人とシステム No.103
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Kazuhisa HigashiSPECIAL REPORT3ーがあまり力を入れていなかったパラスポーツの競技用車いすに注目しました。パラスポーツで使われる車いすは、たくさんの時間をかけて選手とのヒアリングやフィッティングを重ね、ミリ単位の要求に応えていく必要があります。その上、競技人口が少ないこともあってコストがあまり見合わず、手がけるメーカーが少ない状況でした。それに対して当社では、障害の度合いによってクラスが分かれるパラスポーツは、ある一定の使用条件のもと選手の力と車いすの力とが浮き彫りになるため、具体的な開発目標がたてられ、製品の進化が非常にしやすいと考えました。そして、そこで得られた知見や技術を日常用車いすの開発にフィードバックを図っています。現在では売り上げの9割を日常用車いすが占めており、その収益を競技用車いすに投資し、素材や構造をはじめとする開発技術を日常用車いすに還元するビジネスモデルを構築しています。人とシステム No.103 July 2022NTTデータエンジニアリングシステムズ代表取締役社長東 和久勝つというお客さまの課題を解決する技術力と提案力東 パラスポーツの競技用車いすとなると、選手1人ひとりの細かい要求を車いすに落とし込んでいくことになるため、とても難しいことだと感じます。石井 そうですね。競技用車いすはフルオーダー製で、プロかアマチュアかに関わらず工数は同じくらい多くかかります。勝つことが選手のビジネスであり価値になるので、私たちもどうしたら勝てるか、どうしたらメダルの色をもう一段輝かせられるか熱い思いで向き合います。当社では競技ごとに専門の担当者を置き、選手との信頼関係を通してプレイスタイルやニーズの理解に努めています。そして、これまでの技術や知見を実装したイメージを図面に起こして、製品を提案していきます。例えば同じプロであっても、トップの選手は車いすに大きな変化を望まない傾向があり、一方トップに追いつけ追い越せと苦心している選手は、車いすに今までにないような変更を求めることがあります。また、アマチュア選手の場合には、そこまでビジョンが明確ではないことが多いため、車いすに何を求めるか探り当てるのがとても難しいです。困難なご依頼も多いですが、私たちはどんな悩みや要望にも手を差し伸べられる技術やノウハウを持っていなければなりません。そこには、お客様が使いたいと思える車いすでなくてはならないという創業時からの思いが基本にあります。東 お客さまへの課題解決力と、求められている価値を生み出すための提案力ですね。私たちも個々のお客さまと一体となってどのようにすればお客さまのビジネスを成功に導くことができるかという思いでソリューションを提案していますが、そこでまずお客さまにとって使い勝手の良いシステムでなければいけないと考えています。石井 お客さまと一対一の関係で作り上げていくことも含め、私たちのものづくりと通ずるところがありますね。また、いくらお一人ずつの使いやすさを追求して作っても、一度で完成することはありません。実際に使用することで気づくこともあり、当社でもまず作っては試していくことを繰り返しています。東 システム開発のアジャイルという手法にも似た工程ですね。とくに変化の速い現在、私たちも開発の速度をさらに上げて、速やかにお客さまのビジネス環境に対応することはもちろん、常に最新のIT技術を用いた、システムを提案すべきだと考えています。そこで私たちも、開発スタイルを変えていこうとしています。従来のシステム開発では、2、3カ月かお客さまが本当に達成したい目標のために挑戦するかけがえのない存在でありたい

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