人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.35 | システム紹介
3次元船殻CAD/CAMシステム
GRADE/HULLのご紹介
船舶システム部 部長 髙木 英治

はじめに

【GRADE/HULLとは】

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

GRADE/HULLは、機能設計から生産設計までをカバーする3次元造船用CAD/CAMシステムです。図面類は承認図から工作図まで、加工情報はNC切断からロボット溶接・塗装情報まで出力可能です。さらに物量管理情報や各種図面フォーマットのインターフェースも充実しています。

上流設計から現図システムまで、ご導入先のニーズにあわせてご活用できる統合造船システム。それがGRADE/HULLです。

【GRADE/HULLの生い立ち】

GRADE/HULLは、日本語対応の国産造船システムです。コマンド体系から出力情報まで、すべてが国内造船所の設計・生産思想に基づき開発されました。GRADE/HULLの母体となったのは、弊社が日立造船(株)とともに開発したHICADEC-Hシステムです。その全ての機能を搭載し、コマンド体系等を見直して、使いやすく再構成したシステムをGRADE/HULLとして販売を開始いたしました。

【GRADE/HULLの導入実績】

GRADE/HULLは、次のような造船会社、設計会社、研究所などにご導入いただきました。

  • 中小型造船会社:7社
  • 設計会社:7社
  • ユニバーサル造船株式会社:4事業所
    (旧日立造船:有明・舞鶴・神奈川、旧NKK:鶴見)
  • 独立行政法人 海上技術安全研究所(旧運輸省 船舶技術研究所)
  • 海外造船所:3社

GRADE/HULLが本当に「使える」システムであることは、開発元のいわゆる大手造船会社のみならず、多くの中小型造船会社でもご導入・ご活用いただいていることからも、おわかりいただけると思います。

GRDAE/HULLの特長

【同時共同設計】

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

造船設計では、一般の機械設計と異なり、設計対象が巨大であるため複数の設計者が協調して設計作業を進めます。ところが一般のCADシステムには共同設計の概念はありません。GRADE/HULLは、この問題を独自のデータベースアクセス技術SCON(Ship System Control)で解決しました。SCONを介することで、データベースへの同時複数アクセスを可能としたばかりではなく、あらゆる変更をリアルタイムで、全てのワークステーションに自動的に反映する機構を実現しました。

このSCONは、http等と同じくTCP/IPのネットワーク上で動作します。またインターネットもTCP/IPですから、接続インフラさえ整えば、遠隔地からの共同設計への参加も可能となります。HZSからの遠隔サポートもこの仕組みを利用していますので、お客様の直面する問題をHZSの技術者がその場で把握、即時に対応することができ、安心のサポートとしてご好評を博しています。

【自動修正機能】

たとえば下図において二重底の高さが変更された場合、旧来システムでは関連構造も含めて設計者がすべてを修正する必要がありましたが、GRADE/HULLでは二重底の高さの変更を指示するだけです。あとはシステムがすべての修正を自動的に行います。

しかもGRADE/HULL独自のSCON機構により、設計者が修正したモデルファイルだけではなく、その修正が他のすべての関連構造モデルファイルに自動的に反映されます。

他の断面の構造も自動修正されます

説明図
自動修正前
二重底の高さ
を変更

説明図
自動修正後

【類似構造生成機能】

船殻には、トランス構造のように類似した構造が多数あります。このような構造を自動的に生成できれば、設計時数の削減に効果的です。GRADE/HULLでは、手本となる構造の設計手順を、別構造にコピーするだけで類似構造が生成できます。また生成された類似構造に、さらに部分的な類似構造を追加していくことも可能です。

説明図
手本構造
類似構造を
適用

説明図
適用構造

【3次元モデル作成を二次元図面作成感覚で】

「3次元モデル作成」と聞くと「操作が複雑」とお考えになるかも知れませんが、GRADE/HULLでの3次元モデル作成は難しくありません。

造船設計者にとっては、おなじみの設計図面作成と同様の操作で3次元の船殻モデルを作成することができます。もちろん作成したモデルは常に3次元モニターで確認しながら設計作業を進めることができます。

画面例
設計画面
3次元の状態
を確認

画面例
3次元モニター

GRADE/HULLの構成

【UNIXとWindowsの混在環境に対応】

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

GRADE/HULLは、EWS(UNIX)とWindows PCの両方に対応しています。また多くのソフトでは(CPUアーキテクチャが異なるため)この両種のマシンの混在使用はできませんが、GRADE/HULLでは(endian converterを内蔵し)両種マシンの混在環境でも、同一データベースでの共同モデリングを可能としています。

標準構成はサーバー1台+ワークステーション複数台ですが、導入台数が少ない場合は、ワークステーションにサーバーを兼用させたり、スタンドアロン(1台のみ)構成でのご導入も可能です。

【豊富なインターフェース】

GRADE/HULLは、モデル表示に弊社製汎用CADシステムGRADE/Gを使用しています(Windows版はSpace-E/DRAW)。したがって同じくGRADEをベースにしたアプリケーションとのモデル交換や、GRADEシリーズのために用意された各種モデル変換ユーティリティをご利用いただけます。また弊社プラントシステムPlantSpaceへのインターフェースも用意しています。管理物量としては、重量・重心(ブロック単位、組立単位)塗装面積、部材表、溶接長、取付長、NC切断のマーキン長、切断長、歩留まり鋼材帳票等をインターフェースファイルに出力可能です。帳票類については、PCのExcelで直接読むことができるCSVファイルでも出力します。また、他社製造船システム「SHIP」、「CAMSR」、「新NASD」、「CSCAD」とのデータ交換を行った実績があります。詳細はお問合わせ下さい。

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