CUSTOMERS REPORT9研究成果が生まれました。これは2013年からの取り組みで、SDGsやカーボンニュートラルなどの影響もあり広く注目され、そこからメディアの取材や現場見学の依頼が入るようになりました」と振り返ります。 その後、さまざまな試作品を経て製品化を実現します。小さなボディで優しいクリアな音色が好評の弦楽器専用スピーカー、硬質で重量があり指す時にキレのある駒音が出る将棋の駒、高級感のある化粧品用のスパチュラ、愛知ブランドイノベーションアワードのトロフィー、お猪口など、次々に木製の製品が製作されました。見た目の4倍の量の木材が使用され重量感があり、その製品の一部は、地元の東郷町のふるさと納税の返礼品にもなっています。 その中でスピーカーにおける地域貢献について早瀬様は、「スピーカーの試聴会を行ったとき、盲学校の生徒が非常に喜んでくれたので学校へ寄贈しようという話が生まれました。三重県、愛知県、岐阜県の盲学校へ毎年1カ所に順次寄贈する活動が評価されました」と話します。 新規事業である木質流動成形の分野にも、Space-Eを利用すると溝端様は言います。「試作品や製品のデザインもSpace-Eを使っています。トロフィーなど芸術家が手掛けたフリーな形状を再現できるのはSpace-Eだけです。これまで以上にデザイン的な3次元モデリングができると、もっと強い味方になってくれると思います。その他、Space-EにはCAMの自動化、フィレット作成の自動化などを期待しています」 金型技術に加えて、木質流動成形という新たな柱を築き上げたチヨダ工業様の今後について、早瀬様は「これまでの取り組みの延長として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による社会実証のためのプロジェクトがスタートしました。アップサイクルと呼ばれるものづくりです。例えば家を解体するとき、リサイクルのために分別をしますが、分別された木は燃やすしかないのです。しかし、ただ燃やしてしまうにはもったいないので、これを資源としてもう一度生まれ変わらせたいというのがアップサイクルです。その木をチップ化して新たな商品に再生させることで、さらなるカーボンニュートラルに向けた動きが望めます。このプロジェクトの一員として、当社はアップサイクルに向けて動き出しています。それが今後の当社の方向であると考え、夢を持って取り組んでいるところです」と未来を語ります。創業61年にも及ぶプレス金型の技術の蓄積と確かな実績が、木質流動成形という新たな分野に広がり、SDGsやカーボンニュートラルなどへの社会貢献にもつながっています。私たちNDESは、今後もチヨダ工業様の取り組みの一助となるべく努力を続けていきます。人とシステム No.106 July 2023ヴィヨーム オマージュ オーディオセット竹のコーンを使用したスピーカー文本力雄氏監修の将棋駒「黒朱流」木質流動成形による製品や試作品愛知ブランドイノベーションアワードのトロフィー今後取り組む未来のものづくり
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