人とシステム

季刊誌
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No.57 | システム紹介
3Dコミュニケーションツール
Darwin Vue Ver.1.10 のご紹介
PLM事業本部 開発統括部 PLMソリューション開発部
部長 広崎 貴

はじめに

3DCADで設計し、3DCAMで金型加工する。CAEで各種解析を行う。このような設計・製造業務向けの道具でカバーできていない分野において、Darwin Vueが新たな3D業務改革をご提案してきました。
その最新バージョン(Ver.1.10)の機能概要をご紹介します。

Ver.1.10 新機能の概要

金型構想設計を3D電子データで行うことは、後工程での手戻りを防ぐだけでなく、調達側・受注側双方にとって精度の高い部品立ち上げ工程計画の策定・実施が可能となる、戦略性の高い業務改革です。
その中でDarwin Vueは、これまで主にPL検討を目的とした3D線作図や金型要件を簡易に表すシンボル、型構造の概略を示す矢印、コスト見積に直結するアンダーカット部位の検索機能や型締め力計測機能などを揃えてきました。

金型詳細設計においては、より多くの検討が必要です。たとえば水管レイアウト、金型部分における強度確認、エジェクタピン突き出し必要量などです。
しかし、初期検討時にまず押さえておかなければならない要素は、やはりPLとスライドです。コスト見積りに直結する要因であり、サイズ・構造によって部品の成形工程計画にも影響するからです。

そのため、今回は3D部品形状データに基づき、傾斜スライドの配置を検討する機能を追加しました。

■傾斜スライド検討

図2
図2
図1
図1

図1のような部品形状で、図2のようなツメがあった場合に傾斜スライドを配置して、型の全体構造に収まるか、部品形状の他の部分や、他のスライドとの干渉が無いか、などについて検討します。

3Dですばやく傾斜スライドを配置して、部品形状としてスライドの成立性を検討し、さらにスライド配置状態を3Dイメージで伝達することが目的です。

図3
図3

図3は、本コマンドのメニュー画面と部品形状での対話操作によって、傾斜角度、突き出し量、実アンダーカット量等を考慮したスライドブロックを配置したところです。(緑の部分)離型時のスライド位置を紫の面で示し、他スライドや形状との干渉を確認します。

実際に3次元型設計を行い、型図出力を行う作業の場合は、より厳密なスライドブロックの角度・長さの検討、形状干渉の検討を行って仕様確定する必要があります。

しかし、金型調達の計画策定、外注先との見積り整合段階においては、製造に必要な精度の検討よりも、より多くの金型に対して均質なレベルでの見積り根拠を早く示すことが肝要です。

図4
図4

図4は、傾斜スライド検討機能のメニュー画面です。型設計CADに近いパラメータ調整機能がありますが、主目的はスライド設計ではなくスライド検討です。
しかし、その際に見落としや見込み違いがなるべく起こらないように、3次元型設計時に行う検討に近い精度で、事前に検討が行えるように配慮しています。
ここは、PL作図と同様に型設計のQCDに大きく関わる部分なので、金型仕様伝達ツールとしてもある程度踏み込んだ機能で検討が行えるようにしました。

傾斜ブロックの3D表現は、ワイヤーフレームモードか面表現モードを選べます。両方を生成することも可能です。
お互いのスキルが見えている場合、これまで金型仕様のすり合わせを既に行ってきた相手先の場合は、ワイヤーフレーム表現による傾斜スライド検討結果を残すことで十分に意図が伝わり、エキスパート向けの表現と言えます。

面表現によるスライド検討結果の表示は、より実際のスライド配置イメージに近く、間違いの無い検討結果の伝達に向いています。
将来のバージョンでは、さらにスライドブロックが製品形状に隣接する領域を色塗りして示す機能の開発を予定しています。

現時点では、ソリッド部品としてのスライドブロックを生成して配置検討する、という機能開発は予定していません。あくまで初期検討時における金型成立性の確認、という目的に向けた仕様です。

図5
図5

図5は、図3と同様のツメに対する傾斜スライド検討です。赤丸の部分でスライドブロックが形状と干渉することがわかります。
このような場合、傾斜角度などのパラメータ調整で回避できるのか、スライドブロック形状に切り欠きを設けるなどの工夫を行うのか、製品形状のツメ位置の変更を促すのか、対策によって影響範囲が大きく違います。

また、設計変更を要求するにしても、必ずしも取り入れられるとは限りません。
このような検討が型着工直前で初めて行われて問題が見つかった場合は、可能な対策も限られます。試作形状データが配信されたら、なるべく早い時期にこのような検討を数多く均質にこなすことで、金型検討の3D化という新しい取り組みが実際の効果を発揮することになります。

図6
図6
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
図7
図7
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

■肉厚比率チェック

以前からある肉厚測定機能に加え、基準肉厚との比率を手軽に確認できる機能を追加しました。

図6のように、いわゆる意匠面に対してリブが数多く設置されている形状において、意匠面の肉厚を基準としてリブの肉厚を連続して計測し、意匠面肉厚との比率で要注意箇所を検出する機能です。

図7は、意匠面ベース肉厚2.0mmでリブを順に指示していくと、計測結果の肉厚を数値表示すると同時に、ベース肉厚との比較で設定したしきい値以内であるかどうかによりリブ形状・計測結果表示の色を変えます。
緑が設定範囲内、赤が設定しきい値を超えた肉厚のリブを示します。

■2Dイラストの再利用

2Dマーキング機能で作成した説明図(いわゆるポンチ絵)にタイトルを付けて複数登録して再利用することができるようになりました。
似たような説明図が頻出する場合に作図工数を削減できます。

■オブジェクトコピー&ペースト

作成済みの注記(3Dバルーンなど)をコピーして別の3D部位に貼り付けたり、他のコメント再生状態に適用したりできるようになりました。

■計測機能の改善

3D形状計測では、2要素間の最短距離計測において平面・直線の延長上からの距離測定が行えるようになりました。
また、同一の機能のバリエーションとして3D形状の端点、稜線、面指示による距離計測で、2D投影図上での計測と同様な結果になるような「2D計測モード」を追加しました。

■マルチCADリーダへの対応

「人とシステム」No.55(2009年10月発行)でご紹介したように、JT、OneSpaceDesignerなど多くの3Dデータフォーマットの読込みに対応しました。

おわりに

製造業における設計業務と生産業務の中でDarwin Vueをご導入いただくことで、設計内容の打ち合わせ・確認・検討作業を3D化するとともに、金型構想設計分野も3D化することができます。

さらにグローバル化が推進すると考えられるものづくりの現場で、企業・地域を超えた包括的な3D効果をDarwin Vueがお手伝いできるものと考えます。

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