人とシステム No.104
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4再現させることは非現実的です。自動運転の開発では、コンピュータゲームのような環境で車を走行させ、シナリオに沿って繰り返し検証を実施できるバーチャルシミュレーションでの走行実験が重要になってきます。東 自動車の開発手法が、実車からシミュレーションに変化していく中で、今後、自動運転の開発に向けて取り組もうとされていることはありますか。中井 先ほど徳之島に研究拠点を開設すると話しましたが、そこで私たち自身が自動運転車両の研究開発に取り組むこととしました。徳之島伊仙町では、廃校となった学校をデジタルツインの管制センターにして、公道でコネクティッド自動運転車両を走行させる実験を行います。2021年の後半から準備を始めており、2025年ぐらいまでに研究開発を完了させる予定です。離島で実験を行うのは、公共交通手段も限られている中、運転できない高齢者が多くなってきているという社会問題を解決する交通難民向けモビリティを考えたいからです。ここで開発した自動運転システムは、極めてニッチな運行設計領域となるため、今の自動車産業視点では需要はないかもしれません。しかし、2030年頃には、日本の社会でも一般道を含めドライバーがハンドルを持たなくても運転ができる世界が浸透し始めると予測されています。そうなると自動運転技術はコモデティ化され安価にもなり、今の市場にはない新たな運行設計領域に対応できるモビリティのニーズが掘り起こされ、それに対応していく事業者が現れてくると考えています。例えば、離島や山間部の高齢者交通難民向け自動クルマ椅子のようなマイクロモビリティ産業が産まれてくるかもしれません。そういうところに、ARCが開発する自動運転システム開発運用ツールを活用していただき、さまざまな各運行設計領域を最適対応することで、今の技術では成立しない市場をターゲットにしていけると考えています。東 徳之島ではすでに自動運転車両の研究開発をスタートされているのですね。具体的にはどのような実験をされているのでしょうか。中井 徳之島では、ハイブリッドAIを研究しており、AIと人間が作ったプログラムを競わせて安全性を高めようとしています。例えば、自動クルマ椅子の走行ルート上に突然動いている障害物が現れた場面が発生したとします。そこでAIは「行け」と判断し、人間が作ったプログラムは「待て」と違う判断をするかもしれない。この判断のいずれが正しいのかについては、徳之島の公道で運行設計領域に特化した実験を繰り返し行うことで、そこを知り尽くしていくAIの方の判断が正しくなっていくかもしれません。状況データを徐々にコネクティッドでクラウド側へ蓄積させていき、AIが学習していくことで、将棋や囲碁のように、ある局面では人間が勝るが、ある局面ではAIの方が勝っていくかもしれません。このようなフィジビリティ検証を、徳之島のデジタルツイン環境で行っていきます。東 今後、自動運転の技術は急速に発展していきますが、ARC様が目指している自動運転とは、どのようなものなのでしょうか。中井 まずは初歩的な領域対応からになりますが、個別の運行設計領域に着目し、自動運転システムを段階的ですが運用とともに迅速に成長させていくプラットフォームを提供していきたいと思います。例えば、2021年3月に大手自動車会社から高速道路上での特定の運転シーン限定で、世ZIPC GARDEN Automationの特長の一つ。シナリオベース開発における数理モデル分析の活用。

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