FRESRE生体防御論と乳酸菌H人のあらゆる健康に重要な腸内環境の整備 腸の環境と腸内細菌は、脳の健康と強い関連性があります。具体的に例を挙げると、自閉症や総合失調症、注意欠損・多動性障害、大うつ病、拒食症、パーキンソン病、アルツハイマー病など多くの疾患において、腸内フローラの異常が報告されています。 腸内フローラのバランスが崩れると、脳だけでなく体にも悪影響を及ぼします。マウスを使った実験では、腸内フローラが肥満の誘導に大きな役割を果たしていたという結果が出ています。その他に、生活習慣病の代表ともいえる糖尿病、アレルギーや自己免疫疾患の誘導や進行にも関与します。もちろん、腸の病気にも腸内環境は大きな影響があります。 そのため、腸内フローラを整えることでさまざまな病気の改善につながり、病気の予防にもなるのです。特に“未病”の予防や改善には効果が大きいとされています。未病を放置せず、予防や状態改善が重要 近年、「未病」の考え方が一般的にも浸透してきました。未病とは、「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」とされています(日本未病学会ホームページより http://j-mibyou.or.jp/)。例えば、軽症高血圧や高脂血症など普段は自覚症状がないため生活にほとんど支障はないものの、健康診断などの検査結果は異常値がみられるなど、いわゆるグレーゾーン、病気予備軍と捉えられます。 プロバイオティクスやプレバイオティクスは、医薬品というよりは、食品やサプリメントとして摂取されることがほとんどです。健康な人でも、ストレスなどで腸内フローラの恒常性が乱れることがあります。その場合でも、継続的にプロバイオティクスを摂取することで、腸内フローラの乱れを補完するような働きをする証拠が得られています。したがってその効果は、治療よりもむしろ本来的に未病の予防や状態改善に役立ちます。そのため保健作用に関する研究が幅広く進められています。20腸内フローラ異常● ● ● ● ●体を守る働きである生体防御にとって、腸内フローラは外界からの異物侵入に対する初期防御をする意味で重要な役割を果たしています。まさに生体防御の最前線で働いているといえるでしょう。著者の野本先生は、乳酸菌による生体防御の方向づけを基盤とした研究を進めてきました。乳酸菌が自然免疫によって生体防御機能を促進すること、腸管という局所の環境が全身の健康に影響を与えることについて追求され、人々の健康を支えてきたのです。さまざまな疾患に関与○肥満○糖尿病○アレルギー○IBD(慢性炎症性腸疾患)○肝炎○がん○自己免疫疾患病気、未病、健康のすべてに重要な腸内環境の改善腸内フローラの科学③予防医学にも期待が集まる腸内フローラの科学
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