人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.6 | お客様事例
PC-CADを利用した設計

モリマシナリー株式会社様は、トップレベルの生産設備と最高の技術力、妥協を許さない製品作りへのこだわりで、成形機、成形ロール、舶用燃料ポンプ駆動装置などの業界では、他社を寄せ付けない圧倒的シェアを誇られています。

今回は、GRADE導入の背景、PC-CADでの統合システムの構築、今後の課題などを中心に、取締役社長 森様、成形ロール部 ロール設計課 CAD/CAM係 黒住様にお話しをお伺いしました。

事業内容について

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取締役社長 森 様

当社は精密機械装置を製造している会社です。工場は3つあり、営業所は、東京、名古屋、大阪の3カ所です。成形機、成形ロール、省力機械、舶用エンジン部品、プレス、精密機械の6事業部で、10商品を扱っています。

成形機とは、自動車の丸物、四角物、家電、建材向けのパイプ、型鋼を作る機械です。皆さんがよく知っている注射針ですが、この成形機は日本で使われている85%が当社の製品です。業界に参入した昭和45年は、注射針の外形6mmが一番小さかったのですが、当社が合理化を進め、成形機で作る世界最小の外形2.4mmにしました。

15~16社のライバル会社は成形機しか作っていませんが、当社は成形機と成形ロールを作っています。一般的にいうとミシンを買ったら針が付いているということです。お客様としては、治具をそろえなくても即座に製品を作ることができます。機械の値段としては、7千万円から10億円ぐらいで、これまで1台で10億円の機械を、3台納品しています。大きさはというと、全長150m、高さ5mの大きなプラントを製造した実績があります。

また、新建材は全部といっていいほど扱っています。特に銅、チタン、ステンレス、アルミ合金など非鉄金属は業界トップです。

全社的な長所は、熱処理と電気制御が強いことです。もちろん機械設計はいうまでもなく、50人の設計者がおり、部品加工の機械は全種類持っています。現場で一品料理でこれだけコンピュータを使っているところはありません。

GRADE導入の背景について

最初は1986年にGRADEを汎用機で導入しました。

他社も調べましたが、GRADEに決めた理由は、当社も昭和60年頃まで舶用がメインでしたし、HZSの母体が日立造船であるということで、GRADEの説明を聞いていてもフィーリングが合うというか、言葉が理解しやすかったということ、日立造船からの年月を入れるとCADのキャリアが非常に長く、操作性も非常に良かったということなどです。

導入して3年後に、アメリカの会社から成形ロールの提携指導を申し込まれました。さっそくアメリカに行くと、成形ロールの技術指導はできるのですが、CADを操作してもらうと、丸管、型鋼、単発部品を選び、板厚などの入力だけで瞬時に形状が表示されたのです。当社では、表示だけで30秒はかかっていたので驚異でした。アメリカの会社は5mipsで当社は0.4mipsのマシンだったので全然性能が違います。それからすぐに見積りを取り、平成元年に当時で一番速い16mipsのSUNを導入しました。マシンの反応が速いので非常に能率も上がりました。

現在では、成形機事業部13台、成形ロール事業部9台、自動車部品部1台、精密機械事業部1台、制御電子設計室7台の合計31台をHZSから導入しています。

PC-CADでの統合業務システムの構築

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成形ロール部 ロール設計課
CAD/CAM係 黒住 様

昨年、成形ロール事業部に、PC-CADを6台と、GRADE/ACE-W、PC-Link/NT、Autodesk Mechanical Desktopを導入し、アプリケーション作成もお願いしました。CADだけではなくて、データベースや計算書などすべてを関連させたコンカレントなシステムを構築し、効率化と省力化を実現したいと考えています。

データベース化

一般的な業務情報と設計情報のデータベース化を最初の目標にしました。営業や設計・製造に必要な設計情報としては、図面情報や基本設計情報、設計工数情報などです。

CADの操作性向上

AutoCADのカスタマイズ言語が簡単ということ、EXCELやデータベースなどのアプリケーションを総合的に扱えるということで、パソコンCADを選びました。また、タブレットからコマンドを入力する以外に、プルダウンメニューからも入力できるので、使用用途が広がります。

会社風景

自動化CAD

今まではCADで作成したものを紙に出力して、それを作業者が数値として手書きで記入し、それをまたチェックするので、ミスも多くかなりの時間がかかっていました。また、当社のロール形状はかなり複雑で、寸法記入ミスとか寸法を落とすことがかなりありました。このようなことを改善するために、自動寸法線、カラー表図面の自動表示、自動出力などのアプリケーションをHZSにお願いしました。自動寸法線で作成すれば、検図とかマスターカードを打つときに記入ミスや書き写しミスなどを防げます。また基本設計では、フラワー展開の自動計算と自動作図をCAD上で行えるようにしました。

CAM

これまでは、テープで出力していましたが、今回よりFDでのデータ渡しに変更しましたので、所要時間が4割に短縮される予定です。また、CAMのNCデータ自体が、全部の旋盤に使えなかったので、同じデータが使えるようにしました。CAMシミュレーションソフトも導入し、AutoCADの上で動作する専用CAMソフトの作成もお願いしています。

当社で時間をかけてシステムを作ってもいいのですが、担当が変わると問題になりましたので、できるだけ、HZSで作ってもらって、次回のバージョンアップにも継続して使用できるようにしています。

今後の課題について

ロール成形事業は最もニーズが厳しく、注文から納品まで、20日間という短い納期です。ですから、最もCADを重視する部署です。このロールは月間2,500種類作成しています。

工場の状況が把握できなければ、営業から客先の品質、納期の要求に対して、的確に解答することができません。そこで、各作業単位で実績を集めて、工数表に反映させることで、より正確なスケジュールを作成し、信頼できる進捗状況が把握できるような仕組みを作りたいのです。そうすると営業が製品の形状や難易度を連絡するだけで、自動的に確実な納期解答が戻ってきて、スムーズに仕事が受注できるのです。これが、「山積み山崩し」です。これからの日本で成形ロールが生き残れるか、一番厳しいところなので、なんとしても実現したいと考えています。

その他に、次のような将来的な目標があります。

まず、知識データベースを作っていきたいということです。設計者の頭の中に入っている経験と勘に頼るところを、最終的には知識データベースに入れて設計できるようにしたいということです。これは、繰返しの設計作業に時間をかけず、さらに技術を向上させるためです。

次に、営業製造に関しては、並列実行で営業、製造、設計の3者が、いろいろな情報を即座に入手できるコンカレントな業務システムの構築です。将来的には「山積み山崩し」の基礎になります。

HZSへの要望について

成形ロール事業部では、短納期の製品が多いので、トラブルによるシステムの停止が、2日以上になると致命的です。

システム停止の期間を最小に抑えられるシステムということで対応をお願いします。今後、CAD図面やデータベースの設計データなど随時使えるようなものを作っていきたいと考えています。これもHZSにサポートしてほしいと思います。

これからは、知識とシミュレーション的なものとを一致させないと駄目です。その点でシミュレーションや解析などのソフトが必要ですし、データベースもいろいろでてきていますので、HZSとして具体的に推奨するもの、進む方向を提示してもらいたいと思います。また、当社に合ったものを積極的に提案してもらいたいと思います。

GRADE/ACE-Wでは、ファイル処理とユーザインターフェイスをもう少し改良してください。

HZSについて

ハードやソフトの性能はどこも似たようなものなので、一時的には、他社が改造版のソフトを早く出して、操作性が良くなることもありますが、これからの商売は、それだけで営業しても駄目です。それに加え、会社の方向性が合うことが重要です。

HZSは、企業として当社と似通っているところがあり、経営的にもHZSの話しは非常に参考になります。またソフトの話しを聞くと、当社の将来のソフトのあり方を先行して考えることができます。それに造船からの出身ということで、言葉が合います。

パソコンCADを得意とするメーカはありますが、EWSのGRADEと接続することなど、トータルな問題になるとHZSでなければできないと思います。パソコンでの立ち上げは、パソコンの専門会社が早いかもしれませんが、それは仕方がないと思います。逆に言えば、HZSはEWSからパソコンによく転換できたと思います。はじめは危惧していましたが、うまく乗り切れると思います。

心配なのが保守の問題です。これからAutoCADなどいろいろなものを組み合わせて1つのシステムにしたとき、AutoCADは3年、データベースは1年など、保守の年限がばらついたときのサポートはどうなるかということです。それに対処していってもらいたいと思います。

おわりに

お伺いした本社、工場は豊かな自然に囲まれて、のどかで落ち着いた環境にありました。鉄工所としては若い方が多く、平均年令30歳だそうですが、皆さん10年以上のキャリアを持たれているベテランばかりだそうです。

たいへんお忙しいところ、貴重な時間をさいてお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真
会社写真
天神第二工場

モリマシナリー株式会社

本社岡山県英田郡英田町
創業昭和23年3月23日
資本金2000万円
従業員320名
売上げ高63億(平成8年度)
営業品目冷間ロール成形機、成形用ロール、ATC、APC、AAC、舶用燃料ポンプ駆動装置、舶用大型カム、砥石金型、自動車部品、精密部品
成形機
成形機(RD220L)
製品
成形ロール
製品
舶用燃料ポンプ駆動装置