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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.30 お客様事例

Space-E V5でCATIAデータの共有を図る

松下ホームアプライアンス社様は、アプライアンスグループとして、一体運営、開発リソースの集中により、シナジーの最大発揮と高効率経営を目指した事業活動を進められ、ナショナルブランドの総合力を発揮されるよう邁進されています。また、企業として環境の維持向上の取組みを積極的に推進されています。

今回は、GRADE/CUBEからSpace-Eに、そしてSpace-E CAA V5 Based(以下Space-E V5)へと移行された背景や効果を中心に、いろいろなお話を技術本部 電化住設研究所 試作開発グループ 技能師 古川昇様にお伺いしました。

事業概要

21世紀の新たな成長を目指した松下グループの再編に伴い、14の事業ドメイン別事業体制における家庭電化・住宅設備事業の領域を総括する会社として2003年4月1日、ホームアプライアンスグループが誕生いたしました。

ホームアプライアンスグループには、当社の他に空調社、松下冷機株式会社、松下設備システム株式会社、松下食品システム株式会社で構成され、一体運営、高効率経営を目指した事業活動を進め、「家庭電化事業」、「冷凍空調事業」、「設備システム事業」の3つの事業のグローバル展開を図っています。

試作開発グループでは、白物家電の研究、開発、試作ということで、新製品開発の支援と既存製品に関する試作支援が主な業務内容です。

人物の写真
技術本部 電化住設研究所
試作開発グループ
技能師 古川 昇 様

研究所の設計者が描いた試作図面をもとに設計から加工まで行っています。

具体的な白物家電としては、洗濯機(パルセーター、機構部品)、エアコン(冷却ファン、機構部品)、冷蔵庫(冷媒、機構部品)、掃除機(ボディー、吸い込みノズル、心臓部のファン)、炊飯器(ボディー、機構部品)、電子レンジ、食器洗い乾燥機(ノズル、ポンプケーシング、ポンプ羽)、IHクッキングヒーター、生ごみ処理機、ビューティトワレ、アイロンなどです。

その他には、白物家電に関する実験装置の開発設計、装置の製作を行っています。

GRADE導入の背景

【GRADE/CUBE】

1993年頃から、自動車のターボファンを基にした掃除機のファンを開発するのに、自動プロを駆使しながら3次元まがいの形状を作っていましたが、開発期間、コストが非常にかかってしまいました。そこで他部署が導入していたCATIAを借りて試行錯誤を繰り返しながら、形状検討を行って設計し、加工データを作成することをしていました。

しかし、CATIAは下32桁の精度が高いモデルを作成することができ、優れたCADだと思いましたが、工作機械で動く軌跡は下3桁のため、当時としては、そこまでのモデル精度は必要ではありませんでした。また、この頃からせっかく作成した3次元データが研究試作で終わるのではなく、何とか開発から量産まで3次元データを流用できないかと考えはじめました。

そこで試作開発グループでも3次元CAD/CAMを検討することになり、当初10社ほどベンチマークテストをさせていただき、最終的にHZSのGRADE/CUBEを導入することにしました。

導入の決め手はGRADEの柔軟性が気に入ったということとNCの編集機能が優れていたということです。1993年に最初のGRADE/CUBEを導入し、1994年、1999年と増設をしています。

研究所は研究関係の仕事が忙しいため、3次元化が進んでいませんでした。ですがCUBEを導入して、試作開発グループでも3次元形状作りから加工まで、3次元データでのモノづくりを始めました。

【Space-E】

ところが、CUBEはUNIXベースのため専門知識が必要でしたので、なかなか後継者が育ちませんでした。

その頃から社内でダウンサイジングが言われ始めたため、次世代CADということを考えながら3次元CAD/CAMを再検討し、最終的にはそのままのノウハウが移行できるSpace-Eを導入することにしました。2001年にSpace-Eを導入し、同じ年の後半に増設しています。

【Space-E V5】

以前からCATIAは、モデル作りに優れていますが、CAM部分が非常に弱かったという認識がありました。Space-E V5は、CATIAの優れたCAD機能がそのまま使えて、CAM部分はSpace-EのNC機能を備えているので2003年4月に導入を決めました。

Space-E V5を導入して、数年前から考えていた研究所だけの仕事に留まらず、事業部と同じCATIAベースで動くという理想の形になってきたので、3次元データをそのまま量産まで持っていく構想が実現できそうです。

3次元CAD/CAMの最初の検討時にGRADEを選定していて本当に良かったと実感しています。

導入の効果

【開発期間の短縮】

ある部品で自動プロでは5日間かかっていましたが、それがCUBEだと3日になって、Space-Eだと2日になりました。ですから自動プロの頃から比較すると開発期間を約60%は短縮できています。うまくいけば、1日で完成できる部品になりました。昼までにデータを作って、昼から加工している間に反対のデータを作って夜加工するということができるようになりました。

GRADEを導入しての一番の効果は、今までできなかった部品ができるようになったということです。

【CATIAベースで効率化】

この1年ぐらい、デジタルモノづくりということが言われ出して、業務の流れの中でデータをどのように有効活用するかが重要になっています。ここでいうデータとはCATIAが主流になっています。そのため、事業部から仕事の依頼がきても、事業部はCATIAで3次元設計しているので、Space-Eの場合は中間ファイルが必要だったため100%同じとは言えないところがありました。それがCATIAベースのSpace-E V5であれば、CATIAの生データで作業できますので、このことが最大の効果だと言えます。

またSpace-E V5は、ソリッド機能が充実していますので、それらの機能をフルに活用することで更に効率化が期待できます。

【量産まで】

実際に3次元モデルを作って事業部にデータを提供しています。改良した掃除機のファンですが、この3次元データは量産の金型工場で、そのまま金型に使われています。ですから金型を変更したい場合は事業部ではなく、3次元データを作成した当グループに依頼されます。

このように試作開発グループで作成した3次元データが、量産の金型工場までいき、量産の確認が取れれば有効に活用してもらえます。

改良を加えた掃除機のファン(左:Space-E V5モデル、右:部品写真)

Space-E V5モデル
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
部品写真
Space-E V5モデル
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
部品写真

今後の展開

【開発期間の短縮】

事業部からは既存製品の改良を依頼されますが、新製品は研究所で提案します。新製品が次々に出されている今の時代では、製品を短期間で開発していくことが必須になります。実際、事業部からは製品の開発納期についての要望もあがってきます。

本年度3月に販売して好調な、酸素エアーチャージャーは全く新しい製品です。この酸素エアーチャージャーの商品化には、構想から半年もかかっておらず短期間で商品化することができました。

今後もSpace-E V5で開発期間の短縮を進めていきます。

【設計から解析まで】

解析には、いずれ取り組みたいという構想はありますが、なかなか手がまわりません。Space-E V5を導入したことで、次はモノづくりから解析まで行って、各事業部に実際の品物と3次元データを全部提供できればと思います。

設計風景

【ノウハウの蓄積】

伝統工芸の職人は、機械では作れないものを作りますが、職人の特徴がありますので同じものを作るのは大変難しいことです。

その職人技を後継者に伝承するには何十年もかかりますが、CAD/CAMはある程度道筋を作って、その道筋を覚えれば同じものができます。

そこで最初は、道筋を作ることから始めて、自分の持っている板金の職人的なノウハウをCAD/CAMに入力し、蓄積できないかと考えました。最初の道を引くのは難しいですが、一度引いた道は容易に渡れます。また、容易に渡れる道でも自らの努力でいくつもの道が開けると思います。短期間で手間をかけずに同じ良いモノを作れれば、これに越したことはありません。

多品種少量生産の試作における加工ノウハウは、汎用加工機(旋盤・フライス盤など)で培ってきた技能が加工条件・段取りなどに大いに役に立ちます。加工では段取り・切削条件によって仕上がりが最も左右されるので、そのような条件を一元化・標準化し蓄積していく予定です。

【次期設備について】

今後も時代にマッチした次世代の3次元CAD/CAMは調査していきます。現在は、STLデータを作成して事業部に造形を依頼していますが、魅力を感じているパウダー造形技術、あるいはマルチ加工機(光造形をしながら切削加工機)などの将来を見据えながら次の設備として考えていきたいと思っています。

【研究所試作部門として】

研究所試作部門として、時代にマッチした製品を市場へ早期に送り出すには事業化へのスピードアップを図り、事業部への更なる支援が必要になります。それらを踏まえてSpace-E V5によるCATIAの生データを共有化することが必須になります。

それと同時にモデルの完成度を上げるためには、技能集団として更なるスキルアップが望まれます。また、松下ホームアプライアンス社全体の試作部門におけるITを駆使して一体化した試作活動することが、これからを担う技能者集団の使命だと考えます。

今後も研究企画~研究開発~引継ぎのあらゆるステージで研究開発は、試作開発を通じてバックアップし、新規製品・新規事業の立ち上げに貢献していきます。

【メンバーの意識】

我々は、技能に関しては常にスペシャリストを目指し、向上意識を持っています。当社では、自分の能力はどの位置にあるかを確認し、あるいは更にレベルアップを図るために技能競技大会を推進しています。

技能競技大会は、各分社内で開かれます。その中で優秀な人が次のステップとして全社技能大会(年一回)に出場する仕組みになっています。大会種目は、旋盤、フライス、仕上げ、電子機器・要素組立、LA、CAE、2・3次元CAD、パソコン・3次元CAD/CAM、その他多種職種に渡り行われています。これらのステージを利用して個々人の更なる固有技能の深堀と、裾野を広げる努力をするように取り組んでいます。

HZSについて

CATIAは、たくさんのモジュールから構成されていますが、それぞれに費用がかかるため統合して低価格にしてほしいと思います。それから、2次元の平面図、側面図、正面図、3面図を自動認識して3次元モデルが間単に作成できる機能を希望します。それに加工情報を入力するとNCデータが作成できるようになれば、自動化が実現できます。HZSとは十年からのお付き合いですので、これからもよろしくお願いします。

おわりに

古川様は、19、20歳のとき技能五輪を目指し訓練を積んでいたそうです。技能五輪とは技能者が集まって、職種ごとの競技課題を仕上げ、その速さや正確さを競う競技です。1972年に日本全国大会で優勝し、世界大会はスペインのマドリッド行き、そこでも優勝されています。ただ、そのとき予定していた国での開催が取り止めになり、急遽スペインでの開催になったため、世界大会が親善大会になったとのこと。

その当時、松下電器様はダクトなどの板金部門が非常に強く、全国大会で優勝すると必ず世界でも優勝していたそうです。優勝されたとき、スペインの新聞に古川様の姿が一面に掲載されたとお話くださいました。現在は大阪府の高度熟練技能者として認定もされているそうです。

CUBEからSpace-E V5へ移行していくまでのお話や最近テレビでも話題になっていた技能五輪のお話など大変勉強になりました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社の写真
松下電器産業株式会社
松下ホームアプライアンス社
本社 大阪府門真市大字門真1006番地
設立 昭和10年12月(創業 大正7年3月)
資本金 2,587億3,700万円
従業員数 267,196名(国内・海外連結)49,513名(単独)
売上高 68,767億円(国内・海外連結)39,007億円(単独)
本社 大阪府豊中市日出町2丁目2番8号
設立 平成15年4月1日
従業員数 国内 約6,800名
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冷蔵庫
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酸素エア
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