人とシステム No.110
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東 御社のウェブサイトを拝見すると、社会インフラ分野などにおいて技術的なミッションを掲げられ、楽しみながら事業に取り組まれていることが伝わってきます。家入 やっていることは大変ですが、私たちの事業は二つあって、ソフトウエアを作ることと、そのソフトウエアを使った土木技術を極めていくことです。この両方をやっているからこそ事業を楽しめるのかもしれませんね。それには、おのおのの技術者がうまくコミュニケーションを取れるようにする必要があり、そのため経営ビジョンにもいろいろなキーワードを入れています。東 将来を担う若手社員には、多くの失敗を重ねながらその失敗から学び次につなげていってほしいと思っています。それには自由な発想でのびのびと仕事ができるように、その環境を整えていこうとしていますが、御社の取り組みに通じるところがありそうですね。研究所の博士の記事を目にしたことが始まりです。それは、「mote(モート)」というコンピュータネットワークにおける無線化の記事で、世界で無限の広がりを持つ無線ネットワークを構築するという内容でした。今もその新聞記事を保管しているのですが、この記事を読んだとき、農業であろうが工業であろうがさまざまな分野で使えると感じました。この無線ネットワークは軍需用として開発された技術で、人感センサーや温度センサーなど、各種のセンサーを搭載した装置をパラシュートでばらまいて、各装置が信号を自発的に広げていき、ネットワークを形成させていくという技術です。そして、搭載した人感センサーで、動くものと捉えた瞬間に信号を送り、どこで何が動いたか検知できるシステムになっていました。これは面白い、とにかくばらまきさえすれば何か情報が拾える、情報さえ捉えることができれば、それもネットワーク施設は不要でかつ瞬時に収集できれば、何かができると思いました。東 新聞記事が発端で新しい事業のアイデアが生まれたわけですね。家入 そうです。すぐにこれを取り扱っている日本の企業を調べて早速、連絡を取りました。そうすると反対に「無線通信で多量データの高速化をしたいという大学の先生がいるが、誰も実現できない」という相談を受けることになり、「うち、やります」と即答したところ、それが東京大学工学部の長山智則教授だったのです。その研究というのが、モニタリングデータ、特に3軸加速度応答値の高速転送で、通信プロトコルの確立やマルチホップや多重化通信による効率化でした。この研究開発の後で相談を受けたのが、加速度応答値の活用技術として、道路の路面性状のでこぼこを評価するため、国際的に使われている国際ラフネス指数(International Roughness Index:IRI)へ数値化することの高精度化でした。現況の技術としては、レーザプロファイラーで道路全体のデータを何万点も取っていきます。一般的に測定用の専用車両で行うのですが、その価格は数億円はかかります。それを加速度応答値だけでやろうという、大胆な考え方でした。 今では、その性能を追求していく取り組みが急速に広がっています。東 この時の東京大学の長山先生との出会いが、アフリカの事業に展開していくわけですね。家入 今、私たちがアフリカなどに展開している路面調査システムDRIMS(ドリムズ)という製品は、スマートフォン1台で道路の路面性状の評価を行うシステムです。この3Kazuhisa HigashiNTTデータエンジニアリングシステムズ代表取締役社長東 和久戦略的イノベーション創造プログラムへの参画東 御社は、海外への展開を積極的に行っていらっしゃいますが、アフリカでも事業をされていますね。家入 アフリカ向けの事業の発端は、新聞紙面でインテル 将来を担う若手社員には自由な発想で 仕事ができる環境を整えたい

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