人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.8 | お客様事例
デザイン・イン体制について

株式会社タカギセイコー様は、プラスチックの特性を活かし、つねに研究開発しながら時代のニーズへ迅速に対応された商品群を追求されているプラスチック工業部品メーカです。長年の技術を蓄積された「TS生産一貫システム」により、高品質、短納期、低コストを実現されています。

今回は、GRADE導入の背景、デザイン・イン体制、今後の課題などを中心に、取締役 金型事業部長 上野様、金型事業部 業務課 次長 畑山様、金型事業部 生産設計二課 係長 島田様にお話をお伺いしました。

事業内容について

人物写真
取締役 金型事業部長
上野 様

当社は、プラスチックの工業部品の専門メーカです。本社は高岡市にあり、創業57年を迎える歴史ある会社です。独自の資本経営で、331億円の年商は、国内でもかなり大手になると思います。

新湊工場の敷地内に金型事業部の金型/技術センターがあり、金型事業部は約160名の従業員で、売り上げ共に会社全体の約12%を占めています。

扱っている商品は、2輪、4輪、農業機械、建設機械の分野が年商の1/2で、残りはコンピュータ、OA機器、精密部品、携帯電話などです。最近では携帯電話が非常に多く、平成8年の9月から平成9年の8月までに560万台の外装を作っています。これは、日本で販売された携帯電話の1/3強になります。

仕事の内容としては、研究開発/技術開発、金型設計・製作、成形、塗装・組立てまでを一貫生産ラインで行っています。成形は射出成形が主体で、ガスアシスト成形、高速低圧成形などの射出成形を行っています。その他にもDCPD-RIM成形、ブロー成形、回転成形、超大型のFRP成形などや、後加工の接合、溶接なども行っていて、工業部品のあらゆる分野に対応でき、さらに各々の工程について独自のノウハウを持っています。

製品の品質については、開発段階では設計評価、製品化にいたる工程では製品評価といった、デザイン段階から組み立てまで、ISO9000に準拠した品質評価体制を導入しています。

プラスチックにもいろいろな作り方があるので、お客様が求めている機能、価格、品質に対して、当社は、最も適している成形法を検討し提案することができます。

近年、NCデータを大量に作ることが急務になってきたため、NCデータ作成を専門にした合弁会社(ディモス)を設立しました。また、中国にも金型製作の事業を展開しています。

熱版での溶接
熱版での溶接
製品組み立てよう治具
製品組み立てよう治具
5TONオートグラフ
5TONオートグラフ
(品質評価)

GRADE導入の背景と設備構成について

人物写真
金型事業部 生産設計二課
係長 島田 様

GRADEを選んだ大きな理由は2つあります。まず、CAMのことを考えると、その当時、複合面加工ができたのはGRADEだけでした。また、CADからCAMまでのデータの流れを考えるとGRADEしかありませんでした。次にCADのことを考えると、サーフェイス形状を取り込んで断面を作りながら、図面を書きたいということ、そして金型設計用システムを構築したいという要望がありましたので、カスタマイズ性もあるGRADEに決定しました。昭和62年にGRADE/NC(DS版)を3台導入し、現在ではGRADEを36台導入しています。その他にも、ICEM SURF 1台、VERICUT 1台、WORK NC 2台を導入しています。

工作機は、最大NC加工サイズ2,500mm×1,500mmの安田工業のパレットチェンジャー付き高速FFマシンを導入しています。これは定価2億円の機械です。非常に精密で、通常のマシニングセンターの3倍の仕事量をこなします。

作業風景

スピンドル :Max 10,000回転
送り速度 :Max 7,000 mm/min
ストローク :Max X-2,100 Y-1,500 Z-1,500
最大積載量 :8トン(3枚パレット)

GRADEのカスタマイズ

導入してすぐに金型設計用システムをHZSと共同で作成するために、打ち合わせを頻繁に行いましたが、その当時は実現することができませんでした。そうするうちに5~6年前にHZSからGRADE/MOLDがリリースされたので、それを参考にしてGRADEベースに2次元の金型設計システムを作ることができ、金型設計の自動化を行ってきました。それと同時に、CAM機能のほうでもGAL、GIPを使って、穴あけ加工機能をカスタマイズしました。

また、設計からCAMにデータが流れる間に、いろいろな情報を付加できるようなシステム作りを3~4年挑戦しています。

HZSには、長い期間に渡ってカスタマイズしてもらっています。

GRADE/CUBE-NCでは、加工データを作成した後のポスト処理部分を当社専用にカスタマイズしてもらいました。その他のGRADE/CUBE-NCの機能では、カスタマイズではなく基本機能に取り込んでいただけるように、要望を出しています。

デザイン・イン体制

金型事業部は、成形方法だけではなく、デザイン段階から量産工場の立ち上げまでを、一貫した技術で対応できるというのが特徴のひとつです。製品の開発、設計では、デザイン・イン体制をとっており、サーフェイス設計とソリッド設計に分かれます。

従来のデザイン・インは、お客様のところで作業を行っていましたが、現在は、お客様のところで打ち合わせをし、データはISDNで転送し、社内の同じワークステーションで設計作業をしています。デザイン・インを行うために、個々のお客様と同じプラットホームを整備しています。

1. サーフェイス設計でのご協力体制

2輪車、4輪車の外装は、非常に微妙で複雑な部分があるため、現状はソリッド化は難しく、サーフェイスモデラーのデザイン・イン体制が主体になっています。従来は、破線と実線の両方をお客様が行っていましたが、デザイン・インということで実線で囲んだ部分を、お客様といっしょに行っています。ほとんどの場合、クレイモデルの段階でお客様に協力して金型を作っています。例えば、クレイモデルができたところで、3次元測定器やデジタイザーで測定して、それをICEM SURFで面を張るところなど、やり取りしながら進めています。
金型の詳細設計はGRADE DASH/DRAW、製品設計と加工データ作成、金型設計のパーティング設計には、GRADE/CUBE-NCを使っています。加工データ作成に関しては、WORK NCも併用しています。IGESデータとしてお客様から送られてくるフレームなどの基準データをもとにモデリングしています。また、他のCADデータは、社内でIGESデータに変換してGRADE/CUBE-NCに取り込んで作業しています。

2. ソリッド設計でのコンカレントエンジニアリング体制

お客様がソリッドデータを出してくる商品に関して、金型設計から加工データまでをソリッド化しようとしています。現在ソリッドデータで設計しているのはOA関係です。コンカレントエンジニアリング体制というのは、お客様の設計に協力して製品設計と金型設計を同時に進めていくことです。
まず、3次元の基本設計ということでアセンブリ設計を行い、肉抜きやCAEでシミュレーションします。そして、コーナR、抜き勾配を全部付けた状態をソリッドデータとして完成させます。次にソリッドデータを粘土で反転したようにキャビ、コアを作り、それにMOLDベースをレイアウトして金型の設計をします。CAEは、流動解析、冷却解析、構造解析のソフトを使っています。
現在は、ソリッドデータにさらにアソシエイティビティを持たせた状態で加工データまで作成できるように進めています。

挿絵

HZSに期待すること

人物写真
金型事業部 業務課
次長 畑山 様

HZSと共同開発をしていこうということで、いくつかのテーマを決めて定期的にミーティングを行い、半年に1回の割合でGRADE/CUBE-NCをレビューすることを、1年半続けています。その中での今後の課題は、CAM機能のアップ、操作性のアップはもちろんですが、インテリジェントということを考えて、工場の機械を無人で24時間、365日稼働させられる加工に優しいNCデータを作ってほしいということです。

これからは、NC加工の未経験者がCAM担当になっていくので、作成したデータが適切かどうかGRADEが判断するとか、正常でないNCデータであればNC工作機が警告を出すとか、NC加工のオペレーションも含めたCAMソフトや、工作機械であってほしいと思います。

GRADEは、もともと加工が得意ですから、工作機械メーカ、刃物メーカと協力して、NCデータと工作機がインテリジェントに有機的につながっている仕組みを作ってほしいと思います。

NC工作機械から発生するさまざまな状況の積み重ねをデータベースに蓄積して、どのような加工物ができるのかを、加工する前にシミュレーションができなければ意味がありません。例えば、ここを切削すると刃物が逃げて面が汚くなるとか、NCデータが正常でも、刃物の突き出し長さが長いので、図面通りの寸法にならないとか、送りが遅いので加工時間が倍かかるなど、これらの経験値の積み重ねがデータベースとなり、加工の適性を教えてくれることを期待しています。それには、加工結果をフィードバックできる工作機械が必要です。

このように、機械工具、NCデータを中心にした次世代のインテリジェントな工作機械にするとか、工作機械を意識したNCデータを作成するなどを実現される方向にHZSが進むのであれば、我々もできるかぎり協力したいと思っています。

我々の目標は、世界一の金型工場にしていくことですから、それに向けての努力は惜しみません。

HZSについて

気兼ねなく、いろいろなことが相談できるというところがHZSのいいところです。ソフトのことだけでなく、サーバシステム、DNC装置やパソコンとUNIXを混合して使用するための環境などいろいろなことを相談しています。

また、HZSの自社商品だけでなく、トータル的にシステムインテグレートしてくれて、ICEM SURF、VERICUTなどいろいろな商品を提案してくれるところも助かっています。

その他には、いろいろな業界のことや、技術情報に関わるような、セミナー、発表会を適宜に実施してくれるので、非常に参考になります。

おわりに

株式会社タカギセイコー様では、製品の品質保証をするために、あらゆる温度・湿度への耐久性、印刷した箇所の磨耗具合、塗装の剥げ具合、製品寿命の評価など、さまざまな品質評価が行われていました。実際に評価室を見学したのは、はじめてでしたので大変勉強になりました。また、さまざまな成形機が設置されている工場内も見学させていただきました。

たいへんお忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真
本社工場

株式会社タカギセイコー

本社富山県高岡市
創業昭和15年
資本金15億3,700万円(平成9年8月末)
従業員1,501名(平成9年8月末)
売上げ高331億6,900万円(平成9年8月末)
主な営業品目プラスチック工業部品 [2輪車、自動車、OA機器、精密部品、携帯電話]
金型/技術センター富山県新湊市
製品
2輪車
製品
自動車
製品
OA機器