人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.52 | システム紹介
3次元切削検証ツール
VERICUT(ベリカット)最新機能のご紹介
株式会社 エムフュージョン ソリューション事業本部 新田 栄二

お客様の加工環境の安心・安全を高精度に素早く検証できる3次元切削検証ツール"VERICUT"が最新バージョンV6.2にバージョンアップしました。検証後の形状を元にさまざまな解析が可能です。

今回は、VERICUT(以下、ベリカット)の製品概要と最新バージョンの機能などをご紹介します。

はじめに

■ベリカットは何ができるの?

ベリカットは、パソコン上で実際の加工機械(3軸、旋盤、放電加工や5面加工、5軸MCおよび複合旋盤など最大同時12軸の加工に対応)と同じように加工材料を治具などで工作機械に取り付けて、NCデータを元に削ることができる高精度の切削検証ツールです。

説明図

実機と同じように動作し、工具、ホルダーと材料、治具の干渉および機械の干渉、ストロークリミットオーバーなどの事前検知が行えます。

加工時の不測の事態を未然に防ぎ、生産効率の向上、安定稼動、コスト削減を実現し、現場の安心、安全、対象部門の効率性の向上を実感できる検証ツールがベリカットです。

説明図
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★ ケーススタディ:放電後の追加加工にも対応できる

最近は、放電加工後に追加切削加工をするケースが増えており、放電加工後の形状が無いために追加切削加工の干渉チェックが正確に検証できず対応に困っていました。ベリカットを利用すると、放電加工の検証も標準で対応できるので、全ての加工工程を正確に検証することができました。

■事前検証から付加価値検証へ

説明図
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ベリカットは、材料モデルに対してNCデータを1行づつ削りながら検証するので正確な切削形状が確認できます。この確認した残り形状から形状の測定、断面の表示、切削形状のSTL出力、CADモデル形状(完成形状)と切削形状を重ね合わせて削り過ぎ、削り残しの比較検証、また、切削負荷、切粉の厚さなどを揃え、隅取り、コーナーR部や削り代の変化を検証中に随時検出し送り速度を算出、新たに送り速度のみ変更されたNCデータを出力でき、その結果、高品質、加工時間を向上させる最適化、タッチプローブ工具を用いたNCデータの動作検証など業務用途に応じた利用が可能です。このように削る前に検証し、さらに検証後の形状データを元に多様な情報分析までできます。

説明図
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説明図
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★ ケーススタディ:最適化で加工品質、加工時間の向上

2次元のポケット加工から3軸、5軸の複雑な加工も含め、ベリカットの最適化を利用すると、荒取りの加工時間が短縮され、仕上げでは加工面の品質が向上し、結果的に作業効率や工具寿命なども向上しました。

新バージョンでの追加機能

V6.2では、さらに便利な機能を追加し、100以上の機能に改善を行いました。今回はその中で特に注目する機能をご紹介します。

■新機能1:より高速に検証が可能に!(ツールパスプリチェック機能)

説明図

通常の検証シミュレーションは、切削材料を工具が削っていく過程でエラーチェックをしますが、プリチェック機能の場合は、完成形状(CADなどで作成したSTLモデル)を元にチェックを行うので、通常の検証シミュレーションよりさらに早く簡易検証が可能になります。(約5倍以上)

★ ケーススタディ:切削検証前の簡易検証で確認時間の短縮

治具などへの干渉や工具定義、オフセット定義のミスをプリチェック機能で素早く確認でき、作業効率が向上しました。

■新機能2:タップのシミュレーション

V6.2より、工具情報としてタップが登録できるので、ねじ穴の検証が可能になりました。たとえば、下穴加工を忘れたり、タップとのサイズが合わない、タップサイクルの送りとタップピッチが合わない、タップが下穴底面に当たるなどのエラーを検証できます。また、シミュレーション後の形状チェックでは、ねじ穴の情報の表示やエラーの原因の情報を確認できます。

説明図説明図
説明図
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★ケーススタディ:ねじ穴の検証ができ、より詳しく情報が取れる

ねじの加工が正しくできるか事前に分かり、さらに詳細情報を確認できます。

■新機能3:ウォータージェットのシミュレーション

説明図

工具情報としてウォータージェットのノズル部分が登録できるので、ウォータージェットのシミュレーションが可能になりました。

★ケーススタディ:6軸でのウォータージェット切断検証が可能

ベリカットで6軸のウォータージェットの検証が可能になり、事前に確認ができるので安心して無人稼動できます。

■新機能4:当たったら止まる動作を標準化

説明図

・G54用上面測定
・G55用手前側面測定
・G56用後ろ側面測定
変数に座標値を記憶、中間位置を算出し
最終的に原点を自動登録、加工実行

説明図

従来の切削動作の検証は、工具が材料に当たって削る機能がメインでしたが、V6.2では材料に何かが当たったら止まる機能(直線動作限定)を基本モジュールに追加しました。治具部品が材料に当たるまで自動で移動し、正確な治具位置での干渉検出が可能です。

また、プローブ動作の検証もできます。検証にはプローブ用NCデータが必要ですが、従来から使用可能なDO、IF、GOTO文や関数または変数を使用したNCマクロを利用し、プローブ動作の検証ができます。

特に機上計測用のプローブ動作を検証できるツールはベリカットだけです。

★ケーススタディ:機上測定の動作検証ができる

一部カスタマイズを実施して、止まった部分の測定点を計測し、変数に座標値を記憶させます。最終的にワーク座標原点を自動的に登録し加工を実行するので、自動化プログラムの検証、プローブの干渉も同時にでき、効率が向上しました。

■その他機能:

その他には、Gコードの構文をチェックするチェッカー機能、ベリカットの画面上で寸法を表示させ簡易的な図面を作成する機能、シーメンス、ハイデンハインなどのコントローラ機能の拡張、各種インターフェイスの強化など多くの項目を改善しました。

おわりに

ベリカットは、加工前のトラブルを未然に防ぎ、加工後の業務にも利用できる加工検証ツールです。
現在の環境で最適な機械稼動、品質向上を目指していただくためにもベリカットの機能をご利用ください。
これからもベリカットをよろしくお願いいたします。
ベリカットに関してのお問合せは、お気軽にNDES営業担当者までご連絡ください。