人とシステム No.108
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私たちは、これからの設計手法として期待される「多目的トポロジー最適化技術」を習得し、その有用性を実証してきました。この成果を、東北大流体研と共同で特許出願し、私たちの活動を広く社会に公表しました。若手社員は大学の最先端の研究に触れ、技術向上につなげています。本活動を推進することで、お客さまの製品開発プロセスに「最適化技術」による設計手法の導入をサポートし、製造業(ものづくり分野)の技術革新や課題解決に貢献していきます。・東北大学流体科学研究所教授 小宮 敦樹  専門分野:熱工学、伝熱工学、熱物性学准教授 下山 幸治 (現 九州大学大学院工学研究院 教授)  専門分野:流体工学、設計工学、データ科学2017年度からの活動で、さまざまなヒートシンクを設計・製造してきました(図6、表1)。2019年度にはL-Systemベースの多分木構造型ヒートシンク(製品#1、#2)を、2020年度にはグラフ理論ベースのラティス構造型ヒートシンク(製品#3)を実現しました。製品#3は、市販のヒートシンク(Reference)よりも放熱性能を1.2倍向上させ、製造コストの削減(体積を1/2)に成功しました。図7に示す、実現したヒートシンクの2目的関数上のプロットでは、他の解よりも優越しているパレート最適解が確認できます。各プロットは、最適化プロセスを進めることによって生み出されたヒートシンクの設計です。グラフの横軸は熱量Q[W]、縦軸は体積V[m³]を表し、グラフのプロットが右下にいけばいくほど、放熱性能をアップしながら製品コストの削減(体積の削減)が実現できています。製品#3は、この設計を実現した中の一つですが、現在私たちSYSTEM & INTEGRATION9 図4 造形計算(上)・解析事例(下)2019 製品#12019 製品#2 図6 製造したヒートシンクの一例 表1 製造したヒートシンクの性能2020 製品#3 図3 最適化プロセスのフローチャート界を制約条件として組み入れていきます。三つ目の「実証実験」を東北大流体研の小宮敦樹教授が担い、「造形解析・製造」で製造したヒートシンクに対して伝熱実験を行い、ヒートシンク性能および周辺の空気が流れる現象を可視化します(図5)。伝熱実験 図5 ヒートシンクまわりのの結果とCFD計算の結果を突空気流れの可視化き合わせ、最適化サイクルの放熱性能評価に対する信頼性を確認します。また、明瞭となった課題を設計にフィードバックしていきます。 図7 実現したヒートシンク性能のプロット(2目的関数上)は、製品#3よりもさらに右下に向かう解、すなわち、放熱性能を大幅にアップさせながら、製造コストも大幅に削減するヒートシンク形状の最適解を探求しています。人とシステム No.108 January 2024活動の成果おわりに

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