SPECIAL REPORTKazuhisa Higashi3あるが、その後に密な情報交換や技術交流ができる懇親会がないと魅力が半減するね」とおっしゃっている方が多くいらっしゃいました。 型技術協会としては、形式張ったイベントの場だけではなく、とにかく対面での出会いをしっかりとサポートしていくことが重要だと思っています。いただいて準備しないと、最初の試作フェーズに間に合いませんでした。そこで、図面をリリースしてから試作を開始するまでの期間が金型で決まってくるという重要さを改めて認識しました。東 自動車産業における金型業界の将来について、自動車メーカーのお立場からどのようにお考えですか。平田 日本の自動車メーカーにおいて金型の存在というのは、これからもさほど変わらないと思っています。今後、自動車の電動化が加速していくと、駆動系やバッテリー以外のところの部品類は常に金型が必要となります。 一方、自動車を電動化すると重量のあるバッテリーを搭載するため、運動エネルギーが大きくなり衝突時の安全性などでは不利になります。その上バッテリーは、事故時に発火する可能性を考慮すると安全性のための補強部品が必要となり、車体重量が増加するという負のスパイラルに陥ってしまいます。それを防ぐため車体を軽くする必要性がありますが、今までのような鉄板だけではなく、アルミや高張力鋼板を多用することになり、将来的にはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)も必要になります。欧米の自動車メーカーを中心にアルミの鋳物でボディーを作ることも増えてきており、カーボンニュートラルを意識した取り組みや、高張力鋼板の冷間鍛造などの新しい技術を導入していく必要があると考えています。そして、その金型をどのように作り込んでいくのかが重要な要素となります。東ガソリン車から電気自動車へのシフトによって、金型メーカーも今まで製作していたものから電気自動車向けの部品へとシフトする際に、作業の自動化を可能にする工法や製法の研究が必要だと思います。まずは、デジタル技術の活用で自動化を実現できないかと考えていますが、いかがでしょうか。平田 今まさにそういう論議をしているところで、間接業務のデジタル化はそれなりに進んでいるのですが、金型製作の現場では昭和の頃から変わらない作業が散見されます。そこで、今の技術でデジタルに置き換えられるものと、今後も必要不可欠となる熟練技術に分けてデジタル化に向けての取り組みを始めました。その1つが、飛躍的に進化した最新の計測技術です。計測データと加工データをリンクさせることで、狙った通りの形状が最初からできるようになります。しかし、μオーダーによる測定ができないケースになると、それを修正できる熟練技術を持った職人が必要となります。このように金型製作の現場のデジタル化を人とシステム No.106 July 2023NTTデータエンジニアリングシステムズ代表取締役社長東 和久後進に残す技術として熟練技術のデジタル化をお手伝いいたします。デジタルに置き換える技術と必要不可欠な熟練技術東 平田様は、これまで日産自動車でどのように金型と関わってこられたのですか。平田 入社以来、ずっと車両の生産技術の担当で、最後にシートやコックピット、エンジン、ランプなどを取り付ける艤装組立技術に携わってきました。そのため、金型は直接自分が触るというよりどちらかと言うと、金型の修正をお願いする立場でした。 その後、新車の全体のプロセスを見るようになり、車を企画してから立ち上げるまでの期間の中で、金型の準備が重要な要素を占めていました。ヘッドランプのような複雑な金型だと、相当早い段階からサプライヤーさんに入って
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