2人とシステム No.103 July 2022Katsuyuki IshiiSPECIAL REPORT千葉県にある本社の工場では、競技用の車いすの製造を手掛けています。1台1台、図面を見ながら細かい調整を重ねて組み立てていきます。株式会社オーエックスエンジニアリング代表取締役社長石井 勝之 様株式会社オーエックスエンジニアリング【創立】 1988年10月【社員数】 38人【本社所在地】 千葉県千葉市若葉区中田町2186-1【事業内容】 車いすの開発・販売事業開始の沿革1985年から創業者である石井重行様の個人的プロジェクトとして車いすを制作し、その改良を継続。1990年9月、ドイツで開催されたIFMAショー(自動二輪車・自転車展)視察時、現地記者に自作の車いすを称賛され、事業化を決意。1992年3月OEM供給を開始。1993年4月より本格的に車いす市場に参入した。オートバイ販売から車いす開発販売への転換東 このたびは対談をご快諾いただきありがとうございます。OX様の車いすは、パラスポーツシーンで多くのアスリートの方が使用して好成績をあげられており、日常用車いすでも、使い勝手だけでなく素材やデザイン性も追求した商品を開発販売されていると伺っています。これは、車いす作りに対する技術力や新しい材料への挑戦、お客さまに対してのサポート体制などがあって、初めて成しえることだと思います。本日は、これまでにない車いすを開発し続けているOX様が、どのように車いすを開発し、お客さまに喜ばれているのかお話しを伺いたいと思います。石井 本日はよろしくお願いします。当社は多種類の車いすを開発販売していますが、始まりは自身が乗りたいと思う車いすを作りたいという創業者の思いにあります。OXの創業者で先代社長の私の父は、オートバイ好きが高じてオートバイメーカーに就きました。その後、もっとお客さまと触れあってオートバイの楽しさを発信したいと独立し、1976年、東京都江戸川区にOXの前身となるスポーツショップイシイというオートバイ販売店をオープンしました。当時、数多くのオートバイ販売店がある中で、父は自社の強みを押し出すためにオートバイレース活動を始めました。自社のオリジナルパーツを装着したオートバイがレースで勝利し注目を集めることで、オートバイもオリジナルパーツも売れるという商流を築いたのです。しかし1984年、父は事故によって脊椎を損傷し、車いすを必要とする障害を負いました。そのとき父はオーダーメイドを含めさまざまな車いすを試したものの、オートバイを愛しカッコよさを追求していた自身が乗って町へ繰り出していきたいと思う車いすには出会えませんでした。そこで、オートバイのオリジナルパーツを作っていたものづくりの技術や設備を元手に車いすの開発を始め、現在のOXに至ります。東 先代の社長が車いす開発をスタートされたのですね。車いすとオートバイでは市場や製造ノウハウに異なることも多かったのではないかと思いますが、どのように軌道に乗せられたのでしょうか。石井 当社は車いす市場の中では10年から20年ほど後発で参入したことから、何か強みが必要だと考え、ほかのメーカ未来を開発するというビジョンのもと車いすによる新たな体験を提案します
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