人とシステム

季刊誌
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No.65 | システム紹介
3D TIMON 最新 Version 9.3とTIMON for CATIA V5(I/F)システムのご紹介
東レエンジニアリング株式会社
CAEソフト事業部 原 貴子 / 結城 高志

はじめに

厳しい企業環境の中、国内の射出成形品の生産は、新しい成形法や複合部品、またEVなどの新規機能部品などが中心になってきつつあり、これら製品の開発について、さらなる期待がCAEに課せられています。

このような中、東レエンジニアリング株式会社は2012年2月に、射出成形シミュレーションソフト"3D TIMON"の最新バージョンVer9.3をリリースいたしました。

ここ数年、"3D TIMON"はMulti Mold(多色成形)、Reactive Mold(熱硬化樹脂用解析)など、お客様から要求される機能を順次開発してきました。"3D TIMON"は簡易かつロバストなメッシュ作成機能、高速な3次元解析機能を基盤技術として有しており、ショートショット、ウェルドライン、そり変形などの不良現象確認、そして最適な製品形状やゲート位置、冷却回路の配置の検討などに広く活用されています。

今回の紙面では新規開発したVer9.3の主な機能と3D TIMON解析用のランナー・ゲート設定がCATIAR内で簡単に行うことができる「TIMON for CATIA V5(I/F)」について紹介します。

"3D TIMON"Ver9.3の機能

図1 非定常金型冷却解析結果
図1 非定常金型冷却解析結果
図2 マルチ成形解析の1次材再溶融評価機能
図2 マルチ成形解析の1次材再溶融評価機能

金型冷却解析の強化

非定常金型冷却解析機能が搭載されました。成形開始から金型温度が安定するまでの金型各部温度の時刻歴変化や安定後の熱溜り部の有無が金型断面を高速に表示しながら確認することができ、より高精度な金型設計が可能となりました。(図1)

マルチ成形解析ソルバーの機能強化

これまでの樹脂流動解析では予測困難であった2色成形における不良現象である2次材からの熱による1次材の再溶融・流れ出しについての予測機能が搭載されました。

当該機能を使用することで、2次成形品の形状やゲート位置、成形条件、さらには材料の組み合わせを変更しながら不良現象を回避するための適切な条件を検討することが可能となりました。(図2)

熱硬化解析の機能強化

熱硬化材料の解析において、新しく追加されたトランスファー成形の解析機能により、タブレットのPre Heat過程の影響、タブレットの圧縮条件を考慮した流入状態の解析を行うことが可能となりました。(図3)

マルチスレッドCPUに対応した並列化(充填、繊維配向、そり変形解析に対応)

充填解析、繊維配向解析、そり変形解析モジュールについてマルチスレッドCPUに対応した並列化を実施しました。モジュールによって異なりますが、30%~400%の高速化が実現され、解析時間短縮により多くのケーススタディが可能になり、きめ細かい検討ができるようになりました。

図3 タブレットの圧縮条件を考慮した充填解析
図3 タブレットの圧縮条件を考慮した充填解析

TIMON for CATIA V5(I/F)システム

「CATIA」と「3D TIMON」とのシームレス連携による解析作業の大幅な効率化を実現するインターフェースシステムです。CATIA V5上で「3D TIMON」に必要なモデル作成・保存・編集が可能であり、そのまま「3D TIMON」を起動することができます。

また、ランナーシステムコマンドによるランナー・ゲート設定作業の省力化、さらにパワーコピー機能を活用することで、形状が異なるモデルに対してその都度実施していたスプルー・ランナー配置がカタログ登録して再利用できるため、モデル作成・編集作業が大幅に効率化できます。

今後の展開

  • 解析精度のさらなる向上を目指し新たな物理モデルの構築
  • 解析メッシュの高精細化に伴う大規模モデルに対応したシステムの構築
  • 射出成形シミュレーションでの結果を用いた構造解析との連携
  • 様々な成形不良の評価技術の確立

などから生産性の向上、開発期間短縮に役立つ射出成形CAEシステムの提供を目指していきます。

さらなる進化を続ける「3D TIMON」にご期待ください。

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