技術は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program:SIP)の支援を受け、私たちと東京大学で研究開発を行いました。このSIPの実施期間であった5年間は地獄のような日々でしたが、その地獄をくぐり抜けたおかげで、科学技術に関する研究の難しさ、国からの支援の意義、どのような目標値を持って取り組んでいくのか、身をもって経験することができました。さらに、大学の先生とも出口戦略について一緒に話し合うことが大事だと思いました。このような経験をしたおかげで、大学とのネットワークも広がり、そのSIPの延長線上で、独立行政法人国際協力機構(JICA)との連携ができ、公益社団法人 土木学会(JSCE)との連携もできました。こういった連携は、国際展示会や講演会へと広がり始めます。特に、海外進出においては一企業ではアポイントメントの取れない海外の政府機関や大学、企業へのルートが確立できるのです。またODA案件になれば国の戦略となり、企業投資予算では展開不可能な地域への展開も可能となってきます。 このDRIMSの展開を促進する目的で、大学パートナーと企業パートナーによるコンソーシアムを組織化しています。この組織に今年、ケニアも加わりました。また途上国だけでなく、先進国への導入に注力しています。新たな国への展開において大学パートナーは強い力を発揮していただいています。東京大学、長崎大学、長岡技術科学大学の先生方が、海外の先生たちとネットワーク上で「DRIMSの紹介」をしていただくと、いつの間にか試験運用まで進んでいきます。 これまで私たちは、SIPの第1期、第2期、第3期にて採択をしていただいています。やはりSIPは、一企業で研究開発を行うのとはレベルが全く違います。SIPに採択してもらうには大変な労力が必要ですが、研究費が国から支援されるため、自社研究開発費の負担が少なくなり、国の後押しがあることで大きな信頼を得られ、そして幅広い人脈によってネットワークを築くことができます。ですから私たちのような会社の規模でも海外進出がしやすくなっています。東 面白いお話ですね。御社の取り組みは大変参考になります。ところで、先ほどお話いただいた人感センサーを搭載した装置は、電池で稼働するのですか。家入 そうです。電池です。非常に省エネ型でスリープモードが基本になっています。人感センサーや温度センサー、光センサーなどのセンサー類は、通信そのものに電力をあまり消費しません。やはり一番私たちが苦しんだのは3軸加速度です。その周波数が200から500ヘルツになると、それだけの3軸方向の加速度応答値をずっと送り続けるので、電池がボトルネックになりました。東 新しい技術でいうと電力の地産地消という考え方があり、そうすることで電線が不要になります。また、微弱電流だけであれば、熱を利用して作れるのではないかという話も聞きます。そして、自分で電力を供給できる技術が将来できるのではないでしょうか。家入 そうなのですね。公共道路や橋に各種センサーを設置しようとしても、やはり電力供給がネックとなり、費用を考えると自発的に発電できることが理想です。ソーラーパネルや風力もいろいろ試しましたが、それでも工事費用が高くなり、今後の課題は電力供給です。4スマートフォンを活用した道路モニタリングシステムDRIMSの概要図10年後のありたい姿 「Create the Future」の思い東 御社の将来に向けて10年後のありたい姿、「Create the Future」について思いをお聞かせください。家入 私たちのビジョンは、Challenge(チャレンジ)、Change(チェンジ)、Create(クリエイト)のC3というのが基本になっています。3はC×3ではなく、Cの3乗を意味します。つまりCを継続的に続けることで成果は3乗になってほしいとの願いです。最後のCreateは難しいと思うのですが、創出できるような社員になるには、一人一人が自分自身を変えることです。変えるというのはDXで
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