人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.30 | お客様事例
これからの製造業のあり方とは
―ICEMSurf、CATIA V5を有効活用―

株式会社エイム様は、自動車で培われた技術力と柔軟な発想力で、自動車だけではなく、住宅、環境などに貢献する製品を企画、設計、生産と一貫したシステムをグループでご提案されています。常に世の中の変化をいち早く捉え、お客様本位の付加価値の高い商品やサービスを展開されています。

今回は、企業変革を短期間に実践、成功された背景と製造業のあり方や、ICEMSurfとCATIA V5の運用など、いろいろなお話を代表取締役 生沼均様、取締役 中安敬治様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
代表取締役
生沼 均 様

当社は、1925年に東京都渋谷区でプレス工場として創業を開始してから、今年で78年になります。

当時はプレス金型だけでしたが、現在は、自動車関連の企画、開発、生産、組み付けまで一貫した体制でモノ作りのご提案をさせていただいています。グループ全体としては、エイムの自動車で培った技術力を中心として、住宅、コンセプトカー、環境、福祉に貢献できる製品やサービスを展開しています。

企業変革に取り組む

【樹脂系製品の分野へ参入】

当社は、町のプレス屋という下請けからなかなか脱皮できず、バブル時代に事業の拡大を図れなかったという背景がありました。また、私は大学卒業後に入社し、プレス金型に携わっていましたが、プレスだけをやっていることに疑問を持っていました。他CADとワイヤーカットのNC機械を導入して高度なこともしていましたが、下請けの構図は変わらず、ご提案したいことがあってもできない状態でした。

そこで、平成7年に3代目の代表取締役に就任した年に、設計から我々でできるようにHZSの3次元CAD(GRADE/CUBE)を導入したのが最初の取り組みでした。その当時、3次元CADは高額でしたが、他のメーカと比較し、お客様とのインターフェースのことを考えてHZSのGRADEを選びました。

図面通りの部品を作ることが、それまでの仕事でしたので、GRADEを導入して、全く何もないところからモノを作るような仕事内容に変わったことが大きな転機でした。それまではプレス屋ですから金属が主体で平面加工でしたが、GRADEの導入と共に樹脂系の製品で3次元加工の分野にも参入することができました。このときGRADEを導入しなければ、金属加工屋で終わっていたかもしれません。

【見える部分の製品を作る】

これまでも自動車、家電などの金属部品を作っていましたが、製品の裏側に入る見えない部分でした。そのため、GRADEを導入したときの意気込みには、目に見える製品を作りたいというのがありました。製造業としては自分達で作ったモノの確認ができれば充実感を一番感じるのではないかと思っていたのです。最初の目に見える大きな仕事は、車の特装部品で、データをいただいて、設計から商品化するまでの一貫した工程を受注することができました。

【設備投資の考え】

設備投資で他社と違うところは、仕事があるから設備を整えるのではなくて、先行して設備を整えて、それを営業ツールとしてアピールして仕事を受注し、設備を運用していくという形です。GRADEを導入してから、一貫した流れの仕事ができることをお客様にアピールして、1年後には仕事を受注することができています。その頃から大手メーカ様が我々のような中小企業に一貫した仕事を出すケースが多くなっていたので、そのことも後押しするような形で、相乗効果が出たということです。

また、それまで我々の製造設備はプレス設備だけで、設計した金型は全て外注に委託していましたが、樹脂製品の設計が多くなったので、平成11年7月に自動車用の大型樹脂成形機を3台導入して、設計から一貫した設備体制を整えました。

製造業のあり方(ICEMSurf、CATIA V5導入)

【製造業から創造業へ】

次の変革として、2000年から企業プランを変えていく構想を積極的に進めています。その中で、製造業であり続けるためには、何も無いところからモノを作るための力を持つということで、「製造業」から「創造業」にキャッチフレーズを変えようとしています。

今年の4月にホームページ(http://www.aimer.co.jp/)をリニューアルして、見ていただけると分かりますが、エイムグループで、自動車、住宅、生活環境などに役立ついろいろな製品、サービスをご提供していこうとしています。これまで培ってきた自動車の技術を基に、社会に貢献するような製品へ技術を利用していきたいということです。我々はデザイン系の分野が非常に多いので、それをメカニカルな部分まで落とし込んで、総合的なひとつのモノとして作り上げていくというのが最終的な方向になっています。

そのため、今の技術力を高めながら、最新のテクノロジーを積極的に導入していくということで、CATIA V5を導入しました。

自動車の技術から波及していって最終的には、ひとつ集合体の商品として世の中に出すのが目標のひとつです。たとえば、キャリアカーといわれる電動車椅子がありますが、このようなモノをエイムブランドとして出していきたいと考えています。

【住宅に着目する】

住宅メーカが考える住宅ではなく、自動車製造メーカが考える住宅というのがひとつの方向でした。モノを考えて設計して作る、という一連のルーチンワークは、どの分野でも共通していますので、住宅分野も抵抗なく入っていけました。

最初は管制塔など鉄塔をやっていましたが、ある日、鉄というのが生活をする場所に適材しているのかと疑問が沸いて、それから初めて住宅というところに着目しました。我々は、できるだけ自然素材を使い、基本的には木を主体とした住宅しか受けていません。

自動車の動いている空間から住宅の止まっている空間をプロデュースするという流れです。

【自動車の架装】

人物の写真
取締役
中安 敬治 様

近郊の自動車メーカーから当社の工場敷地内に車両を搬送していただき、当社で設計及び生産した外装部品を後架装しています。これらは通称「エアロパーツ」と呼ばれるバンパーや光輝グリル・特殊グリルなどの取り付け加工等で、大量生産の工場ではできない小ロット生産の組み付けをお手伝いしております。搬送していただく車両は、装着する部分が部品レスの状態で搬送されてきます。今回は部品を架装メーカーに搬送するよりも部品メーカーが部品を必要な分のみ生産し、部品生産工場で架装をし、部品輸送費、在庫管理費の削減ができることを提案し、実現することができました。最大、架装は1000台生産した時もありました。

今までは、部品を設計する会社、生産する会社、架装する会社が分かれていましたが当社は一貫して提案ができるようになりました。

CAD画面
自動車のグリル
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

【ユニバーサルデザイン】

ユニバーサルデザインが、我々のコンセプトになり始めています。ユニバーサルというと、普遍的、すべてのという意味ですが、利用者が一番使いやすく、体力的に負担がかからない、バリアがない、ということです。その人の体型、体重などに合わせた最適な寸法が一番使いやすいので、究極はワンメイクなのです。

そのひとつが自動車のユニバーサルデザインで、コンセプトテーマを設けて、それぞれの目的、用途に合った移動環境を総合的にプロデュースします。

今後は、自動車架装、加飾部品技術を生かし、個々に対するカスタマイズやワンメイク車両や部品のご提案を実現したいと考えております。

設計風景

もちろん住宅にもユニバーサルデザインを随所に取り入れています。たとえば、階段の段々の手すりです。人間は上るときは引っ張る力を使い、降りるときは突っ張る力を使います。違う力を使うため、両方兼ね備えようとすると手すりは2本になるのですが、それを1本にしたのが段々の手すりです。

CATIAは、ユニバーサルデザインを実現するためのツールとして優れています。住宅には積極的にCATIA使っていこうとしています。

【ラビットイヤーの開発設計】

ラビットイヤーといって、ウサギの耳に似た形のドアノブです。手の不自由な方や、両手のふさがっている場合などでもドアを開くことができます。この製品を開発設計しているときに、ICEMSurfを導入しました。基礎研究をたくさんしているわけではありませんが、すぐに役立つものを製品として作っていこうと思っています。

ラビットイヤーのICEMSurf画面
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
製品の写真
ラビットイヤーのICEMSurf画面(左)と製品(右)

【これからの製造業のあり方】

社会はバリヤフリーからユニバーサルになり、この次は循環型社会になります。それは、資源ごみゼロエミッションからもう一歩進んで、必要なものを必要なだけ作る時代です。そういう時代になったときのモノ作りに我々が活躍できると思っています。

製造業のあり方というのは、モノだけを作っている時代からどうやって世の中との関わりを持ちながら進めるかという時代がくるのではないでしょうか。そういう製造業でなければ、最終的には生き残っていけないのではないかと思います。それから、こういう総合的な仕事をしていると、役に立つ必要なものを見つけていく視点は必要だと思います。

たぶん世の中が変わっても、その時代に合わせたモノという形が変わっていくだけで、製造業のあり方というのは、それほど変化するものではないと思っています。企業スタイル、カラーをどうやって作っていくかというところが一番重要なことだと思います。企業スタイルを作れれば、それを継続させることは非常にたやすいのではないかということです。

【エイムグループの企業スタイル】

当たり前の常識を備えた集合体が会社であって、その集合体に参画してくれる社員がそれなりの人間形成ができていることが一番の理想です。どんなに優秀でも挨拶ができないようであれば当社はいりません。

どれだけ人材を育成できて、それを継続させられるかということです。

従業員は50人以上にしないというのがエイムの方針です。50人の中に残りたいのであれば、事業努力をしなさいということで、全員が経営的な発想を持つようにしています。

今後の展開

【プレゼンテーションルーム】

定盤と測定器を備えたプレゼンテーションルームを作ろうとしています。実際にプレゼンテーションルームに自動車を入れ、測定してクレイモデルを作り、そのサーフェイスデータをICEMSurfに取り込んで設計、デザインの強化を図っていく予定です。

ICEMSurf、CATIAを活用しながら社会に貢献していくことが使命と課題で、それを企業ベースで採算を取りながら展開していこうとしています。

プレゼンテーションルームの予定図
プレゼンテーションルームの予定図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

【ISO14001】

既に、環境マネジメントシステム(ISO14001)を取得していますので、今度は設計やCADの中にISOの工夫をどのようにしていくか検討していく予定です。素材や環境との適合などいろいろあります。

【住宅と農業の工業化】

社員食堂
社員食堂

5年前に企業のプランを考えて、週末の滞在型の農園というのを提案しています。週末だけ来て畑をやって泊まる住宅が付いていれば、ゆくゆくは永住することもできます。これは各地方でやり始めています。

やはり環境、自然というのがひとつのキーワードになっています。農業の発想にはない技術と化学を組み合わせたものが最終的には、有機肥料による農業の工業化ということです。我々は1000坪の農園を持っていて、高齢者でもやっていけるフィールドを作ろうと試験的な栽培もしています。また、季節のいろいろな野菜を栽培、収穫して社内食堂でも食べています。これには背景があり、製造業というのは、作る時代から育てる時代になっていくことを社員が分かってくれればと思っているのです。

HZSについて

長くお付き合いをさせていただくためには、システムの情報だけでなく、世の中の流れ、背景などこれからの企業としての方向を判断できるような情報が必要です。HZSとはコミュニケーションを通じながら、お互いにいろいろな情報を出し入れできていると思います。これからも情報の提供をお願いします。

おわりに

高い志を持たれ、製造業として環境のことを一番に考え、社会に貢献できることを常に追求されているお話をお伺いし、大変勉強になりました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社の写真
本社工場

株式会社 エイム

本社工場 栃木県小山市梁2333 東部工業団地内
創業 大正14年8月(1925年)
資本金 4,000万円
従業者 50名
事業内容 自動車内外装の部品の開発・製造、特装自動車の架装、電化製品の部品の開発・製造、鉄骨材料類の受託加工。
製品の写真
樹脂メッキ製
ラジエーターグリル
製品の写真
金属製エキスパンドメタル
スポーツグリル
製品の写真
バンパー加飾用樹脂メッキ部品
製品の写真
リア
コンビランプ
製品の写真
アクリル製
プラスチックバイザー
製品の写真
車内用
アームレスト
製品の写真
防犯監視カメラ用
意匠ケース
製品の写真
ハードディスク
ハウジング

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