人とシステム No.100
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マックス・プランク研究所にて国内外をフィールドに深めてきた脳科学研究東 今回は「人とシステム」100号発刊という節目を迎えて、最先端のさらに先をいく未来についてお話をしたいと思い、脳科学研究者の東京大学 准教授 渡邉正峰様をお招きしました。AIへの応用など、渡邉先生が取り組まれている脳科学研究の社会実装の展望もお聞きしたいと思います。まず、渡邉先生が将来的に目指されているのは、人間の意識を機械に移植する不老不死の実現と伺っています。著書の『脳の意識 機械の意識』を拝読していて私が思い浮かべたのが、1970年代初めに放映されていたアニメ「新造人間キャシャーン」です。人の体を離れて機械と融合した新造人間というのが主人公なのですが、その母親も白鳥のロボットに身を移していて、目から投影した人間の姿で主人公と会話をする場面が頭をよぎりました。渡邉 幼少期をロサンゼルスで過ごしたこともあり観たことはないのですが、先見の明がある話ですね。私のイメージとしておそらく一番近いのは、グレッグ・イーガンの『順列都市』というSF小説です(※1)。この作品では実験的に生体をコンピューターにアップロードするということが大きな要素になっています。東 まさに私たちがフィクションの世界で接してきたテーマに挑まれていらっしゃるのですね。かつてロサンゼルスにいらしたとのことですが、海外生活は長かったのですか。渡邉 幼稚園の年長から小学5年生くらいにかけて5年間在米しました。帰国後は日本で過ごし、東京大学で脳科学を専攻して博士課程まで修めました。その後は大学の教員となり、2004年に1年間、在外研究員制度を使ってカリフォルニア工科大学に在籍し、2008年から10年間は、世界的に有名な脳科学の研究機関であるドイツのマックス・プランク研究所で客員研究員として活動しました。研究所のあるテュービンゲンは、AmazonのAI研究センターができるなど、最近ではAIの町としても注目されています。日本では理論脳科学から入り、心理実験やfMRI(※2)などの研究も続けていましたが、やはり海外に渡って実験を含む最新の研究ができたことは大きいですね。マックス・プランク研究所では、脳科学研究の第一人者であるニコス・ロゴセシス氏の下で研究生活を送っていました。東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 准教授株式会社MinD in a Device 技術顧問1970年生。1993年東京大学工学部卒業、1998年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。同研究科博士研究員、助手の後、2002年助教授に就く。米カリフォルニア工科大学留学、独マックス・プランク研究所客員研究員を経て、現在は東京大学大学院工学系研究科准教授および株式会社MinD in a Device 技術顧問を務める。近著に『脳の意識 機械の意識』(中公新書、2017年)がある。渡邉 正峰 様東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 准教授Masataka Watanabeないものは作ってしまえの精神でこれまでの脳科学研究の成果の社会実装を目指しています2人とシステム No.100 July 2021SPECIAL REPORT

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