工場インマスカットで本日人とシステム No.111 January 2025生まれて世界中で人気のシャオートメーション技術の導入が進む植物※図解よくわかるフードテック入門(日刊工業新聞社刊 2022年2月28日発行)著者:三輪泰史 様人口増加、経済成長、気候変動、人為的な環境破壊など、国内外を問わない地球規模の環境変化の影響で、食料需要の増加、農地・天然資源の限界による需要ひっ迫が深刻化すると懸念されています。そういった従来の農林水産業が直面する課題の解決策の一つとして、フードテックへの期待が高まっています。17新しい農作物を産み出すスマート育種先進的な農業技術の植物工場未来の農業につながる植物工場とスマート育種 ぶどうの人気品種である 植物工場は、光、温度、二酸化炭素濃度、風速、養液濃度などの栽培環境を、人為的、自動的に最適化した農産物栽培施設のことです。閉鎖空間内で栽培する人工光型(完全閉鎖型)と、自然光が中心で一部を人工照明で補う太陽光併用型、自然光のみを用いる太陽光型(環境制御型温室)などがあります。 植物工場では、産業用ロボットをはじめとするオートメーション技術の導入が進んでいます。さらに、人工知能(AI)の活用が急加速しており、植物の生育状況のモニタリングや環境制御システムの高度化といった生産現場での活用が進んでいます。さらには生産した農産物の流通・販売段階といったサプライチェーンでの活用も始まっています。 また、農業ブームやSDGsへの関心の高まりを受けて、貸農園、体験農園、家庭菜園、ベランダ菜園などが人気となっています。このような都市部での農業は『マイクロファーミング』と呼ばれ、最近はスマート農業技術を導入する事例も出てきました。さらには、部屋の中に置ける家庭用の超小型植物工場が実用・商品化されており、家電量販店でも販売されるなど注目を集めています。 農作物の祖先に当たる野生種の植物は、実が小さい・すぐに実が落ちる・毒があるなど、栽培や食用には適さないものがほとんどで、そうした中から利用しやすい性質(形質)を持つものを選んで栽培し、作業性や食味を高めてきました。この過程を栽培化と言い、さらに効率的に優れた品種を生み出すため、目的に合わせて選抜を繰り返す育種技術を発展させてきました。主なものに、交配、放射線や化学薬品などによる突然変異の誘発、遺伝子組み換え、ゲノム編集などがあり、育種のスマート化が進んでいます。遺伝子組み換えでは、従来の品種改良では不可能と考えられていた形質を持つ農作物を生み出すことができます。一例に、βーカロテンを多く含むゴールデンライスがあります。シャインマスカットは、スチューベンとマスカット・オブ・アレキサンドリアの交配により得られたブドウ安芸津21号に、白南という品種を交配させることで生まれました。2号にわたって掲載した「フードテック入門」は今回で終了します。次号から新しいテーマでお届けいたします。お楽しみに。
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