人とシステム No.112
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電気自動車を支えるキーデバイス人とシステム No.112 May 2025各デバイスPN接合ダイオードPINダイオードショットキーバリアダイオードパワーMOSFETGaN HEMTIGBTパワーバイポーラトランジスタサイリスタGTO電気自動車でも多くのパワー パワー半導体デバイスを大分類すると、制御端子がなく電流を一方向に流すことで整流動作をするパワーダイオード、制御端子への入力信号によりスイッチング動作ができるパワートランジスタとパワーサイリスタがあります。パワーサイリスタは、パワートランジスタに比べて大電力を扱えます。 これらのデバイスの半導体材料として、一般的にケイ素が用いられています。ケイ素はシリコン(Si)とも呼ばれていますが、高耐圧で大電流になるとスイッチング時とオン時の損失が大きくなります。そこで、これらの損失を低減するため、次世代パワー半導体デバイス材料として、ワイドギャップ半導体が注目されています。 ワイドギャップ半導体は、従来のシリコンを使った半導体よりもバンドギャップが広い半導体で、高温に強い、高電圧や高出力に強い、エネルギー効率が良いなどの特徴があり、次世代のパワー半導体デバイスと言われています。バンドギャップとは、電気が流れる時の壁の高さに例えられるエネルギー差のことで、バンドキャップが広いと電気を流しにくく、狭いと流しやすくなります。半導体の特性に関連する重要な性質です。材料としては、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウムなどが検討されていて、すでに製品化されたものも多くあります。それぞれ特徴が違うため用途も変わってきます。 パワー半導体デバイスは、手のひらサイズのデバイスから大規模インフラまで、幅広く活躍しています。 小さなものでは、スマートフォンの急速充電器をはじめ、LED照明の電力制御、補聴器、ゲーム機、パソコン、テレビなどの小電力電子機器、エアコン、洗濯機、掃除機、冷蔵庫などの中電力電気機器、さらにインフラや巨大設備として、電車のモーター制御、送電網で使用される電力変換設備、風力発電などの大電力電気機器のスイッチング電源、工場のモーター制御システムなどで使われています。用途によって設計や使用する部品などは異なりますが、基本的な動作原理はすべて同じです。充電器と電車も、パワー半導体デバイス的には親戚のような関係になります。半導体デバイスが使われています。滑らかな発進のためのパワーとトルクの制御、減速時には回転数を落とす制御が必要です。次号のリフレッシュでは、半導体と電気の関係、パワー半導体材料の特性や各デバイスの機能などをご紹介します。お楽しみに。17研究開発の進展で目指す次世代のパワー半導体デバイス※今日からモノ知りシリーズ「トコトンやさしいパワー半導体デバイスの本」(日刊工業新聞社刊 2024年2月9日発行)デバイス大分類パワー ダイオードパワーデバイスパワー トランジスタパワー サイリスタ著者:松田順一 様パワーデバイスの種類現代社会に欠かせない電気を、それぞれの機器で利用するには電力変換が必要となります。そのために不可欠なパーツがパワー半導体デバイスです。普段、目にする機会が少ない言葉ですが、現代社会に欠かせないキーデバイスで、スマートフォン、パソコン、テレビ、自動車、電車、産業用機器、風力発電など、あらゆる装置の電源に活用されています。社会のあらゆる場面で活躍パワー半導体デバイスの種類

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