6近づくのが狙いで、そういう動きがどんどん出てきていると思います。小出 人手が少ない中での育成には、長い時間をかけて経験を積み達成を目指すのではなく、これまでの3分の1や半分の時間である段階までたどり着けることが求められてきます。しかし、例えば異常検知にしても、なぜその異常が発生したのか人が分析して考察する必要性は変わりません。また、数値化や標準化によって表現されたことの意味合いを考え、共通認識することが大切です。そうしたことを、デジタル技術を取り入れ、次世代に引き継ぐのが私たちの責務かもしれませんね。東 個社だけでなく業界全体で標準化を行うには、まずできるところから進めていき、標準化できない部分はその原因を追究していくことが重要だと感じます。IT領域でも、システム機能開発の要件定義や設計、実装、テストといったプロセスを短期間で反復して作り上げていくアジャイル開発という手法が主流になってきていますが、その考えが応用できそうです。小出 標準化できそうなことは何かを探り、まずは標準に落とし込んでみて、現時点では人が行う必要があるか否かの検討も含め、一つひとつ進めていくのが良いと思います。また、標準化そのものを目的と捉えるのではなく、その先にある競争力強化のためにも、自社の強みを分析し、理解しておく必要があります。いう印象を持たれることが少なくありませんが、その3軸加工でできていたこと自体がこれまでの現場の技能に依るもので、人や部品が変わった時に3軸加工で同じようにできなくなる可能性があります。また、5軸加工を使った新しい型設計をすることで、部品点数を減らす工夫が必要です。今まで3つ4つ5つと3軸加工した部品を組み合わせていたものが、5軸加工ではそのまま一つの部品として加工でき美観や付加価値が上がってきます。これが一般的になれば、普及も進むと思います。東 3軸加工をただ単に5軸加工に置き換えることは現実的ではありません。しかし、例えば自動車業界ではEVなど大きな変化の中で新しい部品が出てくると見られます。すると、3軸加工では難しく、5軸加工が必要になり、また、5軸加工により提案できる製品の質も向上できると思います。白瀬 新しい部品に手を広げようと考えた時、5軸加工が扱えるかどうかで可能性が変わってきますよね。Z軸が深くなる加工では、5軸加工の方が高効率、高精度に加工ができます。小出 小出製作所では、2台の5軸加工機と5軸専用ソフトウエアを導入して、加工の自動化を図っています。ただ、今は専任担当者のノウハウに依るところも多いため、別の人に引き継いだ時に品質を同程度に保つことが難しく、また、段取りのプロセスを作る人員確保の課題もあります。白瀬 設計者の多くが3軸加工の経験しかなく、5軸加工の知識がないのも一つの問題だと思います。5軸加工の導入に踏み切り、使いこなしていけるだけの環境ができあがっていないというのが現状です。ソフトウエア側を使いやすくする仕組みも必要ですね。東 私たちもそう感じていて、ものづくりに関わる方々が5軸加工に関する疑問や課題を持ち寄って学べる機会を作っていきたいと思っています。2021年7月、沖縄に開設した「Mold Future Space - OKINAWA」では5軸加工機を導入し、5軸加工専用ソフトウエアと合わせて体験いただいたり、加工ノウハウを習得したりできる場を設けています。白瀬 5軸加工の良さを知り、今後の加工方法をどう変えるか考えていく転換期にあると思うので、5軸加工を学習でき、また、購入前に試せるのは利点です。高額な機械とソフトウエアを維持して、体験できる場を提供することは大学でも難しいため、大いに役立てられると思います。東 多くの方にお役立ていただくことで、私たちが提供できるサービスも拡充できます。金型業界全体で加工技術の進展に取り組めるような環境づくりに加担していきたいです。5軸加工による付加価値の創造東 製造工程を標準化することで生まれた余力を自社の強化に費やすというお話がありましたが、その取り組みの一つに、新しい製造技術の導入が考えられると思います。小出 印象の強いものに3Dプリンターがあります。40年ほど前にその元となる装置が日本発で登場し、その後2013年のオバマ米大統領(当時)の演説で注目を浴びた時も、デザインには有効でも物を作るにはまだ難しいというのが私自身の認識でした。しかし、今や金型の部材として使うに値する物が金属3Dプリンターで作れる、削らなくても物ができる、という世界が現れました。今考えている金型製造も変わっていくかもしれません。こうした技術革新は見過ごしてはいけないし、ものづくりのいろいろな可能性を考えていく必要がありますね。白瀬 最近の動向でいくと5軸加工機ですね。これまで3軸加工でできていたことを5軸加工にする必要があるのかと
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