日本のものづくりの原点として最重要とされてきた木型作りですが、一時は海外へのシフトで衰退が進んだといいます。彌榮社長は「私が入社して以降、10年後ぐらいまで次の若手が入りませんでした。北九州の木型メーカーで私と同じ年代は2人しかいません。木型だけでなく鋳物メーカーも同じような状況でした。それではまずいということで、当社では若手の育成に取り組んだのですが、他社は後継者がいなくて続かなくなるところも多くありました」と振り返ります。 ところが、最近になって国内生産に戻りつつあるといいます。新型コロナウイルスの感染拡大以降、日本から技術指導に行けないこともあって粗悪な製品が送られてきたり、円安で他国と変わらない価格になってきたりで、国内への設備投資が増えてきています。その傾向はこれからも続きそうで「国内の方が精度は高いし早いということで、多くのメーカーさんが国内に戻ってきています。しかし、それを受けられる木型屋さんが不足しているため、技術伝承の重要性を改めて感じています。自分の入社後に新人が入らない空白期間はありましたが、今の若手職人は10代や20代で、熟練職人は70歳以上という年の差が、かえって良かったのかもしれません。若手は熟練者を尊敬して接していますし、熟練者も昔のような厳しさはなくなっています」と彌榮社長はメリットになった部分もあると話します。 CAD/CAMによるデジタル化に限らず、いろいろなチャレンジを続けたいと語る彌榮社長は、「日本のものづくりを支える木型職人として、その技術をさらに深めて別の分野でも活用していきたいと考えています。木型製作に注力している若手職人の将来のためにも、その先の技術伝承につなげていきたいと思います」と今後について話します。 最後にNDESに対して次のようなコメントを彌榮社長よりいただきました。「Space-Eは、なくてはならない存在になりました。私たちの声を反映して常に進化してくれるので安心して使えます。また、新製品Space-E/CAM 2022の機能も期待していて、これから使っていく予定です。今後、Space-Eの増設や5軸加工の検討などを考えていますので、NDESにはこれからもサポートをお願いします」 製鉄所の高炉は、一度火を消すと再稼働には莫大な時間と手間がかかるといいます。技術伝承も同じで、途絶えると復興は難しいものがあります。職人のすばらしさを信じて育成を続け、デジタル化にも成功した前向きな姿勢に対して、私たちNDESは今後ともお役に立ちますよう尽力いたします。9熟練職人が使ってきた大切な道具の数々。これらを作れる職人も激減しているようです。いると彌榮社長は言います。「木型が50%、発泡スチロール型が50%になっています。同じ型からある程度の数の製品を取るには木型が向いていますが、大物産業機械の鋳物型などの小ロット生産には発泡スチロール型が向いています。木型は保管場所の確保が必要ですが、発泡スチロール型であれば利用後に廃棄して次に利用するときはまた作成すればいいのです。さらに、発泡スチロール型は、加工や輸送が容易な上、保存しているデータで同じものを再現できます。それもデジタル化の恩恵だと思います」 Space-Eとマシニングセンターによって、職人の業務改善にもつながったと彌榮社長は話します。「昔は徹夜仕事などもありましたが、今は休みも取れるし残業も減って、職人の負荷軽減につながっています。CAD/CAMの利点を生かして職人の手作業と融合して効率よく木型を作りたいと思っています。例えば、手作業では非常に時間がかかる球体作りは、マシニングセンターで削った後、それを職人が指先で微妙な違いを見つけて手作業で修正するという手順にすると、精度の高い木型が短時間で製作できます」この他、簡単だが時間がかかる作業を機械化することで、作業の大幅な効率化にもつながっているとのことです。日本のものづくりには職人技とデジタル技術の両輪が不可欠
元のページ ../index.html#11