人とシステム No.105
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東 他にもタブレットを活用した業務の効率化を実現していると聞いています。内田 2015年に新しく業務システムを導入して、受注ごとの染め工程や機械の稼働予定などを一括で管理しています。それと同時に現場の社員全員にタブレットを配布して、業務の進捗状況をタイムリーに把握できるようにしました。東 業務システムを導入する前はどのように予定を管理されていたのですか。内田  予定表は、最初は手書きで作成しており、その後、表計算ソフトに変更しましたが、それでも1人が1日がかりで作成するような状況でした。これではいけないと思い、時間をかけて改良をしながら、現在の自動的に予定表を作成できるシステムを構築しました。最近では、予定表に自分たちで研究開発のための試作時間も確保したいという提案が職人からあり、作業の見える化を進めています。東 時代の変化に合わせることは重要ですね。若い職人さんが新技術に興味を持って学べる環境づくりが必要だと思います。一方で経験がなく、失敗や行き詰まって自分では解決ができないときのために、ノウハウの伝承も重要だと思います。内田 そうですね。何か壁に当たった時の解決は、経験を積んでいないと対処が難しいというのは染色の世界も同じです。今でしたら、ベテランが何人かいてフォローもできるので、若い人たちには今のうちにチャレンジしてもらいたいと思っています。昨今、日本のアパレル業界は海外生産品に押されて衰退が続いている状況にあります。それに対して、熱心なデザイナーらはメイドインジャパンの良さに注目して、新しいファッションを創造しようとしていますが、国内にその受け皿がなくなってきています。そこで、当社がその受け皿になるべく、デザイナーのこだわりの部分には職人として徹底的に手間をかけて作業をしています。その作業を行うためにも、DXは不可欠だったと思います。東 これは、日本のものづくり全般が同じような状況ですね。これまで現場を支えてきた技術者が高齢となり、技術伝承が難しくなっています。何かの拍子に昔の技術に立ち戻らなくてはいけなくなった時に、ノウハウが残っていないのです。私たちの役割は、技術伝承をスムーズに行えるよう協力することだと思っています。御社は、これからの取り組みをどのようにお考えですか。内田 現在、若いスタッフを中心に独自の染色技術の研究開発を行い、その成果をSNSで発信しており、フォロワーも3000人を超えてきています。そのSNSが海外のデザイナーの目に留まり、直接問い合わせが入ってくることもあります。そういうグローバルな展開にも力を入れていきたいですね。 さらに染色のプロとして、古着や在庫品を染め直すことで新たな価値を作り上げる自社ブランドの「UCHIDA DYEING WORKS」を2019年に立ち上げました。これを柱事業に成長させていければ、社員のモチベーションにもつながると考えています。すでに、いろいろなブランドとのコラボレーション企画も始まっています。 それから重視しているのは、環境問題への取り組みです。染色は大量の水を使用する業種ですので、水の使用量を大幅に減らす機器の導入や熱交換機器の導入による省エネと環境対策も進めていく必要があると考えています。東 盛りだくさんのチャレンジが控えていますね。御社と製造業である私たちのお客さまは、業種は異なりますが同じ技術者集団としてメイドインジャパンを支える企業です。DX化により作業効率の向上を図り、染色の新しい分野を開拓されていくよう、ご活躍を期待しております。私たちも今まで以上にお客さまのデジタル化推進のお役に立てるよう取り組んでいきたいと思います。 本日はありがとうございました。Kazuhisa Higashi5NTTデータエンジニアリングシステムズ代表取締役社長東 和久若い職人さんが新技術に興味を持ち学べる環境づくりが必要です

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