製品設計と生産現場を近づけるDarwin Vue
PLM事業本部 開発統括部 PLMソリューション開発部 部長 広崎 貴 |
はじめに
3DビューワDarwin Vueは、製造業における設計・生産業務を画期的に効率化します。製品データを3D化するだけでは、設計~製造のあらゆる工程を3次元化したことにはなりません。実際に製品設計、部品設計、金型加工などを除くと、まだ2Dベースの業務がほとんどです。打ち合わせ・確認作業を3D化するとともに、金型構想設計分野も3D化することで企業・地域を超えた包括的な3D効果が得られます。これまでの3DCAD、NC加工、解析といった3Dツールの部分最適と比較しても1世代新しい業務改革となっています。
新機能の紹介
Ver1.8の機能とVer1.9に搭載予定の新機能から、一部を選んでご紹介します。
※ Ver1.9は2009年第一四半期に出荷開始予定です。
【一般向け機能】
■2モデル比較 (Ver1.9搭載予定)
設計変更があった場合に、変更前・変更後の相違点を探したり、相違部位についてコメントを付けたりする機能です。図1のように左右2画面表示状態で変更前形状を左ウィンドウに、変更後形状を右ウィンドウに表示させ、2画面連動モードをONにします。一方のモデルをマウスでビューイング操作(回転・拡大など)すると、もう一方のモデルも追従して表示されます。さらに差異のある部分をわかりやすい位置で表示させ、変更理由などを記入してコメントに登録することができます(図2)。ビューワデータを閲覧する際には、コメントツリーを再生表示すると、差異のある部分だけを追いかけることができ、形状差異や変更理由などを瞬時に認識することができるようになります。
※注:この機能は、システムが設計変更(形状変更)箇所を計算して探し出す機能ではありません。変更箇所がわかっている担当者(自身で設計した、または変更説明資料が手元にある)が確認しながら資料作りを行うような場合に利用します。
【MOLD金型検討機能】
■アンダーカットチェック(Ver1.9搭載予定)
形状データに対してキャビ抜き方向を指定して、アンダーカットになる部分を抽出し表示します。図3のようにスライドを配置しないと抜けない場所に色を付けて示します。赤色の部分はいわゆるアンダーカット部で、緑色の部分はキャビ抜き方向に対して平行な面(立て壁部)でアンダーカットになるところです。
チェック結果で色がついた部位に対し、スライド方向を指示することでアンダーカット表示箇所を取り除いていく機能も開発中です。金型構想設計時・確認時にアンダー部の見落としを防ぎます。
■型締め力計測 (Ver1.8)
樹脂部品形状に対してキャビ抜き方向を設定し投影面積を計算します。型内圧力、取り個数、安全係数を入力して型締め必要力(TONf、Kgf)を求め、注記として残すことができます。
■厚みチェック( Ver1.9搭載予定)
マウスで形状表面を指示すると、その場所における肉厚を計測して表示します。図5のように指示箇所における法線方向に厚みを計測します。従来の計測機能では肉厚方向の表面と裏面の2箇所を指示する必要がありましたが、表面側からの指示で操作性良く計測できます。
■モデル移動(Ver1.8)
Darwin Vueに部品データを読み込み、計測や注記作成を行った後に、設変データを読み込んで比較検討する場合に、設変データの座標系が変更前のデータと違っている場合があります。このような場合に基準位置を合わせることで形状比較や指摘箇所の修正状況を効率良く行うことができます。
また、設変前後で変わっていない面をそれぞれの部品形状内で指示することで、一回で位置あわせを行うこともできるようになりました。
【プレス金型検討機能】
■剪断力計測 (Ver1.8)
プレス部品の展開形状を指示し、外周または内部穴を含めて剪断箇所の長さを求め、板厚・剪断抵抗、安全係数をかけて必要TON数を表示します。これは、コスト見積り向けの機能です。形状の周辺稜線からの自動計測だけでなく、手書き修正を加えた加工線からも剪断力計測を適用できます。
■プレス工程レイアウト( Ver1.9搭載予定)
単発のプレス金型設計において工程順に剪断、穴あけ、バーリング、曲げなどの加工部位を色分けした線で作画し、工程の組み換えや削減ができないかの検討・確認をする機能に加えて、全工程を1シートにレイアウトして表示する機能を追加しました。レイアウトの段数や背景色、前工程の加工部位を次工程に反映する・しないの選択を行い、レイアウト図を印刷出力できます。
Darwin Vueの導入効果
Darwin Vueで多くの業務に3D検討を導入して、以下のような効率化を総合すると、1製品(部品数 約1,000点)の新規量産立ち上げをトータルで見たときの原価を概算比較した結果、コストが30%低減できた事例があります。
- 検討漏れによるミスが減り、品質が良くなり対策費が減った(誤解、洗練化不足が早期に対策できるようになった)
- 納期が早くなった(遅れがなくなった)ことによる待ち時間の減少
- 委託先振替時の再調整時間が短くなったことによる費用削減
- リスクの少ない部品については、安価な委託先に容易に振り替えられるようになったことによる直接的な費用削減
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