人とシステム No.102
6/20

4い人たちが人生設計を託せる将来へつながると思います。中村 そうですね。これから新たに立地される企業も含めて、この地に企業が根付いて、新しいことをどんどん進められる環境ができていけば何よりだと考えています。私たちもそうしたことを見据えた施策を計画していきます。出て、実際に行政サービスや施設を利用している市民の方々と企業が考えていることや、これからしようとしていることなど、直接会話をして気づきを得るように促しています。例えば中城湾港新港地区に進出された企業の社長と膝を交えてみると、まずは地区の環境を美化してほしいという声が聞かれました。そこで市職員たちと一緒に道路の草刈りを行いました。これは一端で、こうした関係づくりから始め、今後の仕事、そして行政に生かしていくことが大事だと思っています。金城 私のところにも、うるま市職員の方々が熱心に話を聞きにいらっしゃいます。現場をご覧いただきながら話せるので、具体的な相談もしやすく、助かっています。産業振興の基礎と行政の根幹は「人」東 若い人たちが活躍する場を生み出すというお話がありましたが、それは育成を重んじることにもつながると思います。マニファクチャリングラボでは、所属しているエンジニアはソフトウエア開発に取り組むだけでなく、mdn様に教えていただきながら実際に工作機械の前に立って最新の加工技術を学んでいます。そして、その現実・現物の技術を仮想技術であるソフトウエアへと適応させるための過程で、悩みながら大きく成長していると思っています。mdn様はうるま市でのものづくり人材の育成に尽力されていると伺っていますが、どのような教育を展開されているのですか。金城 はい。これまで長期・短期の研修で700名ほどの育成に携わってきました。最初は、沖縄県金型技術研究センターと連携して素形材産業を支える金型技術者の育成を中心に活動を進め、その範囲を徐々にものづくり全般に広げてきました。また、人材育成の新しいスタイルとして、すでに企業に勤めている方が今の自分に足りない知識や技術を認識して身につけるためのリスキリング教育にも注力しています。その教育プログラムの中で企業や業種をまたぐ結びつきもでき、県内での異業種交流が活発になってきています。先日も建設業界の方とデータ活用について話をしていると、それぞれの業務でどのようなデータの使い方をしているのか、もっとデジタル技術を効果的に活用できる方法はないのかなど、お互いに新しい知識やアイデアが生まれるような場面がありました。こうした学びもまた、ものづくり人材のポテンシャルを引き上げていると思います。中村 うるま市では2009年から金型人材育成事業を行っており、金城様にも携わっていただいています。市長に就任して改めて思うのが、やはり基本となるのは人なんです。若い人に対しては、社会に通用する人材になるために、今後どのように働いてもらうか、どう教育したらよいかを考えることが重要です。そこで技術を学ぶことは、そのことを極めていくだけではなく、また別の技術への対応力も発揮でき、人のいろいろな可能性を広げられると期待しています。また行政の根幹をなすのも人ですから、うるま市職員にもどんどん外に5軸加工技術を確立させ全国へ展開東 さて、産業振興という点では、マニファクチャリングラボでの活動も10年となり、mdn様と私たちの取り組みもいよいよ具現化してきました。これまでは、日本の5軸加工技術をいかに向上させ、使いこなせるようにしていくかということを目標に、CAMの研究開発を主軸に活動してきました。そして昨年、生産性向上に向けた工場全体のマネジメントを目指し、ものづくりの自動化を推進する新拠点として、ガントリー式の5軸加工機を導入したMFS-OKINAWAをマニファクチャリングラボと同じ建屋内にオープンしました。 MFS-OKINAWAにおけるプロジェクトには、引き続きmdn様、そして台湾の工作機械メーカーである東台精機様にも参画いただいています。中村 mdn様とNDESのタッグには心強く思っていますが、なぜ今回さらに台湾のメーカーが加わったのでしょうか。金城 実は台湾はものづくりの盛んな地で、特に工作機械はアメリカやヨーロッパなどにも出荷しています。しかし日本国内では、国産機に対して台湾製の5軸加工機の評価はあまり進んでいません。今回MFS-OKINAWA に導入された機械をNDESと一緒にじっくりと見てきたところ、高い加工精度を得られると実感していて、これから国内でも評価されていくのではないかと思っています。剛性が高く、重量の大きな金型の加工にも適しています。東 いま大型の金型加工を試していますが、深さのある湾曲部が正確に削られていて、加工速度も期待できます。前号の『人とシステム』(101号:2022年1月15日発行)で開催した日本金型工業会と型技術協会の各会長との座談会でも、次に進めないといけない技術は5軸だという話が出てきました。5軸加工を使いこなすことは、今後のものづくりの自動化や

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る