人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.18 | お客様事例
技術資料にIronCADを利用する

東京医研株式会社様は、独自の発想をもとに光の有効性を見出され、その成果としてスーパーライザーを開発し、販売されています。スーパーライザーの信頼できる性能や物理療法としての高い効果は、1996年に米国で開催された世界鍼灸学会において金賞を受賞されて、世界各国に広く認められています。今回は、IronCAD導入の背景、技術資料の作成、今後の取り組みなどを中心に、技術本部 製造管理課 主任 渡辺一人様にお話をお伺いしました。

事業概要について

人物写真
技術本部 製造管理課
主任 渡辺 一人 様

社の設立当初から、理学治療機器を主力製品として販売していた経歴がありまして、平成1年にスーパーライザーの販売を始めました。

それ以来、最先端の技術を集結して改良を進めて、最近では、東洋医学、スポーツ医学などでも幅広くご利用いただいています。現在、スーパーライザーは累計約9,000台を販売していまして、病院でいうと、全国の95%の大学病院で使われています。

スーパーライザーの販売を始めた頃の社員は10名ほどでしたが、スーパーライザーの急成長とともに社員の人数も増え現在にいたります。

また、ISO(国際標準化機構)が制定した世界的な品質管理および品質保証制度である「ISO9000シリーズ」の取得も進めています。

スーパーライザー

スーパーライザーを開発する経緯は、鍼治療に関心はあるが、鍼に対する恐怖心を持たれる人が多いので、鍼に変わる医療機器として光を利用するということでした。ドクターの協力を得て研究、開発、試作を重ね製品化することができました。

IronCADとの出会い

去年の設計製造ソリューション展に、生産管理システムを見に行ったのですが、そのとき3次元でモデリングしていく3次元CADのシステムも見ていました。

いろいろ見ているうちにHZSのコーナでIronCADを見て、これであれば、図面や3次元CADの知識がなくてもオペレーションできそうだと感じました。当社はPCには力を入れていて、たとえ営業でもPCを使えなくてはという動きもあるので、IronCADは、結構いろいろな場面で使えるソフトかなと思いました。

他の3次元CADも少し見ましたが、IronCADであれば自分でもすぐに使えそうでした。世の中の動きが2次元よりも3次元という傾向になってきていますので、とりあえず将来的なことを考えると3次元にも着手しておかなければと思いました。

設計製造ソリューション展から戻り、直接社長に申し入れをして、すぐにIronCADを導入しました。

3次元化

2次元CADのAutoCADを導入したのも平成7、8年ぐらいで、部品に変更があった場合、2次元CADを使って図面を作成しています。3次元CADで部品を設計するという体制を整えることは、今の段階ですぐには無理です。

しかし、将来的に3次元CADで設計してもらえれば、作業手順書や営業に対する情報ひとつとってもいろいろなことに応用できます。2次元データではどうしても情報として足りません。

IronCADを知るまでは、3次元CADを導入するにも当社の現場は人手がないので躊躇していました。他メーカのCADというと、入力するデータ量が多く、3次元CADを操作する知識が必要になり、簡単にはモデルを作成することが難しくなります。

医療用具の製造許可要件としてGMPという品質の保証基準というのがありますが、それには、作業手順書や検査手順書などが全部揃っていないといけないのです。このような文書作りというのが非常に手間がかかり、そういうところに3次元データを利用できれば、時間を削減できるのではと思いました。

まだ、IronCADを開発目的では使っていません。これから、設計の段階から3次元CADを取り入れるには、いろいろな検討をしていく必要があります。

技術資料の作成

IronCADは技術情報を作成するのに使用しています。社内の現場に対する情報や、仕様の変更、新しい部品の追加などの情報を10店舗ある営業所に対して流すことを重要視して考えています。

■導入前

社内風景
IronCAD

2~3年前からデジタルカメラで、実際の部品を撮して、それをもとに標準書を作成して情報のアウトプットをしていました。

しかし、デジタルカメラのデータから資料を作る過程も大変です。撮ったデータそのものでは形状が分かりにくい部品もあるので、PhotoShopなどのグラフィックツールを使って加工する必要がありました。

■現物がなくても形状情報を配布できる

操作画面
図1 作業基準書

IronCAD導入後は、設計の方から次に作る部品の2次元図面が出てくると、それをもとにIronCADを使って3次元データに起こします。そうすると実際の部品が完成して入ってくるのを待たずに、現物の部品に限りなく近い形状情報を関係部署に配布ができるということです。また、角度によっては詳細も簡単に見せることができます。左記は作業基準書としてIronCADのモデルを利用しています。

■アニメーションAVIの利用

IronCADはAVIファイルとしてアニメーションが作れます。製品説明の一部の資料として、作業手順書にアニメーションをつけることも考えていますが、見るためには必ずPCが必要になりますので、そこまではまだ取り組んでいません。AVIファイルになっていれば、相手方のPCでAVIファイルをクリックするだけで見ることができます。

■メンテナンスマニュアルの作成

操作画面
図2 メンテナンス用

たとえば、スーパーライザーの中に入っているアイオダインランプは消耗品なので、その交換の手順をインターネット上で見れるようにしたいと考えています。交換の手順が分かりやすいようにアニメーションなどを情報として貼り付けておけば、当社のメンテナンスの初心者でも見ればすぐ分かります。その他にも、故障用のメンテナンスマニュアルに使うことも考えています。(図2)

■カタログに登録

操作画面
図3 IronCADのカタログ登録

変更のある部品から作っていますので、全部の部品は揃っていませんが、IronCADでこれまでに作った部品は、カタログに登録しています。製品のロゴなども作ってIronCADに取り込んでいます。使うときに、随時カタログからドラッグできるので便利です。(図3)

その他の利用

■ポスター

モデル
図4 スーパライザー部品
モデル
図5 スーパライザー本体

IronCADで形状をレンダリングして、ちょっとしたポスターなどに使えると思います。

■部品の色決め

ある部品の色決めするのに、IronCADでデータを起こして、色の検討もしています。

■フロアレイアウト

営業の方の意見ですが、大きな病院のドクターが開業されるときに、フロアのレイアウトを考える場合にもIronCADは利用できるのではと言っていました。

■営業で利用

営業のツールとしても使えるのではないでしょうか。たとえば、PCを営業先に持っていき、スーパーライザーの動きや詳細を入れて説明することもできます。

3次元データの利点

3次元CADというと製造関係に利用するイメージがありますが、IronCADであればそれ以外に、メンテナンスマニュアルや取り扱い説明書、作業手順書の作成に使えます。

デジタルカメラだと撮って絵にする時間は短いですが、その他には流用できません。IronCADで同じ絵を作ろうとすると、最初にデータを起こすまでは、それなりの時間が必要になります。

ですが、3次元データができてしまえば、後工程でそのデータをどのようにでも使えるというのが利点です。当然、次はどのように転用しようかというアイデアを出しています。結局、2次元データも製造担当者が使うぐらいで、そこから先の発展はありません。

IronCADをマスターしている担当者がいれば、2次元で起こすのと3次元で起こすのには、時間的な差はたいしてありません。であれば、3次元で全部作ったほうがデザイン的な検討もできますし、データを有効に活用できます。

IronCADについて

これまでの業務をより効率アップするためには、IronCADをどのように使えばいいかということをいろいろ検討していきたいと思います。

設計製造ソリューション展でIronCADを見て感じた通り、実際導入しても使いやすいシステムでした。

トライボールでの3次元の操作性が非常に使いやすいと思います。複雑な曲線部分で悩むことはありますが、今のままで十分満足しています。

おわりに

IronCADを使った新しいアイディアによる効率化のお話や近赤外線治療器スーパーライザーの機能についてもいろいろご説明していただき、大変勉強になりました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真
本社

東京医研株式会社

本社 東京都稲城市東長沼1131-1
創業 昭和52年11月
資本金 61,700,000円
従業員 88名(平成12月3年)
売上げ高 19.8億円(平成11年度)
主な営業品目 スポット型近赤外線治療器スーパーライザー(SUPER LIZER)
製品
HA-550S
製品
HA-30A