人とシステム No.104
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おいしく食べて腸内環境を改善しましょう常に保つために必要な食物繊正維腸内環境をビフィズス菌とオリゴ糖は健康維持の名コンビ 代表的なプロバイオティクスに、ビフィズス菌があります。ビフィズス菌はさまざまな菌種が存在し、腸内環境の改善などの健康面に加えて、ストレス緩和や認知機能維持にも作用するとの研究報告があります。 プレバイオティクスで有名なのはオリゴ糖です。多くの種類がありますが、オリゴ糖の1つである乳糖は消化・吸収されてエネルギー源、つまり栄養になります。一方、難消化性のオリゴ糖は、大腸で主にビフィズス菌の餌になります。特に腸内フローラのビフィズス菌の栄養となり、増殖させる作用があります。 天然のオリゴ糖として、最も身近なものが「母乳」です。乳糖をはじめ100種類を超える極めて多くのオリゴ糖が含まれています。そのため、乳児のビフィズス菌種は、母乳に含まれるオリゴ糖を代謝する能力に優れていると考えられています。育児用粉ミルクには、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖が添加されているものもあります。脳の健康にも重要な腸と腸内細菌 プロバイオティクスは、下痢症や慢性炎症性腸疾患、アレルギーなどの軽減をはじめとする、さまざまな疾患の予防や病状の改善作用が期待されています。主な作用メカニズムは、各疾患における腸内フローラ、および腸内環境の異常を改善することによる間接的な作用と考えられます。 さらに、精神的な変化にも腸は大きく関係しています。不安や緊張、環境の変化などで、腹痛や便秘になることがあります。それは、脳が腸に影響を与えているためです。また、腸内環境が脳に影響し、心にまで変化を及ぼすことも分かってきました。これを脳腸相関と呼びます。さらに、腸内細菌も含めた、脳-腸-腸内細菌相関という考え方へと進んできています。ストレスをはじめ、現代人のメンタルヘルスにも腸内環境の改善は不可欠と言えます。現代でも実際に、乳酸菌シロタ株をはじめ、ストレスをやわらげる機能性表示食品が販売され人気を博しています。次号は、病気にいたる以前の軽い症状がある“未病”や“予防医学”に対する腸内環境改善の有効性、微生物移植などの先端研究などをご紹介します。17イラスト/カワチ・レン日本食には、質・量ともに実に豊富な食物繊維が含まれています。1日の目標摂取量は、成人男性で20~21g以上、女性で17~18g以上とされています。食物繊維の摂取不足と生活習慣病や死亡率との関連から、理想的な目標量は成人では24g/日以上と言われています。さまざまな食材からバランスよく食物繊維を摂取することが大切です。意識して食物繊維摂取量を増やすべきと考えられます。健康な人生を送るためには、腸内環境を改善することと正しく維持していくことが大切だと、多くの人に認知されてきました。そこで今号では、善玉菌を増やすプロバイオティクスに加えて、善玉菌を助けるプレバイオティクス、両者の組み合わせであるシンバイオティクスについてご紹介します。※おもしろサイエンス「腸内フローラの科学」(日刊工業新聞社刊2020年6月発行)著者:東京農業大学 教授 野本康二 様体にも脳にも影響を与える腸の健康

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