人とシステム No.101
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7SPECIAL REPORTります。1社で取り組むのは負担も多く整備も高額になってきますが、例えば日本金型工業会全体に対して、セキュリティに関する体系的な知識やノウハウ、セキュアな環境を提供し、会員企業各社からはそのサービスを使った内容に応じて後から費用を負担いただくような仕組みができるのではないかと思います。小出 使った分だけ支払いをする仕組みは理解を得やすいと思います。クラウドサービスで利用者のデータを有効活用するとありましたが、そのようにデータを守ることと活用すること、それを私たちにとって価値ある形で提供してもらえることをNDESに期待したいですね。白瀬 DXの流れにあって、大学教授の立場から課題に感じるのが、学生の興味がITに向いていて、ものづくりを身近に感じたり関心を持ったりすることが少なくなってきていることです。金型業界を目指す人材を輩出するため、学生には魅力ある業界だと思ってもらいたいです。もちろん、いま業界にいる方たちの興味と意欲を引き出せるようにしていきたいです。協会でもいろいろな催しを開いていますが、例えば、先ほどのMold Future Space - OKINAWAで5軸加工を経験するイベントなど、NDESとコラボレーションするのも面白いと思いました。小出 やはり人が大切ですね。今はリモートでの交流も日常的になり、日本金型工業会でもこれまで対面では気軽にできなかったセミナーや教育の機会を増やせています。一方、育成のためには生の工場を見て刺激や知識を受けることも必要ですから、リアルとリモートを併用して継続的に人を育てていく仕組みを考えているところです。東 私たちは、日頃「ものづくり分野のお客さまの未来をITで支援します」とうたっていますが、これはお客さまを第3者の立場からサポートすることでなく、一緒に金型づくりに挑んでいくことだと改めて思います。今後も、金型業界の皆さまとのお付き合いから多くを学ぶことで私たちにできる提案を最大限に拡充し、また、皆さまのものづくりの可能性を広げていきたいです。人とシステム No.101 January 2022企業間のつながりで探る金型業界の新たな活路東 ここまでのお話から、金型業界の大きな課題である人材不足、製品の価値向上に対しての、標準化と5軸加工の期待を感じました。小出 そのために、より実際的な業界内の連携を図ることが重要です。連携によって実現できると思うことはたくさんあり、一つが複数社での高額な機械の共有です。各社が予定通りに使えるよう工程の計画や工夫は必要ですが、どこの会社でも24時間365日機械を稼働しているわけではありませんから、共有することで費用負担を抑えて性能の良い機械を使用でき、製品の価値も上げられます。これは一例で、一つの会社、一つの団体だけで勝負できる時代ではなくなってきたので、横断的に手を組めるような仕組みを築く必要があると思います。白瀬 私たちも型技術というつながりで、産学や企業間での交流をしていますが、他の領域や業種で何が起きているかを知る機会は少ないです。交流やアンテナを広げることで、これまでなじみのなかった分野からヒントを得られることもあるかもしれません。もちろんそのためには、難しいことや障壁を挙げつらうのではなく、やってみようという気持ちが大切です。小出 他に業界全体で取り組んでいきたいのが、セキュリティ対策です。金型業界にはサイバーセキュリティやネットワークに精通した人材が少なく、DXの時代を生き抜くためにも、必要な情報や知識を習得して共有し、自分たちに必要な対策を取らなくてはいけません。一方でそこに多額の費用を投資するのも難しいです。白瀬 セキュリティで重視することは何か、今後5Gで何が変わるのか、など皆さん興味があるものの、詳しい人が社内にいなくて、会社の取り組みに落とし込めていないのが課題ですよね。東 セキュリティ対策で私たちもお手伝いできることがあ

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