■■■■■■■■■■■■■■(出所:米調査会社のGrand View Research) 大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)による自然な対話(話し言葉)能力を備えた生成人工知能(AI)サービス「ChatGPT(チャットGPT)」の登場により、世界中が沸き立ち、産業界では概念検証(PoC:Proof of Concept、実現性の確認など)が活発に行われています。生成AIは卓越した言語能力が話題ですが、それにとどまらず、動画像やセンサデータ、空間情報なども関連付けて処理するマルチモーダル(複数手段)モデルへと進化を遂げ、社会生活や仕事のあり方を大きく変えることになりそうです。 米調査会社のGrand View Researchによると、生成AIの世界市場は2022年実績が1兆2000億円、2030年までに14兆2000億円に拡大すると予測しています(下図)。分野別でみると、ソフトウエア領域が64.8%と最も高い収益シェアを占めています。LLMの特定業務への適用や既存のアプリケーションとの組み合わせなどで、生成AIベースのソフトウエアの使用が急増したことが背景です。2022年~2030年の期間のCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は35.6%と高水準で、地域別にみると、シェア40.2%の北米市場が一番大きいことがわかります。 国内生成AIのユースケース(活用例)市場も活況に推移する見通しです。調査会社のIDC Japanは生成AI市場をオーディオ、イメージ、テキスト、ビデオの4種類に分類し、支出額から市場規模を推定。2023年9月公表の調査によると、国内生成AIのユースケース市場は2022年から5年間のCAGRが194.7%、2027年には市場規模は786億9400万円と予測しています。 生成AIの活用は検索やテキストの要約などの一般業務に加え、今後は「エンターテインメントや顧客体験(CX)分野での音声・広告作成、教育分野での教材作成など多岐にわたる」(IDC Japan)と展望しています。 製造業においても製品設計から生産プロセスの効率化、サプライチェーン(供給網)の最適化まで、生成AIの活用が期待される分野はたくさんあります。LLMはプログラムコードの自動生成機能もあり、工場自動化(FA:Factory Automation)への活用は国内外ですでに始まっています。 もとより、製造業におけるAI活用は今に始まったことではありません。データ分析やシステムの自動化などでAIの活用事例は数多くありますが、生成AIの登場で技術進化が加速し、扱えるデータ量が一気に増え、これまで実現が難しかった「あるべき姿」が現実となってきたと言えます。 AIの技術進化は2010年頃に台頭した「深層学習(ディープラーニング)」によって、新たな時代を迎えました。ただし、コンピュータに正解を教えるために、用途別に大量の学習データを集めたり、分類(タグ付け)したりしなければならず、開発作業には膨大な時間と労力が必要でした。 その後、2000年代前半から、分類なしの生データからAIが自ら学ぶ「自己教師学習」と呼ぶ手法が広がり、AIが扱えるデータの量や種類が急拡大しました。ブレークスルーは2017、18年頃です。多様なデータから学習した大規模なAIモデル(数理モデル)をいったん作ってしまえば、それをもとに追加学習し、必要とするAIモデルやアプリを10����������������生成AIの市場シェア製造業と生成AI生成AIと製造業 人とマシンの共生に向けた新たなパラダイムのはじまり株式会社日刊工業新聞社第一産業部 編集委員斎藤 実
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