人とシステム No.100
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100号を記念してスタートしたこのリフレッシュコーナーでは、ちょっとしたアイディアのヒントになる情報や誰かに教えたくなるような話をお届けします。連載の第1回は、折り紙です。「折り紙の科学」※の著者である萩原一郎先生と奈良知惠先生のお話をもとに、今号から3回に分けてお送りします。1950年代頃から始まったとされる近代折り紙の話題を中心に、折り紙のおもしろさや産業化の可能性などをご紹介する予定です。※おもしろサイエンスシリーズ「折り紙の科学」(日刊工業新聞社刊 2019年3月発行) 著者:明治大学 特任教授 萩原 一郎 様・明治大学 研究・知財戦略機構 客員研究員 奈良 知惠 様産業面での活用が進む折り紙構造 次号では、蛇腹折りを活用した折りたたみ式ヘルメットの開発やリバースエンジニアリングなど、社会のいろいろなところで活躍している折り紙の科学についてお届けします。お楽しみに。近年、折り紙の世界でも生物模倣工学(バイオミメティクス)の観点から多くの研究が進められていて、例えば昆虫に学ぶことでたくさんの発見がありました。 テントウムシの後ろ翅はねの折り畳み方の研究成果は、人工衛星用大型アンテナの展開やミクロな医療機器、形状変化機能を持つ製品への応用が期待されています。昆虫に学ぶ 折り紙には、基本となる山折り、谷折りの他にも、中割折り、かぶせ折り、段折り、つぶし折りをはじめ、高等テクニックといえるつぶすように折るねじり折りや、複数のパーツを組み合わせるユニット折りなど、いろいろな折り方があります。 産業への応用が期待される折り方の一つに「らせん折り」があります。朝顔の蔓や巻き貝など自然の中によく見かけるらせん形状を再現したものです。1段あるいは数段の短い筒状のらせんを折り、それをいくつも積み重ねていくことで、らせん構造を持つさらに長い筒を作ることもできます。らせん構造を持つ筒には、方向が同一の「順らせん」と、1段ごとに逆方向に向かう「反転らせん」があります。これは、きれいに平坦化できて収納しやすいだけでなく、伸縮性を生かしたエネルギー吸収材などにも利用できます。 他に、宇宙探査機や宇宙ステーションなどで使われる太陽電池パネルやソーラーセイル(太陽帆)に利用された「ミウラ折り」があります。東京大学名誉教授で航空宇宙工学者の三浦公亮氏が考案した、全体が2次元的に展開・収縮する折り方です。 ミウラ折りの展開図は、平行四辺形を積み重ねた形になります。まず、等間隔に蛇じゃ腹ばら折り(山谷を交互に折り)、次に斜めに等間隔で蛇腹折りしてから、広げて元の状態に戻します。折り目は平行線とジグザグがあり、ジグザグを先に蛇腹折りするとミウラ折りになります。便利な構造であるものの、工程が複雑なため、製作を安価に機械化できれば、もっと活用が広がると期待されています。らせん構造を持つ筒には、同一方向の「順らせん」(写真上)と、1段ごとに逆方向になる「反転らせん」(写真下)がありますテントウムシは、体の一部分を上手に使って翅に折り目をつけて畳み込みます33人とシステム No.100 July 2021

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