SYSTEM & INTEGRATION18前回は新しい仕組みに改革するために考慮すべき考え方としてSeven Samuraiを紹介いたしました。このエッセンスは、既存のシステムに対して新しいものを導入しようとする時にそのまま入れてしまうと全く別の問題を引き起こしかねないことを示唆するという考え方でした。改善、改革的によらず「設計」の良しあしがその成否を決定づけます。本稿では、お客さまにおかれまして常日頃から行っている「設計」が、システムズエンジニアリング(SE)の世界においてどのような意味があるか、学術的な観点も踏まえて考察したいと思います。学術的に設計を論じるものとして吉川弘之氏の『一般デザイン学』(General Design Theory)[1]が挙げられます。これは人工物すべてを対象とし、デザインあるいは設計を課題とする理論であるとされています。ここでいうデザインの対象はSDGsのような世界を巻き込む行動やイノベーション、ITシステムや機械の設計だけでなく、ファッションや芸術作品、プライベートなイベントまで広く対象とします。多岐にわたる対象に対してデザインすることについて体系化しようとする試みがこの一般デザイン学ですが、元々「一般設計学」[2]という言葉で1970年代から議論されてきました。この名前の変遷は本書において『日本語ではdesignに対応するものとして「設計」という言葉が創られた.(中略)designは思考過程に焦点を当て,「設計」は思考の結果として得られる存在物に焦点を当てる.その結果,存在物の指示のないただの「設計」という言葉は,明確な定義のできない漠然とした集合概念を表すことになる.一方designは,思考過程という定義可能な概念である.』(図1)と述べられています。この話を咀嚼すると、私たちが日々行っている設計(デザイン)の要は、抽象的な思考に力点が置かれるべきものであるということだと考えられます。本連載のメイントピックであるSEは、この抽象的な思考を取り扱うための方法論の一つです。次の章では設計とSEの関係やデザイン思考との関係についても言及いたします。株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ新事業企画室 企画部加藤 智之, Dr. Eng. 図1 分析と設計(文献[2]より作成)システムズエンジニアリングについて3回連載でお届けします。今回は連載Vol.2です。学術的な視点から見た設計はじめにシステムズエンジニアリング 連載vol.2 デザイン思考とシステムズエンジニアリング
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