人とシステム No.106
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8っています」と説明します。 一方、海外で利用される金型であるがゆえに、より一層の高精密な仕上がりが求められています。金型部品を入れ替えるだけで誰でもメンテナンスできるような再現性が必要だと早瀬様は話します。「例えば、磨くということはデータとしての形状と実物の差異が生まれることになりますから、表面仕上げを必要としないきれいな加工が求められています。そこで、職人がオペレーターと一緒にSpace-Eの画面を見ながら修正することで職人のイメージに合った形状をSpace-Eに織り込むことができます。また、海外ではプレス金型の3次元設計は避けて通れない課題となっています。プレスの順送金型において3次元形状による3次元設計は、データ量の多さがネックになっていますが、取り組んでいく必要があります」 その他、5軸加工機の取り組みについて溝端様は「通常の加工であれば3軸が早いのですが、深いところを早く加工する場合の加工精度を考えると刃長を短くして加工できる5軸が有利です。特に金型が大きいので鋼材も深さのあるところを削ることになり、工具が折れやすくなるので、なるべく短く設定できる5軸を活用しています。このように3軸と5軸は利点を生かした使い分けをしています。この5軸加工は、3軸のノウハウとは違う技術を構築していく必要があります」と話します。 もう一つのターゲットがEV関連部品ですが、そこにも課題があります。「これまで手掛けてきたシートフレーム部品などは10ミクロン単位の品質でしたが、EVの部品では3ミクロン単位の精度が求められます。加工方法や加工機械など従来のものでは対応することができません。EV対応できるように5年前から設備の見直しや人の教育、工場の環境などを踏まえて、取り組んでいます」と早瀬様は語ります。 長年にわたり培ってきた順送プレスの金型づくりにおける独自技術が、新しい分野で花を咲かせようとしています。松や竹、ヒノキなどの木材をプラスチックのように自由に成形できる“木質流動成形”という、これまでの常識になかった新技術です。これは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と京都大学、そして同社の共同開発の成果です。 この新技術は、木材をプレスする過程の熱で繊維を柔らかくして、組織が滑り動かされて形状が変わり固定化させるというものです。光を通すような薄いものから、硬く重たいものまで作れるようになると言う早瀬様は、「木質流動成形に取り組むきっかけになったのは、産総研からの技術開発に参加してみないかとの呼びかけでした。既存の事業にプラスして何か新しいものに取り組みたいと考えていた時期で、興味本位で参加しました。最初は産総研でテストを行っていましたが、当社にも研究できる設備や体制を整え、万全なテスト環境を構築したことにより、いろいろなゆったりとしたスペースが取られた設計室金型でも木質流動成形でも活躍するSpace-E木材を加工して自由に成形するこれまでになかった技術を開発

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