NTT DATA — Trusted Global Innovator

株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.94 社長インタビュー

中国の急速なデジタル化を支えるCAXA
~「量」から「質」への転換期を迎える中国市場~

CAXA様は、中国市場を中心に製造業向けのソリューション、インダストリアル・クラウドなどを幅広く提供して成長を続けており、今や中国のIT業界でリーダー的な存在として、その役割を担っています。かねてより日本と中国の産業界は密接な関係を有していますが、NDESは、CAXA様と16年以上にわたり提携関係を続けてきました。
今回は、世界の製造業の中心として巨大なマーケットを持つ中国市場のデジタル化の状況と、製造業へアプローチを続けるCAXA様の現状についてお話を伺いました。

中国のリーダー的な存在として
業界を先導

NDES 代表取締役社長 東 和久
NDES
代表取締役社長
東 和久

 東京蒲田のNDES本社までお越しいただき、本当にありがとうございます。御社には、本誌「人とシステム」の45号(2007年4月1日号)でもお話を伺いましたが、今回、その後の御社の取り組みと中国市場の状況などをお伺いしたいと思います。まずは御社のご紹介を改めてしていただけますか。

 当社は2003年1月に北京で設立し、設立当初の主な製品は2次元や3次元CADとPLM(Product Lifecycle Management)だったのですが、その後、徐々にDNC(Direct Numerical Control)やMES(Manufacturing Execution System)などの産業用ソフトウエアと、それらをベースとする製造ソリューション開発および産業用クラウド・プラットフォーム・サービスに発展し、現在ではクラウド上でのSaaS(Software as a Service)提供と設計・製造などの産業用アプリケーション・サービスを提供しています。

当社は、中国国内を主な市場としており、お客さまの業種としては、設備産業や自動車・自動車部品、電子機器、航空宇宙産業などの製造業で、最近では学校を対象に教育や研修、トレーニングなどのサービスも手がけております。また、NDESは当社が一番初めに提携をした会社となります。

 御社とは、ターゲットとする業界が同じ製造業ということもあり、とても長いお付き合いをしていますが、前回取材した2007年から事業が変化した点をお聞きかせください。

 2007年からですと、当社では2つの大きな変化がありました。1つ目は、CAM、DNCおよび、MESなど、より製品製造に関係する総合的なソリューションの提供を開始したこと、2つ目は、産業用クラウド・プラットフォームを立ち上げたことです。これは、2010年に当社が中国で初めて"インダストリアル・クラウド・サービス"の概念を提案し、2013年には中国初の"インダストリアル・クラウド・プラットフォーム"を構築しました。現在、北京、四川徳陽、江蘇常州などの17地域で、エネルギー設備や金型など9つの業界向けにクラウド・サービスである「CAXA Cloud」を提供するとともに、そのクラウドを活用するSaaSとして、20個の設計・製造業向けのアプリケーション・サービスも提供しています。このように、当社はインダストリアル・クラウドのリーダー的な存在として中国の業界を先導する立場にあります。

CAXA様の産業用クラウドのウェブページ http://www.gongyeyun.com/
CAXA様の産業用クラウドのウェブページ
http://www.gongyeyun.com/(外部サイトへ移動します)
CAXA様のCAD製品購入のウェブページ 支払いは全て電子決済
CAXA様のCAD製品購入のウェブページ
支払いは全て電子決済

急速な変化を見せる
中国社会の今

 私は、今年の2月末に出張で大連に行ったのですが、最も驚いたのは誰も現金を使わないことです。全ての支払いが電子決済に対応しており、現金を持っていたのは外国人だけでした。

 中国では、モバイル端末の普及に伴って2010年頃から主要銀行によるモバイル・バンキングが進み、同時にモバイル決済市場が急激に広がりました。中国人民銀行によると2017年には中国の電子決済取引の規模が約203兆元(日本円で約3420兆円)になっています。レストランで食事をしても、屋台で食事をしても、基本的には現金を受け付けてもらえず、電子決済での支払いを求められます。そのため、普段、現金を使うことはほとんどありません。

 そういったモバイル環境を支えているネットワーク・インフラでは、次世代の5Gが話題になっていますが、中国ではどのような状況でしょうか。

 中国全体として5Gを推進しています。これまでは娯楽業界を中心に進んでいて、映画などの分野で応用されています。しかし、工業分野、産業分野での5Gとなると、高いレベルのセキュリティー要件を満たす必要があるため、それが解決しないと難しいと考えています。

 確かにセキュリティーの問題は重要ですが、近い将来の製造業では、5Gの適用が進むと思います。例えば、工場などの内部映像をAIが認識して、きちんと監視できるシステムの開発などが進んでいますが、5Gが普及することで工場から遠く離れた場所からでも、映像認識が遅延なく実現できるといいます。さらに5Gは、自動車の自動運転にも寄与していくことになると思いますが、中国の自動車産業の現状はいかがですか。

 最近、電気自動車(以降:EV)がすごいスピードで普及していて、需要も急増しています。2018年の新エネルギー車の販売台数は約125.6万台で、前年同期比で約62%増加しました。その中で、EVは約98万台(約51%増)、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)は約27万台(約118%)増となっています。

 最近の日本でも、EVやPHVの開発に拍車がかかっています。日本の自動車業界も百年に一度といわれる変革期に入っているので、欧州や中国の変化のスピードに追いつくために、自動車業界全体が変わりはじめています。他にも中国国内で変化していると感じることがありますか。

 今、中国では、とにかく「量」から「質」への転換を図っているところです。さまざまな産業の製品において、量だけではなく質を高めようという方向に変わっていますので、その対応が必要です。

 質というのは商品の質ですか、それとも商品に関連するサービスの質ですか。

副社長 陳 魏東(Chen Weidong)様
副社長
陳 衛東(Chen Weidong)様

 全てです。ソフトもハードも含めた形での品質の向上が求められています。自動車を売る場合、自動車そのものの品質を向上させることはもちろんですが、販売した後のサービスも商品と同じように捉えて、その向上も求められます。売った後もきちんと追跡ができて、きちんと管理できるトレーサビリティーが重要視されています。

 それは、中国の企業が求めてくる製品の要求レベルも高くなってきているということですか。

 中国のお客さまは、以前とは違い年々要求のレベルが高くなっており、世界的にも最高レベルの製品が要求されていると感じています。さらに、いち早いソリューションの提供やソフトウエアの更新なども求められています。これらはどの業界でも共通していることで、デジタル化に関する中国企業の変化のスピードは、他の国と比べてかなり速いと感じます。需要はとても旺盛ですが、中国の国内企業の技術だけでお客さまの高い要望に応えるのは難しいため、海外企業との技術協力が不可欠です。

国家政策で推進する
中国のデジタル化

CAXA CPSコラボレーションソリューション 製品データと製造工程計画データの管理を通じて、高品質な製造を実現する
CAXA CPSコラボレーションソリューション
製品データと製造工程計画データの管理を通じて、高品質な製造を実現する
CAXA DNC機器IoTソリューション ネットワーク通信で全ての生産機器を接続し、一括した工作機の制御管理を行う
CAXA DNC機器IoTソリューション
ネットワーク通信で全ての生産機器を接続し、一括した工作機の制御管理を行う
CAXA MESシステム 生産現場で、製造工程の状態の把握や管理、作業者への指示や支援などを行うシステムで、生産現場の見える化を行う
CAXA MESシステム
生産現場で、製造工程の状態の把握や管理、作業者への指示や支援などを行うシステムで、生産現場の見える化を行う

 中国のデジタル化へのスピードが、大変速いことについて、中国国内からはどのように見ていますか。

 中国のデジタル化のスピードの速さは、日々実感しています。なぜ中国でそれだけデジタル化へのスピードが速いかというと、2つの要因があると考えます。1つ目は中国企業の内部需要の要因で、各企業が情報のデジタル化によってあらゆるものの質を上げていきたいと強く考えていることです。2つ目は外部促進的な要因として、中国政府からの指導がかなりあります。包括的なデジタル変革は中国の国家政策であり、業界や企業だけでなく中国の国家全体にまで及んでいます。政府の主導政策で、スマート・プロダクトやスマート・マニュファクチャリングが進められており、そういった企業の需要と政策とが相まってデジタル化へのスピードがより速くなっていると思います。

 中国政府が主導している政策というのは、どのような内容なのでしょうか。

 今、中国では「互聯網+(インターネットプラス)」という、クラウドやIoT、ビッグデータなどの新技術を中心にインターネットをあらゆる産業と結び付け、従来の産業の新たな発展や競争力強化を目指した政策が展開されています。

 この政策では、御社も何か役割を担われているのですか。

 中国の「互聯網+(インターネットプラス)」計画では、製造、教育、AI、物流などの8分野に、それぞれ国家の実験拠点という場所があります。当社は製造分野の支援をずっと行ってきて、多くの技術と経験を蓄積できたということで、その中の「互聯網+製造」の国認定の実験拠点となっています。そこでは、他の中国企業の技術と結びつけた設計と製造に対する支援や、クラウドを使って各企業間を結び付ける作業も行っています。ここでは、一般向け製品の開発支援を行うのではなく、顧客ニーズに合った、あるいはニッチな隙間産業に合った製品の開発支援を行っています。

 他にも国家レベルでのデジタル化への政策があるのでしょうか。

 中国政府の政策として、先日、「デジタル化企業研習社」という組織が立ち上げられました。各分野の専門家が一堂に会して、どのように企業のデジタル化を進めていくかを話し合うことが目的です。その他にも、「中国情報化百人会」というデジタル技術やハイテクのシンクタンクのような組織もあります。このように、中国全体が協力する形でのデジタル化は、さらに加速すると思います。

 日本と比べた中国のデジタル化やIT化の速度には目を見張るものがあります。御社ではその理由をどのように捉えていますか。

 中国では、それまであまり発展していなかったり、弱かったりする分野に新しい技術が入った途端に一気に進展を見せる傾向があります。それは先端分野に限らず、さまざまな分野に広がっています。以前はハイテクというと、航空や宇宙産業などの最先端産業で使われるものと思われていましたが、最近は家具製作などの伝統産業でも用いられています。そういった分野に向けた設計・製造、情報共有などのIT技術の充実は産業に大きく影響していると思います。

中国のデジタル化の中での
CAXA様の取り組み

 今後、さらに加速しそうなAI関連での御社の状況はいかがでしょうか。

 まず、設計関連で考え、実験しています。例えば、インターネットの広がりで、もともと設計者たちが持っていた経験値がビッグデータとして蓄積されてきています。それを利用することで、初期段階などの一般的な設計の工程であれば、データ処理で対応できる状況です。しかも、できたデータをクラウド上でシェアをすることが可能です。その結果、今までは社内に多くの設計者を抱えたり、外部の設計会社に依頼したりしていたものが、必ずしも必要ではなくなってきています。設計者に求められるのは発想力や構想力で、実際に設計図を描く操作はAIでできるようになるでしょう。そのような大きな変化が起きている中、当社では専門性の高い製造業界に的を絞ってタイムリーにサービスを提供していきたいと思っています。そのためには、データの蓄積と業界のルール作りが必要です。また、AIのアルゴリズムに関しても、模索を続けていきたいと思います。また、NDESとは以前、人工知能やロボットの話をさせていただいたことがあります。今後は特定の分野でも協力ができれば、ぜひ進めていきたいと思います。

 ぜひ、よろしくお願いします。

御社ではMESも提供されていますが、IoTに関してはどのような状況でしょうか。

 当社のIoT事業では、機械、電子、および自動車部品業界の機械加工現場向けに、工作機械のNC加工機の制御システム、PLC(Programmable Logic Controller)、およびセンサーを使用してネットワークに接続し、機器間のデータの相互接続および相互通信を実現しています。設備の稼働データや生産データの取得、設備の故障などの状況の可視化、生産効率の可視化などが可能です。レーザー加工や板金プレス加工、溶接の現場にも拡大させています。また、IoTは、当社が直接関わっていない産業でも進んでいます。ライト・レール・トランジット(次世代型路面電車システム)や都市交通システム、自動車などでもさかんにIoTが使われていくと思います。

 先端技術の急速な普及や市場の変化が続くと、それに適した人材のリソース不足にも悩まされます。日本はどんどん若者世代が減少しており、就職する人たちも少なくなっています。特にAIやIoTの勉強をしている学生が少なく、優秀な人材は別の業界に取られてしまっている状況ですが、中国ではいかがですか。

 中国は人口が増え続けて、大学卒業生も増加しています。しかし、これだけデジタル化が急速に進む中で、当社も含めたこの業界では、人手不足を感じています。人材確保の競争相手は、実はインターネット業界とデジタルエンターテインメント業界で、優秀な学生の取り合いになっています。

 製造業の現場での人材確保はどうですか。特に、中国の金型産業の状況はどうでしょうか。

 中国の金型産業は、かなり速いスピードで発展しています。金型の設計・製作技術も大きく進展しています。ただ、金型製造には高い技能も欠かせず、技能者が減っていることが悩みです。実は現在、一部の学生の親が単純作業の製造現場で子どもが働くことを嫌がっているのです。そのため、国として、技能者を大掛かりに育成しています。

 元々中国に技能者は約800万人いるといわれていますが、去年から中国政府として年間200万人の技能者の育成を目指し、技能研修を受ける人たちを増やしています。対象は3種類あって、職業学院技術学校と専科学校と大学です。この3つの段階で、それぞれ技能者を増やそうとしています。

濃密なコミュニケーションでの連携を

 これまでは中国と御社の現状を伺ってきましたが、御社の今後の戦略を聞かせていただけますか。

 このところ考えているのが、今後、どのような業界のお客さまにフォーカスしていくかということです。基本は製造業のお客さまですが、もっと専門分野のお客さまに対して、製品設計や製造のためのソフトウエアを提供したいと思っています。PLMやMESといった総合的なソリューションの提案も継続的に強化していきます。また、ソフトウエア単体ではなく、ハードウエアとどうやって組み合わせたらいいか、例えばロボットとの組み合わせまで考えたソリューションを用意したいと思います。データの収集と活用やインターネット上で連携できるソリューションも提供していきます。

中国市場に関しては、これからも確実に開拓していきたいと思います。そのためにも、さらに営業拠点を増やし、より優れたソリューションを提供する前提で、現在の1プロジェクト50-100万元規模の売り上げレベルを1プロジェクト500-1000万元規模まで広げていくことが目標の1つです。

スマートフォンでのCADビューア
スマートフォンでのCADビューア

 以前、見せていただいたスマートフォンでのCADビューアについては、ぜひ日本のお客さまにもご紹介したいと思っています。そういう意味では、日本市場でもぜひ活躍していただきたいですね。

 ありがとうございます。当社が提供する商品は、常に一番良いものでなければならないと思っています。しかし、私たちだけで全て完結するわけではなく、NDESをはじめとする各社の協力が不可欠です。そのためには、私たちの技術や商品を活用して補ってくれるパートナーが必要です。海外のお客さまも順調に拡大していますが、長期にわたって連携を組めるパートナーと一緒に進出していきたいと思います。

当社の設立当初は、ソフトウエアを開発・販売する会社でしたが、今はソリューションの提案と提供、プラットフォームの構築まで総合的な事業を展開しています。今に至ることができたのは、中国のお客さまからの厳しい要望に応える中で対応業務を変化させ、事業を拡大させてきたからだと考えています。

 それはNDESも同じですね。かつてオンプレミスのソフトウエアが中心だったのが、ソリューションやサービスを提供する企業に変わってきています。私たちの親会社であるNTTデータでも、"GETS"というキーワードを打ち出しています。「G」は「Growth:成長する力」、「E」は「Earning:稼ぐ力」、「T」は「Transformation:変える力」、「S」が「Synergy:連携する力」です。一番重要なのがSynergyで、お客さまが求めるものを早く提供することです。グローバルなビジネスを続けていくためにも、今後とも協力体制をお願いしたいと思っていますが、NDESへはどのような点を期待していますか。

 足元の中国市場では、NDESの技術と製品での協力に期待します。また、日本市場では、当社の技術と製品との連携をお願いします。例えば、産業用クラウド・アプリケーションの推進や、自動車産業におけるPLMカスタマイズプロジェクトでの協力などが考えられます。そのためには、強固な協力体制を構築する定期的なコミュニケーションによる意思疎通がとても大事ですし、その中でビジネスチャンスも見つかると思います。双方の認識が一致した上で協力ポイントを見つけることで「Win-Win」の関係を維持できると思います。また、世界が一体化する方向に向かっていく中で、中国だけ日本だけと考えるのではなく、世界的な変化に速やかに対応できる体制づくりが重要です。それを、一緒にやっていきたいと思っています。そのためにも、NDESとは定期的なハイレベル会議の開催をお願いしたいです。

 同感です。定例会議なども含めて、きちんとコミュニケーションが取れるシステム作りを進めていき、今後も長く協業できる体制づくりができればと考えます。

本日は、長い時間ありがとうございました。

会社プロフィール

本社
本社
本社 中国北京市海淀区豊秀中路3号院9号楼
設立 2003年1月
事業内容 CAD、PLM、MESなど産業用ソフトウエアとインテリジェント製造ソリューションの開発、販売およびサービス。産業用クラウド・プラットフォーム上でのSaaS提供および設計や製造などの産業用アプリケーション・サービスを提供。