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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.17 社長インタビュー

モノ作り技術とIT (情報技術)

略歴

豊田工業大学 客員教授 株式会社ティームズ研究所 代表取締役所長 中川 威雄 様
豊田工業大学 客員教授
株式会社ティームズ研究所
代表取締役所長
中川 威雄 様
1938年東京生まれ
1967年東京大学 大学院 精密機械工学科 博士課程修了
1979年東京大学 生産技術研究所 教授
1985年東京大学 生産技術研究所 同所付属 先端素材開発研究センター長
1985年理化学研究所主任研究員(兼)
1999年東京大学を定年退職
現在豊田工業大学 客員教授
東京大学 名誉教授
理化学研究所 顧問
株式会社ティームズ研究所を設立

情報技術との融合

桑木 本日は中川先生とモノ作り技術と情報技術の係わりについてお話を伺おうと思って参りました。モノ作りの基本的な技術を発展させることは必要ですが、それに加えて新しいITを従来のモノ作りの研究の上にかぶせ、もっと効率のいい活用の仕方をすることが必要であると思います。

また、ITそのものの技術。これもありますね。

我々は、ソフト、情報関係の事業をしておりますが、ITだけでいいものが作れるかというと、そうはいきませんので、情報系のITの技術も勉強するけれど、モノ作りの技術も勉強して、複合していいものを作っていかないと、商品、システムとしていいものはできないと思っています。

人物写真
日立造船情報システム
取締役社長 桑木光信

中川 まったくそのとおりだと思います。私が関係しています金型分野などは、以前は職人の腕の世界でした。それがNC工作機が入ってきて、CAD/CAMの世界になり、自動加工できるようになった。今ではさらに部品設計が3次元化され、デジタル化したデータが入ってくるようになると、加工だけでなく、型設計、加工シミュレーションもみんな情報技術を利用するようになっている。いわいる職人の腕と言われていたところが機械に置き換わり、金型業界も情報処理産業に変わりつつあります。必然的なこととして、効率も精度も上がり、大変結構なことだと思います。一部の特殊技術は職人の腕の分野として残りますが、全体としてはそのような傾向です。

ただ、情報技術は必ずしも日本が強いわけではなかったように思います。残念ながらCADやCAD/CAMやRPにしても、アメリカ・ヨーロッパが強くて後塵を拝していました。

しかし、情報技術は、完全な形でモノ作りに結びついていないといけません。日本のモノ作り技術は非常に強いですから、日本では相当レベルの高い情報技術が要求されます。つまりCAD/CAMにしても、お客さんの要求が非常に厳しいですから、それにあわせてリファインしてレベルの高いものにしていく。すでに自動車車体成形の金型加工CAD/CAMデータ作りなど、日本独自のレベルの高いものができています。これは、一番高いレベルのニーズのある日本で完成させて世界に普及させる、そういう形に持っていかなければいけないし、持っていってほしいと思っています。HZSには是非期待したいところですが、他の分野でもそういうものの発信基地に日本がなりうる可能性は非常に高いと思います。

日本の生産技術は世界一

桑木 非常にありがたいご指摘をいただきました。世の中の動きとしては海外へ進出されるところが多く、日本の製造業が寂しくなってくるような状況にあります。日本の本来のよさを伸ばし、先生が今おっしゃったように、もっともっとモノ作りとIT技術に力をいれて、海外には負けないモノ作りの高いレベルを保っていかないといけないですね。

中川 もっとも、現在のモノ作りの厳しさを招いたのは、日本のモノ作りが強かったからだと思います。

部品作りも強いし、金型も強い。いいものが安くできるので、国際競争力がつき、輸出が増えて、黒字になり、円高になった。円高というのは人件費高のことを意味しますから、その結果、日本の組立産業、最終製品を作っている家電など、自動車も含めて、円高のとき以来、続々と海外に出て行っています。いつの間にかテレビも輸入の方が多くなっています。

自動車も生産量が減っている。おそらく家電も減っている。総量が減っているところで日本のモノ作りをやっていかないといけない厳しい状況にあります。その結果、自動化してなるべく人件費がかからないようにしたり、部品コストを下げるなど徹底的にやっています。その結果、いつの間にか製品輸出より部品輸出の方が多くなっています。外国では作れない高度な部品を輸出しているのです。

不況だ、日本の製造業は元気がないと言われますが、もちろん量が減っていますので元気はないのですが、技術面では、以前よりいろいろな部品が安く作れるようになっています。物を安く作る技術というのは、大変高い技術を要するものでして、設計から生産まで効率を上げているので、生産量が少なくなってきているにもかかわらず、これだけ安くできるのです。

だから、私はこの不況で生産技術が上がっていると思うのです。これは世界に生産技術でさらに差をつけたぐらいだと思っていますが、誰もそんなこと言いません。アメリカが追いついてきただの、アジアが追いついてきただの。

竹内 コストだけなら大量生産によるコストダウンもあるでしょうが、今は多種少量の中で下げるというのは難しいでしょうね。

中川 多種少量で、しかもコンスタントにでるかどうかわからない。多種変量生産に対応するわけですから、もっとも難しい生産技術です。こういう技術を達成したのは、世界中で日本だけです。日本は少量生産にも強いのです。外国で作ると到底あんなに安く作れない。もう一方の誇るべき技術は、製品開発期間の短縮です。日本はいい中小企業がたくさんサポートしますから、社内だけでは到底できないたくさんの部品を、それぞれ分担してしかも短期間にきちっとしたものを納品してくれる。このようなシステムを持っているのは世界中で日本だけです。その中のひとつのキーのテクノロジーが金型技術です。

人物写真
日立造船情報システム
取締役 竹内敬二

そういう生産技術の面で見ると、決してモノ作りは弱くなってないし、今のところかえって差をつけて頑張っているとみています。ただ、さらに強くするには、ITの技術をよりうまく融合させる課題が残されています。日本の高いレベルのモノ作りとうまく融合させてほしいと思っています。

日本のライバルは?

中川 モノ作りで今こわいのは欧米ではなくてアジアだと思います。アジアは以前はかなりレベルが低いし、誰もが当分は追いつけないと思っていました。確かに現地企業と比較するとかなり差がありますが、そういう目で見るのは間違っていると思います。電気製品を見てもアジアのものが多く、日本のメーカと違わないものが生産されています。

以前は日本で部品全部を作って、アジアで組み立てていましたが、今は、部品の現調率もずっと上がってきて、着実に主要部品まで迫ってきています。

これらの製品の多くを作っているのは、確かに日系企業ですが、この日系企業が実は日本の企業の完全なライバルになっていて、日本での生産がどんどん減っているのです。

日本国内の製造企業は、そういう日系企業と競争しなくてはいけない。日本人がアジアに出かけて行って、最新鋭の設備を使い、優秀な人を採用して教育すれば、ほとんどのモノ作りはできないはずはないのです。この状況は日本の企業が自ら招いたことですが、我々日本に残る者はそれに勝てる物を常に作っていないといけない。

さて、日本はモノ作りでアメリカを追い越したとみんな思っているでしょう。たぶんこれは事実です。では、日本のモノ作りを越す国はどこかと誰に問うても、答える人はいません。アメリカやヨーロッパが越すかというと、そんなことないでしょ。そうすると韓国か台湾となります。でも韓国と台湾が越すと思いますか。みんなNOと言います。私は世界のトップを維持するのにそんなに心配していません。

同時に昔みたいな高度成長の再来を期待するのは、幻想です。トップになったら、それ以上の段突を維持するのは難しいのだから、低成長か成長が止まるのはあたりまえです。成長しすぎたバブルがあったのでちょっと下がりましたが、いくら景気対策しても皆さんが期待するような成長はありえないのです。

今の世界でトップの状態が続けば、我々は満足しないといけない。その間に社会資本は増えています。この10年、不況が続いたというけれど、道路はきれいになり、ビルはきれいになり、前より見た目もよくなっています。バブルの再来ばかり期待しているマスコミの論調は間違っています。私は、モノ作り技術という意味では、世界一を維持できるし、日本を越す国はそう簡単には現れないと思っています。このことを頭において自信をもって努力してほしい。

製造業は、何十年も厳しい競争の中でよく頑張ってきました。でも、保護されているいろいろな周辺産業がみんな足を引っ張ってきた。是非、国には規制緩和をしてもらって、そういう人たちにも世間並みに頑張ってもらわないと、ますます製造業の足を引っ張り、日本の国が貧乏になってしまいます。ほかの分野も製造業を見習ってほしいですね。

竹内 アジアは日本を越える力はないかもしれないけれども、かなり年々追いついてきています。そこをどうみるかですね。

中川 そのとおりです。先程も申しましたが、楽観できない状況です。PCは台湾にもっていかれました。これは、時間の問題かも知れません。確実にそうなります。ただ、そのときに、日本は新たな挑戦が必要です。過去の例を見ても、繊維産業がいくら頑張っても負けてしまいました。産業構造の改革をして日本にしかできないモノ作りに変換していかないといけない。その余力は、今の日本にはあります。真似して追いついてくる国だってそれぞれつらいところがありますから。

竹内 企業の考え方として、新たなことに挑戦していかない企業はダメになる。次の投資、ITを含めてやらないと、淘汰されてしまう。それが日本国内ではなくて韓国、台湾、中国の土俵で勝負をしないといけないということですね。

世の中の流れ

中川 景気がよくて、供給不足のときは、管理とか、システム上手に会社を運営すれば儲かったのですが、これからは技術が会社の業績にずばりきいてくる。そういう意味では、本当の零細企業は昔よりつらいかもしれません。ある程度の人と、設備を使いこなさなきゃいけないから、昔みたいに何でもおこぼれの仕事がきて、何とか食いつないでいくということはできないでしょう。

小売店でもそうでしょ。大型のスーパーができて、コンビニができて、一般商店でも特徴のない店はやっていけなくなってきました。コンビニが銀行の代わりになったり、消費者にとっては選択範囲も増えて、効率がよくなって、値段も安くなります。ITは騒がれているように製造業だけではなく、流通業の革命になることは間違いないですよね。

昔、人は食料を確保するために働いていた時代があって、日本の一番重要な産業は農業でした。中国でもついこの前まで8割が農業でした。今はアメリカで3%の労働人口で輸出できるぐらいの量が取れます。我々の食べる量はきまっていますから、食料のために働く時間は減っている。これが第1次産業です。次は第2次産業で同じようなことが起こっているのでしょう。小さな日本の中でちょっと作れば世界中にテレビが供給できたり、カメラが供給できたりします。つまり工業製品ですら、昔はたくさんの人がかからなければいけなかったけれども、今は狭い土地で少しの人達でロボットを使ってできるようになった。

だから第2次産業の割合が日本でもどんどん減っています。それは第2次産業が衰退しているのではなくて、効率が上がって、農業と同じ道をたどっているということを意味しているのです。一昔前と比べて、物を作るのにすごい少ない人で効率よく作れるようになっているということなのです。後は、余った人はどこに行くかというと、効率の上がらないレストランなどサービス産業にそういうところにどんどん人は吸収されています。第3次産業でも、物を売るというところに、インターネットなどで合理化されて、そういう人たちは余ってくると、レジャー施設や教育も第3次産業やテレビの製作など、別の分野に吸収していっているわけです。だから構造改革を併った発展が続く限り、ある一定量の失業者がいて、それが正常なのだと思います。一時の日本の完全雇用なんて異常な状態だったと思います。

民間人としてのこの1年

中川 去年の4月に大学の先生から足を洗い、株式会社ティームズ研究所を設立して、待望の(?)民間人になれたと思っています。

ティームズ研究所とは、Tool Engineering Laboratory for Advanced Manufacturing Systemの略で、先端製造システムのためのツールエンジニアリングシステム、金型工具研究所の意味です。その頭文字をとってTEAMSとしたのです。モノ作りにはツーリングがキーを握っているということと、金型とをかけています。もうひとつはみんなと一緒に協力してやろうというので、チームワークを掛詞にしています。

人物写真

株式会社ティームズ研究所
〒163-1452 東京都新宿区西新宿3-20-2
東京オペラシティタワー52階
TEL:03-5351-6121 FAX:03-5351-6122

もともと私は大学で技術開発で、泥臭いことをかねてやってきましたので、豊田工大での客員教授のかたわらその経験を生かして、一人の技術開発の専門家、技能者として、モノ作り企業で困っている問題に相談にのったり、技術開発のテーマをお手伝いしています。

この仕事をやって一番痛切に感じたのは、今の日本の製造業は非常に厳しい状態にある。昔のように浮ついている状態ではなくて、厳しさがひしひしと伝わってくる。これが第一です。

もうひとつは、私自身は大学にいて実際的な研究で貢献してきたと思っていましたが、今は少々反省しています。世の中の製造業はいろいろなテーマを抱えていて、解決で大学の力を必要としています。ところが、そういうことは私の過去を含めて大学の先生に十分には伝わっていない。大学の先生は別世界の人だという感じがします。

是非、公的機関の研究者や大学の人たちは、世の中にどのようなニーズがあるのかということをもう少し製造現場の人たち、少なくとも製造技術開発の研究をしている人は、今起こっている問題に対してアプローチをしてほしい。

日本の不景気をふきとばすために、日本政府は産学官連携や、大学や研究所からいいシーズを生み出してそれを産業界にトランスファーしていかないといけないと応援をしています。私の経験から言わせてもらえば、大学研究者は、産業に貢献しようと思ったら、もっと産業界と密接な関係をもった上で研究をしてほしい。高度な研究をしているという自負だけでいると、今の政府の応援は掛け声だけに終わってしまい、政府は高いお金を使っても成果がでないという危険性があります。今のまま、従来どおりの態度で取り組んでもらったのでは、産業技術に関する限り十分な成果は期待できないのではないかと懸念しています。この1年間の経験でそう思います。

企業もそういう目で公的機関研究者や大学の人達に大いに情報を入れてほしい。一方で企業は、国や大学を頼りにせずに、競争の中で日本の企業は強くなってきたのだから、その考えは捨てないでほしい。いつの時代にもお上に頼ろうというのは、かならずしも正しい発展の方向ではないかもしれないのです。

IT革命時代の大学の目指す方向

桑木 IT革命時代の大学の目指す方向はどう変わっていくのか、企業側としては関心があります。今までのような伝統的な教育とは大きく変わるということはわかるのですが、それがどのように変わるのでしょうか。

中川 一般的には、大学の役目は、学問を確立するだけでなく、世の中の変化を先取りする形で引っ張っていかないといけないわけです。必ずしもこれが実践できるとは限らないので、産業技術では後から追っかけていることも多いのです。大学は、研究と教育というふたつの目的を持っています。ITに関する研究では、ITそのものの研究とITを利用した研究を進めないといけない。今の時代、ITを活用する人を含めて、人材供給の強い要請もあります。ITに明るい人、訓練を受けた人、そういう人たちの働く場がどんどん増えてきます。そういう人に企業にきて頑張って仕事をしてもらわなければいけない。大学はその教育の義務もあると思います。教育や研究システムに情報技術がどう影響するか。研究のほうから言えば、外国で出た情報は瞬時に入ってきますし、国境がなくなりつつある。国境を感じさせない研究交流ができる。実際には、IT応用技術研究は研究コスト、設備コストが安い。将来を考えるともっと安くなる。研究交流、情報交換の場にいっぱい入ってくるというのは間違いない。今の大学の中で教育の手段としても入ってくる。CD-ROMで教材が作られているだけではなくて、授業もその分野で魅力的な人が講義をして配信する。教育システムを変えるなど非常に大きな影響を与えるでしょう。

桑木 ITを研究するということと、いかに活用するかということと、ふたつありますね。

中川 大学の先生たちは実物で実験するよりも、いろいろなモノ作りの現象もシミュレーションで済ませようとソフトウェアの開発などをしていたり、コンピュータの情報技術を使った、生産管理や制御など、いろいろな研究はコンピュータなしではできなくなっています。実際にそれに関する研究者も多いわけです。先生たちは、モノ作りの現場の研究にしても、30年ぐらい前からIT応用に近い方向で研究してきました。ただ、逆にそれが、モノ作りを知らないモノ作りの研究者がでてきたり、コンピュータの前だけ座っていて現実にどう機械が動いているのかを知らないエンジニアが卒業して行ったりというような、私は一種の弊害だと思うのですが、そちらのほうも心配するわけです。

流れに逆らわないとしても、大きなIT時代の現実のモノ作りがどういうものなのか、いいメディアを使ってちゃんと教えてほしい。ただしちゃんと身につく形で教えることができるかどうか疑問です。そこを失敗すると、実際に手を汚すようなところが弱くなって、製造業の本当の力がじわりじわりと弱くなります。そういう方向を軽視すると将来が心配になります。

世界中の大学の先生と付き合っていまして、その国の大学のモノ作りの研究レベルは、その国のモノ作り産業レベルにかなり比例するのです。今までは、日本は造船が強かったから、造船の研究レベルも高い。造船業を持ってない国の造船の研究レベルが低いということは当然のことで、日本の製造に関する大学の先生は世界一のレベルです。私が要求しているのは、それでも今のままでは物足りないといっているのです。世界一のレベルかもしれないけれども、もっと日本の産業が世界でかなり段突に高いのだから、企業からニーズをとってさらには企業と一緒になってもっと頑張ってほしいというのが、先ほどからの私の期待なのです。

企業で、将来を見据えた技術開発もやっていますが、大学は目先のことではなく、企業でできないようなテーマに取組んでやってもらわないといけない。確かに企業でできないようなテーマもやっていますが、重箱のスミをつついているような研究ではだめなのです。やはり、将来重要となる先端の研究をして企業を引っ張っていってもらわないといけない。それを取り上げるのは、企業はどういうニーズを持っているか、企業はどちらに進んでいるのか、そのような情報がどんどん入ってくると、大学でやる良いテーマが選べるのです。企業とやりなさいというと、目先の現実に困っているテーマをずばりそのまま取り上げればいいと勘違いする。これはやってはいけないし、やっても成果は出ない。将来重要になるテーマは、実はたくさんのいろいろなニーズを知ったり、今世の中はどういう方向に変わっているかを知っている人には生まれてくるのです。人間はある程度刺激とかインプットが入らないと、アウトプットも出てこない。自分の世界に閉じこもって自分の価値判断だけの狭い範囲や、学会の論文の情報だけでやるから、人の後追いの研究のようになってしまいます。モノ作りに関する産業技術のテーマは、いくらでも転がっているということがこの1年でわかったので、是非、企業人たちの生の声を聴いたり、接触を持って、大学らしい企業でできない先端研究に頑張ってほしい。そうすれば、研究面では少なくとも企業の先を行き、リーダーシップを取れるようになると思っています。

HZSに期待すること

竹内 日本の金型業で使われている非常に厳しい品質要求に耐えうるシステム。我々に対する要望だと思うのですが、日本の技術を織り込んだシステムを海外にもっていったときに製造方法が違うなどいろいろな問題がありますが、どういう評価をされるのでしょうか。

中川 どんなものでも完成度が高ければ世界中で受け入れられるでしょう。

金型はわかりにくい人の要素などありますが、鉄を作る技術にしても世界のグローバルスタンダードとなり、アジア諸国でも受け入れられていますし、アメリカでも技術提携しています。ちゃんとした技術はグローバルスタンダードとなっていきます。工作機もNCもまさにそうです。

今の金型のシステムも最初は欧米でしたが、この20年程は日本がリードしています。自動車のボディーなどはもっとも難しい金型です。高速加工なども、今は日本が先導しています。

製品だって急に普及しだした携帯電話は、日本製は、薄くて軽くてしかもいろいろな機能があります。かつてヨーロッパ製はもっと重かったのですが、最近は日本に発注がきているのを見ると、そういうのも日本の製品技術が伝わっていると思います。

これだけモノ作りが世界をリードしている中で、昔から残念だったと思っているのは、情報技術が遅れているとみんなに言われることです。日本で使っているCADなども外国製が中心になっています。これには同情する余地もあります。

IT技術が急に伸びてきたころに、日本は人材を投入する雰囲気になかった。逆にアメリカは製造業がだんだんだめになってきて、失業者が増え、優秀な人がソフト開発に回りました。そういうような社会的な状況と、もともとコンピュータというのはPCを含めてタイプライターの国と漢字の国の違いもあったりして、あまり日本にはファミリアーではなかったのではないかと思います。しかし、これからまきかえすのは非常に難しいですね。

最近はソフトで言えば、インドや中国の優秀な教育を受けた人たちが先進国の下請けとしてやっていますから、それを日本が逆立ちをしても追い越すようなことはないと思います。ほかの先進国は製造業がだめですから、生きて行く道がはっきりしていますので、ますます力を入て、ITで頑張ってくる。いくら日本人が勤勉で優秀な人を集めても、物量的に人間の資源は限られていますから、難しいかなという気がしています。ただ、日本の強い分野、製造業、せめて製造業では、いいソフトを結びつけられる素地が日本にあると思います。まったくオリジナルなものでなくても、改良した形でも、日本で独自の技術を完成して世界に使われるものを開発してほしい。日本は、立地条件としては悪くない条件にいるのですから。情報技術というのは広い応用範囲がありますのでそれぞれの得意な分野で発展していっていただけないかなと思います。

桑木 とても貴重な助言だと思います。情報関係も幅が広いので、我々はCAD/CAM/CAE/PDM/Webの技術で、モノ作りをしていらっしゃるところの効率を高めていく任務があります。日本のユーザの厳しい要求をソフトに織り込んだものは他にはないと思います。それが我々のレベルを高めることになり、取り組む分野でしっかりやればまだグローバルスタンダードになる可能性はありますね。今日は、貴重なお話をお伺いでき、大変勉強になりました。どうもありがとうございました。