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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.89 システム紹介

プロフェッショナルウェルディングシミュレーションシステム
Simufact Welding 7.1 最新動向の紹介

はじめに

本項では、Simufact Engineering社が開発している溶接シミュレーションシステム「Simufact Welding」の最新動向をご紹介いたします。

Simufact Welding新機能のトピックス

Simufact Weldingは現在、最新バージョン7.1をお客さまにご提供しています。「人とシステム」No.74およびNo.83にてご紹介したバージョン(4.0および5.0.1)から追加された主な新機能は、以下のとおりです。

  • 日本語に対応したアプリケーションGUI
  • 新しいプロセスタイプの追加
  • 円すい台形状の熱源モデル
  • 新しい要素タイプ「ソリッドシェル要素」
  • 大規模モデルに対する新しい解析アプローチ

日本語に対応したアプリケーションGUI

図1 日本語に対応したアプリケーションGUI
図1 日本語に対応したアプリケーションGUI

Simufact Welding 7.1のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)は、日本語に対応いたしました(図1)。これにより、モデリングや計算結果の解析を、より分かりやすく実施できるようになりました。

新しいプロセスタイプの追加

図2 追加された新しいプロセスタイプ
図2 追加された新しいプロセスタイプ

既存のアーク溶接、レーザービーム溶接および抵抗スポット溶接に加え、新たに4つのプロセスタイプが追加されました。「ろう付け」、「電子ビーム溶接」、「応力除去熱処理」、「冷却およびクランプ」です(図2)。

(a)ろう付け

プロセスタイプ「ろう付け」を使用すると、融点の低い"ろう"を使った溶接(ブレージング)が考慮できます。ろう付けでは、熱源からの入熱を溶接ビードのみに制限します。これにより通常のアーク溶接、レーザービーム溶接などとは違うかたちの熱影響を考慮できます。

(b)電子ビーム溶接

プロセスタイプ「電子ビーム溶接」を使用すると、真空チャンバー内で行う溶接を考慮できます。溶接中は対流熱伝達を考慮しないかたちで計算できます。そして、真空チャンバーを開口する時間が設定できるので、溶接後の放冷時間では、対流熱伝達を考慮した計算ができます。

(c)応力除去熱処理

プロセスタイプ「応力除去熱処理」を使用すると、加熱炉内における構造物周囲の空気(ガス)の加熱および冷却による熱伝導が考慮できます。加熱されることで降伏応力が減少するので、応力緩和の様子が観察できます。

(d)冷却およびクランプ

プロセスタイプ「冷却およびクランプ」を使用すると、すでに溶接した構造物に対してクランプの除去や追加の影響が観察できます。

円すい台形状の熱源モデル

図3 円すい台形状の熱源モデル
図3 円すい台形状の熱源モデル

これまで、レーザービーム溶接用の熱源モデルは、円筒形状のみの設定でした。新しいバージョンでは、このレーザービーム溶接用の熱源モデルが改良され、熱源形状の上部半径と下部半径を別々に設定できるようになりました(図3)。いわゆる先細りしている熱影響部になる場合に有効です。

新しい要素タイプ「ソリッドシェル要素」

従来の六面体要素に加え、新たに「ソリッドシェル要素」が使用できるようになりました。

ソリッドシェル要素は、六面体要素と同じ外観を持ちますが、積分点の位置および個数が異なります。六面体要素は各節点の近傍に一つずつ、計8つの積分点を持ちます。これに対してソリッドシェル要素は、積分点を要素の中心に7つ配置している低減積分要素になります(図4)。よって、通常の六面体要素を使用して、厚さ方向に3層作成する薄板モデルに対しては、ソリッドシェル要素を用いれば1層のみの定義で十分です。要素総数および節点総数を少なくすることができるため、結果の質を保ちつつ、速く計算することが可能です。

計算の事例を図5に示します。1mm厚の板を、ろう付けにより溶接する事例です。これを、六面体要素を使った場合と、ソリッドシェル要素を使った場合で比較します。

図4 各要素の積分点の位置
図4 各要素の積分点の位置
図5 計算モデル(ろう付けによる溶接)
図5 計算モデル(ろう付けによる溶接)

図6に溶接開始部を拡大したものを示します。同図(a)は六面体要素、(b)はソリッドシェル要素のモデルです。厚さ方向の精度を確保するために、(a)六面体要素のモデルは厚さ方向に3層のメッシュを作成し、積分点の数を6つとしています。これに対して(b)ソリッドシェル要素のモデルでは、1層で積分点を7つ確保できます。よって節点総数は(b)ソリッドシェル要素が少なくできます。

溶接終了後の残留応力分布(相当応力)を図7に示します。同図(a)は六面体要素、(b)はソリッドシェル要素の結果です。ほぼ同じような残留応力分布が得られています。そして、本モデルにおける計算時間は、六面体要素のモデルを1としたとき、ソリッドシェル要素のモデルは0.29(約3.4倍の速さ)となりました。結果の質を保ちつつ、速く計算できることが分かります。

なお、ソリッドシェル要素と六面体要素は、同一モデル上に共存できます。ソリッドシェル要素には向かない塊状の形状に対しては六面体要素を使用するなど、臨機応変なモデリングが可能です。

図6 計算モデル(溶接開始部を拡大)
図6 計算モデル(溶接開始部を拡大)
図7 溶接終了後の残留応力分布(相当応力)
図7 溶接終了後の残留応力分布(相当応力)

大規模モデルに対する新しい解析アプローチ

Simufact Weldingはこれまで、比較的小規模な構造物における溶接プロセスを対象としていました。しかし、実際の溶接プロセスでは、数メートル単位の溶接パスや、数百単位のスポット溶接を伴う大規模な構造物を対象にすることも少なくありません。このようなモデルの場合、溶接プロセスを一から計算すると、計算時間が極めて長くなることがあります。

そこで、新しい解析アプローチとして、「シングルショット」が加わりました。これは、例えば抵抗スポット溶接に対しては、全てのスポット溶接を、打順を問わず一度に実施する計算手法です。

図8はシングルショットによる計算事例です。4つあるスポット溶接点を、打順に関係なく一度に打ち込んでいます。溶接プロセスを一から計算するよりも、計算時間を短縮できます。変形の方向の予測など、傾向を手早く見極める上では、極めて有効的な解析アプローチです。

なお、シングルショットのための特別なモデリングは基本的には必要ありません。図9に示すように、プロセスの定義におけるチェックボックスにチェックを入れるだけで、シングルショットによる計算が可能になります。また、アーク溶接やレーザービーム溶接などでも、シングルショットによる計算は可能です。

図8 シングルショットによる抵抗スポット溶接の計算事例
図8 シングルショットによる抵抗スポット溶接の計算事例
図9 シングルショットによる計算のための設定
図9 シングルショットによる計算のための設定

おわりに

Simufact Weldingがリリースされてから6年になろうとしています。その間、絶え間なく進化し続けてバージョン7.1となった今、さらにユーザーフレンドリーかつパワフルな溶接計算解析用システムとなりました。本誌面で取り上げた新機能以外にも、既存機能の安定性など多くの改良を行っています。ご興味がございましたら、ぜひとも下記または担当営業までご連絡ください。

お問い合わせ先

株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
ビジネスインテグレーション事業本部
ソリューション企画室
CAEソリューション部 営業課
電話 03-5711-5358

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