人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.4 | お客様事例
GRADEでの設計について
ローレルバンクマシン株式会社
東京工場
代表取締役社長 池邊 様

ローレルバンクマシン株式会社様は、金融機関をはじめ多くの業界向けの現金処理、周辺機器およびシステムなどを開発、製造、販売されている専門メーカです。国内はもとより、海外各地でマーケティング活動を展開されています。つねにエレクトロニクス技術、メカニカル技術、通信技術などの技術革新に取り組まれ、研究体制を整えられています。

今回は、GRADE導入の背景、設計への利用、3次元への取り組みなどを中心に、代表取締役 社長 池邊様、取締役工場長 小久保様、東京工場長付部長 網野様、開発管理部 管理1課 係長 千葉様にお話しをお伺いしました。

事業内容について

人物写真
取締役工場長
小久保 様

貨幣処理及び周辺機器の専門メーカとして今年が創業50周年になります。

金融機関の現金にまつわる全ての機器を扱っています。キャッシュディスペンサーの現金を数える自動機は、昭和45年に当社が初めて開発しました。

現在は、テラー&テラー出納システムや精算システム、硬貨、紙幣の処理端未機器からシステムサポート機器など総合的な製品とシステムを開発、製造、販売しています。

機器の開発から量産にいたるまで、長いものでは2年半かかるものもあります。一般家電とは違ってひとつのモデルを開発すると、お客様のシステムに合うようにカスタマイズしてご利用いただいています。

最近では、韓国の500ウオン硬貨が九州に大量に入ってきて、自動販売機で使われる被害がでていました。韓国の500ウオン硬貨は、日本の500円硬貨と同じ寸法ですが、価値が約8分の1違います。最近では、似かよった硬貨、似たような材質で本格的な変造硬貨が持ち込まれることが増えています。硬貨の場合は物理的な寸法などで選別しますが、紙幣の場合は、いろいろな基準で選別しますので大変苦労します。

変造などをどのようにして選別するか研究開発室で検討し対応しています。

GRADE導入の背景

昭和62年7月に第一期システムとしてGRADEを導入しました。

当時の設計は機械化という流れがあり、その流れに乗り遅れてはいけないということが第一の目的でした。当然効果は期待していましたが、テスト的に使用して、最終的には社内の標準化から効率化ということを目指して導入しました。

その導入の10年前から具体的にCADAMを検討していたのですが、1社だけではなくて2社検討することになり、GRADEも選定する対象になりました。その後、検討した結果CADAMとGRADEの両方を導入することにしました。GRADEの選定理由は、コストパフォーマンスとカスタマイズ対応がいいことです。また、ある程度コマンドの作り込みができることが条件でしたので、GALというツールがあったことも理由のひとつにあげられます。

設備構成について

当初はMV7800で端末を2台接続してはじめました。

現在ではSUNのSSシリーズが第2研究所に7台、第3研究所に40台で計47台、別にサーバが1台あり、I-DEASとしてIndigo2を1台導入しています。その他には、第2研究所と第3研究所の開発部門間をつなぐ目的でピクチャーテルを2台導入しています。

GRADE による設計について

人物写真
開発管理部
管理1課
係長 千葉 様

基本的には基本構想から詳細設計をして、部品図を書いて、さらに製造系の情報、組立資料など設計が提出すべき資料を作成しています。

基本構想を作ったときに、断面図を見ると装置の基本的な特徴がわかりますので、それを作り込んでいくスタイルが多いのですが、基本構想、詳細図と分けている人もいます。

大きい機械になると10数ユニットの構成になります。その1ユニットあたりのアイテム数というのが、1ファイルに3面図を書いて6万アイテムになってしまうものもあります。部品種類が300から500、件数が1000を越えてしまうというのが平均的なユニットで、それが10ユニットで1つの装置ということです。このままでは、GRADEで一度に処理できないため、それぞれのユニットの外形だけを取り出して、組立図にする処理をしていますが、それでもGRADEの制限の6万アイテムぎりぎりになります。

製品の開発には、継続性のある場合とそうではない場合があるため、今までの部品が使えないというケースがかなり多くあります。もちろんバリエーションだったり、シリーズだったりすると、既存ファイルを呼び出して、ユニットの絵をひとつ置いて、周辺だけ変更すれば使えるスタイルのものもあります。

カスタマイズはマクロ化ということで、GALでコマンドを作成しています。作成したGALコマンドは、約300個ありますが、現在の基本コマンドで既に対応済のものを除けば、使用頻度の高いコマンドは20個ぐらいです。

作成しているGALコマンドの内容は、アクティブリストを対象にした編集系の複写や移動などがほとんどで、その他はモデルを扱うモデルコピー、プレイスなどです。まだ標準化というところまでは、到達できないのですが、ベアリングとか組み立てに必要なネジなどの購入品は、データがあるので、データベースから呼び出して設計図上に配置することができます。それぞれはモデルですので、GALで作成した選択式のメニューから選んで配置しています。

CADが標準化の推進役になるのでは、と期待していましたが、対象部品の選定とかいろいろな雑多な理由があって、今のところは思うように進んでいません。

操作画面
車のリアコンビネーションランプのランプ
操作画面
図2 GALコマンド実行画面

CAD導入の効果について

5年前にCAD導入の効率化について調査しました。1点の部品を基本設計から入って作成するのに、1人あたりが要した日数を調査した結果、ドラフターが1.29日でCADが0.79日でした。これは約6割の効率化になります。現在ではさらに効率化を図っています。

また、CADを導入することにより、グループ作業が非常に楽になりました。最低でも1グループ5、6人で作業します。手書きの場合、トレーシングペーパに書き込んでいくため、それぞれのユニットの境界の情報などは、当然相手の図面を青焼きして、自分のトレーシングペーパと重ねて確認しなければいけません。このような手作業だと、相手の最新の図面情報がリアルタイムに見ることができませんでしたが、これがCADだと、相手のモデルを決めた原点に配置しておけば、相手の様子がリアルタイムにわかります。モデルを呼び出せば、相手がファイルしたところまでは確認できるということです。

その他に、グループリーダのチェックもCADを使ってかなり有効にできます。個々のファイル名は決まっていますので、リーダは個々のファイルを呼び出して、事前にチェックすることもできるようになりました。

今後の取り組み

人物写真
東京工場長付部長
網野 様

システムのインテグレーションとしては、パソコン側とのドキュメント系情報の検索などを目的にしたCIMやPDM、3次元CADの導入であったりしますが、今目指しているのは試作レスへの取り組みです。実際に試作の装置をまったく作らない、ということはないのですが、事前にできるだけ多くのシミュレーションをすることにより、物を作って評価して、不具合を見つけてそれを直す、という試作の反復作業を少なくしていきます。物を作って確認するのではなく、設計しながらコンピュータでCAE的なことまでやりたいと考えています。干渉などの単純なシミュレーションだけでなく、構造解析などで事前に熱や強度に問題のある部分が分かれば、その検証のために試作をする必要がなくなります。極端なことをいうと、設計して物が完成すれば、それがすぐ売れる商品になっているというのが理想です。

このような試作レスを実現させるには3次元CADが必要です。今は、拡大導入の選定期間で、試験導入という位置付けでI-DEASを使用することにしています。来年度はじめに、最終的に統一した3次元CADの第一期導入を考えています。

ワークステーションもパソコンも1人1台あり、物理的なネットワークはつながっているので、メイルシステムは一部では既に利用しており、さらにイントラネットに取り組んでいきます。

HZSについて

カスタマイズに関することや、LAN環境やプロジェクトごとのサーバ設置に対してのネットワークの完備など、SEの対応は助かっています。またハードウェアなどに関しても、その時々に応じた安くて、性能が良いものを紹介していただいています。

これから2次元から3次元に移行していくためには準備や情報が必要です。また、I-DEASを早く立ち上げて、いきとどいたサポートをお願いします。

その他にも、パソコンのドキュメントシステム、検索システムなど、技術情報の検索にも取り組み、設計データを上流から下流まで使用できるようにしたいので、情報提供および支援をお願いします。今後は、営業、技術、生産が一体となってコンカレントエンジニアリングをさらに推進していきます。

最後に、ぜひ情報交流できるユーザ会を行ってください。

おわりに

昭和56年に現在の紙幣へと変わるときに苦労されたお話しや、貨幣の偽造についての対処など興味深いお話しをお伺いすることができ勉強になりました。

たいへんお忙しいところ、貴重な時間をさいてお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真

ローレルバンクマシン株式会社

創業1946年
資本金払込資本金1億5,700万円
従業員1,372名
資本金5,000万円
売上げ高約320億円(平成7年度)
営業品目各種貨幣処理機、同システム及び金融オンライン端末機の開発、製造、販売、保守
東京工場東京都北区東田端(従業員:約400名)
製品写真
ATSシリーズ窓口専用機器
製品写真
硬貨処理機
製品写真
紙幣処理機