人とシステム No.100
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 書家として高名な秋葉生白先生は、絵画や彫刻、焼き物、着物にも造詣が深く、自由な創作活動を続けられています。また、本誌に限らず数多くの雑誌や映画などの題字も手掛けられてきました。今回、秋葉先生が東京都荒川区に構えるアトリエを訪れ、作品に触れつつお話を伺ってきました。 ご自身を空間芸術家と称する秋葉先生は、創作をする上で、多くの芸術や人との縁を大切にされています。 「小学2年生の頃から書道を始めて、60年近くが経ちます。優れた芸術を生み出すには、書のみを追求するのではなく、さまざまな良いものに触れ、良い人と接することで人格を養い、教養を身に付けることが必要だと思っています。陶芸家、画家、禅僧、多くの方と出会って学び、同時に書の地道な鍛錬をあきらめず繰り返し行ってきました。すると、直感的な発想のもと、積み重ねてきた教養が体から出て筆に伝わり、個性となります。そのように生まれた作品には品格が備わり、見る方に面白みや癒しを与えます」と秋葉先生は話します。 秋葉先生ご自身も、多くの出会いの中で磨かれてきたと言います。それらを糧に、作品を作り上げてきました。「自らを高めるには、長い年月をかけて築いた自分の中のものを一度壊して、そこに新たな自分を作り上げなければなりません。芸術を熟成させるには多くの時間と経験が必要であり、書と出会って60年近く経ってようやく分かってきたところです」と話します。 題字も秋葉先生の芸術性を表しています。「題字というのは、筆耕のようにきれいに見やすく書くのではなく、その内容に応じた雰囲気を表現する、創造性に富んだ作品の一つと言えます」。 このたびは、題字制作、取材を快くお引き受けいただきましたこと、心から御礼​申し上げます。芸術を熟成させるには多くの時間と経験が必要です。PROFILE高校時代より公募展に出品、日展・毎日展・東方展・東京展などで、毎日賞をはじめ受賞歴多数。現在、古美術・現代美術などをベースに「祈り」のことばを木に彫り上げる「刻書」など、紙だけにとらわれない自由な創作活動を行い、高い評価を得ている。現在無所属。「祈りの書と美の心」などの講演会も開催している。秋葉 生白 様Seihaku Akiba書家100TH MEMORIAL35人とシステム No.100 July 2021

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