REFRESH殖人とシステム No.111 January 2025海のいけすやいかだで育てる海面養● ● ● ● ●16古くから知られる次世代のタンパク質源“昆虫食”養殖による供給量確保で食卓を守る異色の新食材“昆虫食”と水産物“陸上養殖” フードテックによる新たなタンパク質源として期待されているのが昆虫食です。 江戸時代以降、日本各地で昆虫は貴重な動物性タンパク質源として位置づけられてきました。大正時代を対象とした全国調査によると55種に及ぶ昆虫が41都道府県で食べられています。 当時の昆虫食の代表は、稲の葉や茎を食べるイナゴで、害虫駆除と動物性タンパク質の摂取という一石二鳥の目的により食用にされていました。特に、第2次世界大戦中および戦後の食糧難の時代には、一般家庭の栄養食品とされていたため、高齢の方の中には幼少期に食べた記憶がある方も多いのではないでしょうか。イナゴと並んで、ハチの子、カイコのサナギ、ザザムシなども伝統的な昆虫食です。 近年になって、私たちの食卓で見かけることは少なくなった昆虫食ですが、最近その価値が改めて見直され、次世代の食糧資源の一つとして注目を集めています。その理由に、環境負荷軽減が挙げられます。飼料や土地が畜産よりも少なくすむだけでなく、食品ロスを餌に利用することで、その削減にもつながります。 その他、昆虫を養殖漁業の飼料として利用するための研究も進んでいます。魚粉代替飼料として利用できる可能性を見いだしており、継続的な研究開発が進められています。 日本食に欠かせない食材に魚介類(水産物)があります。近年は、おいしくてヘルシーという認識が広まり、さまざまな国で人気が高まっています。 私たちにとってなじみの食材である水産物ですが、最近、サンマやイカが不漁というニュースを目にするようになりました。不漁にはさまざまな原因がありますが、その一因として気候変動が挙げられます。地球温暖化による海水温の変化で回遊ルートや生息域が変化し、従来の漁場で漁獲しにくくなっています。一方で、これまでほとんど水揚げされなかったブリが豊漁になった地域もあり、海水温の変化の影響は魚種によって大きく異なります。併せて、中国などのアジアの新興国で魚介類の需要が急増しており、人気の魚種については国際的な奪い合いともいえる状況になっています。 そのため、天然資源だけでは安定的な魚介類の供給が困難となっています。安定的に国産水産物を供給できる養殖業の拡大が重要であり、日本の養殖業については堅調で、量の面だけでなく、味、品質、大きさなどを調整することが可能です。養殖は、場所によって区分されます。海でいけすやいかだなどで育てる手法が海面養殖で、湖・池・河川などは内水面養殖、陸上で行う養殖が陸上養殖です。特に、陸上の人工的な環境である水槽で行う陸上養殖が、脚光を浴びています。これらは、IoTや自動制御技術などの活用が進んでいることから、フードテックの代表格の一つに数えられています。フードテック入門②フードテックはさまざまな課題解決のキーテクノロジー
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