人とシステム No.102
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H宙宇学①開発でも活躍する折り紙工セイルは、ポリイミド樹脂を使っFRESRE16 “折り”は建築産業へも応用され、形態操作、形態生成、空間構成の手法として、外観や内部空間の視覚的演出のために使われています。シンプルな形状のものでは、薄くて平らな金属板をびょうぶ風に折り曲げることで、強度を持たせる波板があります。工場や倉庫の屋根材として見かけることも多いのではないでしょうか。 折り畳みを生かしたものに、大型ドームの建設工法のパンタドーム構法があります。代々木第一体育館を手掛けた構造設計家である川口衞氏が考案した特許工法で、世界初の採用例は神戸ポートアイランドホール(1984年竣工)です。ドームの頂上部分の骨組みを地上で建築してから、一度、折り畳みます。それをジャッキなどで押し上げることで元の形に戻して、完成させる工法です。地上で作業が行われるため安全で、工期の短縮も可能です。 他に有名なものとして、ジオデシック・ドームがあります。球に近い多面体(正十二面体、正二十面体、半正多面体の切頂二十面体)を正三角形に近い三角形で細分割したものです。かつて、富士山の頂上に据えられていた富士山レーダーのドームも、ジオデシック・ドームでした。 さらに、地上で折り畳んだものを、宇宙空間で大きく広げる技術にも応用されています。東京大学名誉教授で航空宇宙工学者の三浦公亮氏が考案したミウラ折りは、全体が二次元的に展開・収縮する折り方です。2010年に金星探査機の「あかつき」とともに打ち上がられた小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス(IKAROS)」でも、ミウラ折りが使われました。イカロスは風の代わりに太陽光の力を帆に受けて進む正方形のソーラーセイル(太陽帆)を持ち、その一辺は14メートルにも及びます。そのため打ち上げ時にはコンパクトに収縮されている必要があります。そこで、ミウラ折りを応用して十字型に折り、それを直径1.6メートル、高さ80センチの円筒形の本体に巻き付けることで、コンパクトに宇宙に運ぶことができました。パンタドーム構法(写真提供:ピクスタ)ジオデシック・ドーム(写真提供:ピクスタ)展開図②折り畳むと 十字ができる③ソーラーセイルの基本形● ● ● ● ●イカロスのソーラーた、頭髪の10分の1以下の7.5マイクロメートルという非常に薄い素材でできています。2段階に分けて折り畳まれており、まず対角線の軸方向に十字形に折ったのち、円筒形の本体に巻き付けられました。下図はその第一段階の基本形です。地上でも宇宙でも活躍する折り紙工学折り紙の科学③自由な発想の研究から生み出される折り紙の可能性

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