人とシステム No.112
14/20

加速する中、効率的な情報検索の重要性が高まっています。特に注目を集めているのが、生成AIの精度向上を図ることで正確性の高い情報入手を可能とする「検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)」です。本稿では、そのRAGについての概要やメリット、私たちにおけるサポート業務への活用についてご説明します。要約や翻訳などのさまざまなタスクを遂行する汎用性を持っています。ただし、必ずしも正確な回答が得られるわけではありません。それは、生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)が、事前に学習したデータベースを基に統計的な回答を生成するため、データベースに含まれていない情報は回答できないからです。しかし、ビジネスの現場では、自社の社内情報や最新情報 図1 RAGの仕組みはじめに近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)がから検索したいというニーズが高まっています。RAGは、LLMによる回答の生成に外部情報の検索を組み合わせることで回答精度の向上を図ることができる手法です。RAGを活用すると、検索範囲を社内情報や最新情報に広げることができ、正確な回答の生成が可能となります。実際のRAGの仕組みは、検索段階で抽出器を用いて内部データやインターネット上の情報を検索し、その情報を統合して生成器が回答を作成する、という流れになります。これにより、従来のLLMの限界を克服し、高精度の回答が期待できます(図1)。されて以降、急速な発展を遂げてテキストだけでなく音声や画像を対象とするマルチモーダルな領域へ拡張が進んでいます。RAGの活用に関する調査では、IT・通信業界が最も進み、その企業の半数以上は社内の利用から始められています。その理由の一つにRAGの魅力である情報更新が容易になることが挙げられます。最新データに基づいた信頼性の高い回答が得られるため、企業内部での意思決定にも強みを持つことができます。また、事実に基づかない回答を生成するハルシネーションの発生を低減でき、運用コストも抑えられるため、企業の競争力の強化に寄与します。また、製造業でもRAGが重要な役割を果たしており、生産管理や製品開発において、過去のデータや故障情報をもとにリスクが予測できるというメリットがあります。例えば、プロジェクト関連の過去RAGを活用するメリットRAG は、Patrick Lewis氏らにより2020年に概念が発表12人とシステム No.112 May 2025 株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ新事業企画室 DX推進部 開発課石渡 聖矢SYSTEM & INTEGRATIONRAGの概要生成AIは、人間のような自然な会話が可能であり、文書の検索拡張生成(RAG)の概要・事例紹介

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る