移転しているところです。

I-DEAS導入の背景について

1988年に、それまでドラフターで設計していたものを2次元CADに入れ替えはじめました。1990年には設計者がCADシステムを使って設計を電子化し、さらにCATシステムとして3次元測定機を導入しました。試作品の形状をフィードバックするため、3次元測定機で測定した歯車の外形状を自動的に図面上に点列を描いていくプログラムを開発し、2次元CADをカスタマイズしました。2次元からはじめたのは、その当時の3次元のシステムがまだ使える仕組みではないと判断したからです。

3次元システムの評価は、小規模ですが2次元のシステムを使いながら並行して行ってきましたが、完全に3次元に置き替わるまでにはいたりませんでした。
自転車部品の新製品は1年サイクルで出しています。これは、お客様が毎年自転車の外観を変えたり、バリエーションを増やしたりしたいという要求があるからです。

これまでは、新製品の量産試作のときに不具合が発生すると、金型の改造費がかかったり、納期が間に合わなくなり、お客様の組み立てラインをストップさせないために、部品の輸送を飛行機にしなければいけないなど無駄が多くありました。このことから量産として流れているものの納期を短縮するというよりも、新製品を立ち上げるときの不具合を徹底的に減らすということが、会社全体の効率を上げ、それがお客様に対しての満足度を上げることにつながります。

そこで、工数の短縮と品質の向上を大きなテーマにして、設計の3次元化を推進しなければ取り残されてしまうという動きがトップダウンで起こり、1997年の6月、設計の3次元化を会社全体のプロジェクトとして位置付けて、3次元システムの導入に向けての選定がスタートしました。同じ時期に、ISO9002の取得やGIT(ジャスト・イン・タイム)など製造の合理化、効率化への取り組みもスタートしました。
1997年の6月から1998年の2月までが選定期間で、いろいろなベンチマークを行った結果、開発設計部、リール開発課、下関工場、品質管理部にHZSからI-DEASを導入しました。
運用の仕方として、設計者に対してはWindows NT版のI-DEASを供給して機構設計、強度問題の解決などを中心に取り組んでいます。私が所属する技術システム課では、CADで3次元モデリングを中心に行っていますのでUNIX(OCTANE、RS6000)マシンで運用しています。

操作風景

設計の3次元化

◆新製品立ち上げ時の工数短縮、品質向上

新製品を立ち上げるときは、図面を出図する期日までにいろいろな技術的課題を解決していないとだめだということです。
特に、シマノの自転車部品の場合、システムコンポをひとつの歌い文句にしています。これは変速システムでいうと、変速レバー、チェーンを廻している前ギア、後ギア、後ギアに付いている変速機などを一体のシステムとして開発していますから、シマノの部品をシステムコンポで使っていただくと、性能、品質の面で、よりよい自転車の性能が得られるということです。そのため、システムコンポとしてひとつの部品も納期が遅れないように納品しなければいけないのです。

システムコンポとして複数の部品を設計するので、試作の部門がボトルネックになっています。同じ時期に、関連している複数の製品のプロトタイプを造るため、試作部門に図面がたまり、試作待ちで時間が過ぎるといった問題が発生しています。最終的には試作品を必ず造って、それで動作確認をするのですが、できるだけ電子化して画面の中で試作をすることで、その工程自体を短縮したいと考えています。また、工数短縮、品質向上の他に、図面で試作していると、頭で考えた3次元のものを一度2次元図面に落として、金型の工程で再度3次元に立ち上げるので、そのときの情報のロスをなくしたいのです。

最近は、光造形システムを使ってデザイン的な外観形状の確認をする工程を必ず入れています。できた形状は、そのまま画面の中のデータと同じですから、デザイン承認のときの精度が高いです。
最終的なターゲットとしては、工数を30%削減するということを目標にしていますが、短期目標としては、出図して金型が立ち上がって、そこから品質管理部で一定の品質のチェックを行って、量産開始の承認を出すまでの工数が通常4ヶ月かかっているので、これを3ヶ月に短縮したいということです。

◆自転車の特殊性

自転車部品の特長というのは、形状的に自転車のフレームにむき出しで取り付くものですから、外観的な要素として、特に最近は曲面に対応したデザインが要求されます。それでなおかつ機構部品であったり、強度部品であったりします。

それぞれの部品がデザイン的な要素、機構・強度部材としての要素を満足させていないといけないため、要求される内容は相対的に高いレベルです。この自転車の特殊性でのいろいろな問題を解決するためには、3次元設計に取り組むことが、非常に重要です。

人物写真
製造技術部
技術システム課
課長 川崎 様

◆設計の3次元化の位置付け

設計の3次元化は単にツールを3次元システムに入れ替えるという位置付けではだめで、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の一部である設計プロセスの業務改革として実行しようとしています。ですから、そのために直列のプロセスを整理して、関連しているプロセスをできるだけ並行にする体制を取ろうと考えています。
並行作業にすると、たとえば、ある検討図で金型の成形性を検討して約束の期日に返さないと、キャッチボールしながら横で待っている工程が進めなくなります。そうすると検討図をもらってからそれを返すまでの日数を決めるなど、いろいろなルールが必要で、それがシナリオ作りになります。

今は、3次元で設計している人と従来の2次元図面で設計している人とが混在しているので大変な時期です。デザイナー、設計者、モデラーとが1チームになり、実際の製品適用というのを検証しているのですが、その作業とは別のところで問題が起きてしまうので、それを乗り越えなければいけません。トップダウンの推進力とこの新しいプロセスが成功すれば効率が上がるということを納得してもらうことがより大事です。

◆金型の事前検討を上流工程に

基本の考え方は、金型の設計検討、成形性、製造性の検討ということが出図までに全部折り込まれ、紙の図面があると同時に加工のデータも準備しておきたいということです。

今のスケジュール上では、今ある設計作業に金型の事前検討がプラスされることになり、設計の上流工程を圧迫するようでマンパワー的にも苦しく見えます。
でもCADやCAEの技術を使って、画面の中で徹底的に3次元設計をすると、タスク自体の短縮ができるはずです。後で行っていた作業を乗せると単純に増えるように見えるのですが、個々の面積は小さくなるはずです。
まずはブレーキの部品、変速レバー2種、クランクの部品の4部品で3次元設計に取り組もうとしています。

この部品については、設計の上流工程のデザインから画面の中に面データとして入れて、徹底的にそのデータを使って検証していく予定です。

選定期間に得られたこと

◆課題運営の必要性

1997年の6月から1998年の2月までの選定期間に、成功のための条件として分かってきたことが課題運営の仕方です。ベンチマークのときに、技術的なベンチマークと基本的な3次元システムを使ったときの業務の主な流れのチャートを作りました。それを実際にテストして、現在、業務の流れを改善する段階に入ってきています。
ベンチマークの事例は、ハンドルバーに取り付ける部品でいくつかの課題がありました。強度的に一番問題になる部品の材料、厚み、形状の検討や形状を正常に保ちながら金型が開けるかなどです。

その課題をしっかり管理してシミュレーションし、3次元的に面を張っての検証、データをNASTRANで解析するなど、課題に対してのデータを集め、決断するべきときに判断するという仕組みをCAD技術とは別ですが、並行して動いていないとだめだということが分かりました。そのために、常に課題は経営層、部門長に対して、見えるような仕組みを作らないといけません。

◆データ変換

その他で大事なことはデータ変換です。全部のことができるシステムはまだありませんから、デザインのスケッチ、CAD、CAEなどは違うシステムになり、データ変換の技術というのは大切なコア技術になります。それがまず分かりました。シマノではI-DEASを主幹システムにして他のCADシステムとは専用のトランスレータを購入することで運営しています。I-DEASというのは、間口が広いシステムでそういう意味ではよかったです。

トレーニング

去年の4月からトレーニングを始めています。徐々にトレーニングを行う予定にしていましたが、3次元設計は100%部内に展開するので、教育計画が終了した人から3次元システムが使える環境を準備して適応させようということになり、当初の計画よりもはるかに早いスピードで教育が進んでいます。

トレーニングは(株)電通国際情報サービスの定期講習を初期トレーニングとして受けて、その終了段階に合わせてマシン、環境を整えています。次に社内トレーニングで、これは自分の担当製品を事例にしながら、技術システム課で準備したカリキュラム、テキストをもとに1ヶ月ぐらい行います。このトレーニングを終えると、実務の設計に入ることにしています。

今後の課題と取り組みについて

今まで以上に危機感を持って取り組まないとうまくいかないということです。我々推進部隊と経営層との結びつきを強くして、目的意識や情熱を持てるようにしていきたいと思っています。
今まで3次元設計をしたことがないわけですから、100点のシナリオを作る自信はありません。今やり始めて難しいリスクを取るのか、やらないで遅れていくリスクを取るのかというと、やり始めて起きる問題を解決しなければいけないリスクを取るほうが正しいという判断で動いています。

システム的な課題でいいますと、製品情報管理システムPDMでドキュメント情報を関連させて管理する仕組みを今後の課題に上げています。具体的には、図面の管理システムとして旧図面と現行図面、新製品との関連を付けて、図面を呼び出したら、それに関連するファイルあるいは3次元のモデルデータが画面上で見れる仕組みを作りたいと考えています。
また、CAM工程をなくすことも最終目的のひとつにしています。どういうことかというと、加工システムに対してモデルを渡すと、いきなり品物が加工されて出てくるという仕組みを目指したいのです。今、NCデータを作るというCAM工程自体が、人的なボトルネックになっているのです。上流工程が3次元化すれば、CAM工程も比例してマンパワーを投入しなければいけなくなります。NCデータを作ることが目的ではなく、物ができることが目的ですから、CAM工程の自動化を目指したいです。

HZSについて

エンドユーザの立場で物事を考えてくれるところがHZSのいいところです。今後もその姿勢を崩さないで、商品のいいところを売り込むのではなく、ユーザが今何に困っていて、それに対してソリューションをどう提供するのが一番いいのかという視点を持ち続けてほしいと思います。

おわりに

株式会社 シマノ 様では、自転車のロードレースでトップレーサが装着する高性能部品はもとより、一般仕様の自転車の部品まで幅広くサポートされています。自転車部品のカタログ内の部品は、綺麗な曲線が使われているものが多く、お話の中にもありましたデザイン的な要求の高さが感じられました。

今回、設計の3次元化について、取り組むときの姿勢、苦労されていること、今後検討しなければいけないことなど貴重なお話をしていただきまして、大変勉強になりました。
お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせ ていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真
本社大阪府堺市老松町3丁77番地
創業大正10年2月
従業員1,207名
売上高1,483/1,060億円[総売上高/内輸出高]
(平成9年度実績)
営業品目自転車部品(駆動系部品、変速機、ブレーキ他)、釣具(リール、ロッド、ルアー、ウェア他)、スノーボード、ビンディング、スノーボード用ブーツ、自動車鍛造部品
製品
リアディレイラー
(DURA-ACE)
製品
カセットスプロケット
(XTR CS-M950)
製品
リール(STELLA 4000)
製品
クリッカーブーツ&ピンディング