FRESRE双腕折り紙ロボットのコンセプト折り紙を折るロボットH20人とシステム No.101 January 2022 折り紙工学の研究者の中には、折り目パターンを再現した展開図からより実物に近いものを作りたいという要望がありました。それに応えたのが、物理学者のロバート・ラング氏が1989年に発表した初の折り紙設計システム「ツリー・メーカー」です。この登場は、研究者に大きなインパクトを与えました。 その後、2007年に折り紙工学研究者の舘知宏氏が、複雑な多面体形状の折り紙を設計するコンピューターソフト、「オリガマイザー」をインターネット上に公開します。2017年には、数学者のエリック・ドメイン氏の協力も得て、新たなアルゴリズムを取り入れることで、どんな多面体でも展開図を作成することができるソフトを完成させました。その他にも、展開図の折り線の通りに実際に折れるかを判定するプログラムや、1つの完成形に対して考えられる展開図を何通りも見つけて、さらにその中のどれが折れるかを判定できるプログラムなど、広範囲の研究開発が進められています。 折り紙設計の研究開発が実現するのは「実物通りのものを折り紙でつくること」であり、この考えに応える最良な方法がリバースエンジニアリングです。各種スキャナーなどを利用して得られた3次元データをSTLデータに落とし込み、積層型の3次元プリンターで造形する手法は多く見られます。一方で、この流れを折り紙工学で実現しようとする研究が、萩原一郎氏をはじめ多くの研究者の手で進められています。1枚の紙や金属板に切断や穴開け加工をしながら折ることで完成品を作る、折り紙式3次元プリンターがその一つです。積層型3次元プリンターは一体成形のため、装置によって造形物の大きさが決まるなどの制限があります。一方、大きな紙を機械で折って造形物を作る折り紙式プリンターが実用化できれば、もっと大きな見本も比較的容易に実現できるようになります。さらに、紙だけでなく金属素材にも適応する折り紙式プリンター、人間の手のように折り畳んだり、のり付けを行ったりする折り紙ロボットなどの研究も続けられています。カメラ3カメラ2カメラ1把持位置、荷重方向、荷重速度などハンド位置の指定コントロールコンピュータデザインデータ操作者● ● ● ● ●人が両手で紙を折るように、ロボットが折れ線に沿って材料を折る新しい成形手法です。柔軟性が高く、さまざまな形状に対応することができます。リバースエンジニアリングにもつながる折り紙研究折り紙の科学➁折り紙の研究から見えてくる実用化への道
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