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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.53 お客様事例

フィアログループでEOSINTを活用し、
次世代への夢をかたちに

今年で創業70年をむかえるフィアログループ様は、試作モデルの開発で自動車産業の発展に貢献し、さまざまな製品開発に「木型職人の魂」をもって取り組まれてきました。株式会社フィアロコーポレーションを中心に、株式会社フィアロスペース、PHIARO,INCORPORATEDの3社から構成されるフィアログループは、常に独創的なものづくりに挑戦されています。今回は、EOSINT導入の背景や活用のお話などを、株式会社フィアロスペース 常務取締役 岩崎俊裕様、リードモデラー 松山乾司様にお伺いしました。

事業概要

【フィアログループの歴史】

フィアログループは、主に自動車・オートバイを中心とした工業製品の開発を行っています。

株式会社フィアロスペース 常務取締役 岩崎 俊裕 様
株式会社フィアロスペース
常務取締役
岩崎 俊裕 様

創業は1939年、「江戸川木型製作所」としてスタートしました。試作研究段階の自動車関連モデルの開発・製造に着手したのは、1953年頃からです。

1958年に「東京木型工業株式会社」として新たなスタートを切り、1967年に株式会社フィアロスペースの前身である日高工場を建設、自動車用原型モデル、亜鉛合金鋳造など多様な樹脂モデルの研究・開発を始めました。

1972年には新座市に本社を移転、1978年にNC加工システムの1号機を導入しました。当時このシステムを持っている会社はまだ少なく、自動車メーカから3次元システムによる設計の依頼を初めていただいたのもこの頃です。

1983年に狭山工場、1986年に栃木工場を建設しました。狭山工場はグループ最大規模の工場です。

そして、1988年に各種モデリングワークの需要に対応することを目的に「PHIARO,INC.」をアメリカに設立、翌1989年には製品デザインモデルの企画・開発・製造を目的に、「株式会社フィアロスペース」を設立しました。

1991年に社名を「株式会社フィアロコーポレーション」に変更し、さまざまなデザイン支援を始めました。

その後も、ショーカーなどお客様の機密管理のもとに車両開発を行えるよう、2000年に狭山工場内にスタジオ「ドルフィン」、2003年に栃木工場にスタジオ「ブライトン」、そしてフィアロスペース内にもスタジオを増築しました。

2007年にはフィアロコーポレーションの新社屋を建設、新たにデザイン部門を編成し、フィアログループとして、お客様の新製品の開発・設計・量産のための試作領域をトータルにサポートしています。

【フィアロスペースについて】

フィアログループの強みの一つは、グループで自動車1台全ての試作・開発を支援できることです。

フィアロコーポレーションでは主に自動車の骨格・ボディ設計、例えばドアやインパネなど比較的大きな部品の開発を行い、当社では艤装品に取り付ける小さな部品、例えばインパネであればメーター、ステアリング、オーディオ、ドアであればパワーウィンドウのスイッチ、ドアのハンドルなど、細かい部品に特化した開発を行っています。

当社の事業の大きな三つの柱は「ランプ」「自動車の内装部品」「シート」で、デザインモデルと設計・試作モデルを製作しています。ランプについては、ほとんどの国内メーカの試作を行っており、さまざまなお客様からご評価いただいています。全ての工程を内製化しており、塗装・メッキ・表皮の貼り込みなど製品の最終工程まで『最新の設備』と『熟練の手技』を組み合わせることで、世界レベルの製品品質を生み出しています。

ラピッドプロトタイピングの活用

【光造形の利用】

自動車メーカでは開発機種が非常に多く、国内だけでなくアメリカ、ヨーロッパ向けまで含むとかなりの種類になります。お客様から仕事の依頼をいただくのはありがたいのですが、開発の負荷が集中すると当社の対応範囲を超えてしまう程になりました。その解決策の一つとして、1998年頃から従来工作機で切削していた部分を光造形に置き換えることでスピード化につながらないか、検討を始めました。

また、だんだんとモデル形状が3次元化し、複雑になってきたことも検討理由の一つでした。ランプの開発が従来のバルブ式からプロジェクター式に変わると光源とレンズの距離関係の制約が緩和され、デザインの自由度が上がりました。そうなるとランプの「大型化」「3次元化」に対応するために、また、お客様の開発日程を守りきるためにも、光造形の活用は急務になりました。短期間でのプレビューモデル、主にモックアップの製品づくりに光造形は欠かせません。しかし、「変形」「耐久性」「強度」などの問題があり、逆に後工程の修正作業が発生することもたびたびありました。

【ショーカーの製作】

最初はお客様の社内検討用モデル作成のお手伝いでしたが、2003年頃から東京モーターショーなどのショーカー製作の依頼をいただくようになりました。ショーカーは一品物なので、すべてが「ゼロ」からのものづくりですし、普通車と異なり未来的なデザインや素材が求められます。また、機密性が高く当社にとっても初めての仕事でしたので、工場の一部を間仕切りし、毎日デザイナーと打ち合わせを行いました。最初はお客様との合作という形でしたが、現在ではほとんどの部分を内製化しています。東京モーターショーは2年ごとに開催され、2005年、2007年と当社は製作を続けており、今後も主力業務の一つとして継続していきたいと考えています。

【EOSINTの導入】

ショーカーの性能について、最初は、移動が可能であればお客様も十分満足されていたのですが、すぐに実際の走行を可能にしてほしいという要望が高くなってきました。部品の一部に光造形を利用していましたが、強度に問題があり、また、短期間の展示であれば光造形で十分なのですが、世界各地で展示する場合には2、3年の耐久性が求められました。

株式会社フィアロスペース リードモデラー 松山 乾司 様
株式会社フィアロスペース
リードモデラー
松山 乾司 様

実車化が進んでくると、メーカによって考えが異なり、モックアップの延長線上として製作してほしいという依頼や、実車と同じ方法で製作してほしいという依頼もありました。光造形をマスターにして注型で対応したり、納期に間に合わせるために協力メーカや外部メーカにも依頼しましたが、かなりコストと手間がかかる作業でした。

2005年頃に粉末造形を知り、光造形より強く耐久性があるとは聞いていましたが、"良い機械だが高価"という印象だけで、よくわかりませんでした。

最初に外部メーカに造形を依頼したのですが、納品された粉体モデルの品質は満足できるものではなく、現場からも「この品質では使えない」と怒られました。当社はものづくりの集団ですから、現場からの声を重視します。それからしばらくして、他工場で外部メーカに依頼した粉体モデルを見る機会があったのですが、自分達が以前に造形を依頼した時のモデルとは比較できない程、材料も造形品の品質も向上していました。粉末指定の依頼が短期間で急増しており、また、外部に依頼するコストを考えると、フィアログループとして設備投資し、今後の戦略に活かすことを考えました。

何社かの造形機を検討しましたが、現場で造形の技術をもつエンジニアの意見と、造形サイズが700mmまで可能であることを当社の強みにしようと、2008年2月にEOSINT P730を導入しました。

EOSINTの活用

【設計・製造ソリューション展への出展】

P70 EVolution 2008年 設計・製造ソリューション展に出展
P70 EVolution
2008年 設計・製造ソリューション展に出展

当社は、主に自動車メーカ向けの機密性の高い製品づくりを行っていたので、業界の中で知名度はあっても、世間一般での認知度は皆無でした。2005年の東京モーターショーに出展したことをきっかけに一般にも知られるようになると、営業に対する考え方が少しずつ変わり、もっとアピールが必要だと考えました。他の業界の方から自分達はどう見られているのか知りたいと思い、2008年6月、「設計・製造ソリューション展 東京」に出展しました。そこで他の業界の方と交流し、仕事につなげる目的もありました。

時代の流れを汲んで「電気自動車」をテーマに、デザイナーとどんなものを作ろうか、当社ならどんな提案ができるかと考えた結果、現代の肥大化した自動車から余分なものを削ぎ落とし、電気自動車でなければなしえない「かたち」をイメージしました。インホイールモーターをタイヤのホイールの中に組込むデザインです。

EOSINT P730稼動の様子
EOSINT P730稼動の様子

そして粉末造形でできる部分には全てEOSINTを活用しました。最終的に塗装して組み立てるので、どこにEOSINTを利用しているかわからないのですが、「粉末造形でここまで綺麗にできるんですね」と言われる精度にまで持っていきました。当社ブースには多くの方にご来場いただき、その後、メーカから粉末造形を指定した依頼がだんだんと増えてきました。

光造形での依頼と比較すると現在は逆転状態で、まさにEOSINTの導入は絶好のタイミングでした。

製品の写真
リアコンビハウジング、
ハイマウントランプ
製品の写真
ランプハウジング、
モーターカバー
製品の写真
インストルメントパネル周辺
製品の写真
ホイールキャップ
EOSINT P730を利用した造形

【粉末造形の利点を活かして】

導入時からお客様にどうアピールしようかという課題があり「大物が一体でできる」ことを売りにしたのですが、実際には依頼の半分以上が小物でした。

いろいろなお客様からそれぞれの納期で依頼をいただくのですが、最初は納期が異なるものを1台の機械で回していく難しさがありました。「高度な機械なのだから、高品質なものを造形して納品しよう」という思いがありましたが、お客様がそこまでの品質を求めていない場合もありました。

お客様もコスト削減を余儀なくされている中で、安く早く、お客様が求める最低限の強度と精度で対応していかなければ仕事にならない場合もあります。

材料配分の改善やパラメータの見直しも行い、現在ではどんな依頼にも柔軟に対応できるようになりました。

今はものづくりの手法として粉末造形を優先的な選択肢にすることが多くなり、造形機を止めることなく常に稼動しています。注型を利用することもほとんどなくなりました。複雑な形状だけではなく、ほぼ全ての依頼に粉末造形で対応しているので、仕事が集中して回らないくらいです。グループ内の他工場からの依頼にも利用していますが、現在は部品関係にしか利用しておらず、従来「型反転」して製作していたFRP部品などをEOSINTの利用により「型レス」で製作できないか検討しています。

機械(システム)は購入したら終わりではなく、購入してからの「人の手のかけ方」で成長していくものだと考えています。人がどれだけ手をかけられるかで、その価値は無限大に広がります。これは、フィアログループで導入している設備全てに対しての考え方です。

製品の写真 製品の写真
Velvety - colorマウス
製品の写真 製品の写真
急須

今後の展開について

【幅広い材料への対応】

自動車業界はいま大変な時代をむかえていますが、粉末造形の依頼は増えています。車のエンジン周りや風洞モデルなどの依頼も増えています。お客様の考え方も変わり、「粉末造形はいろいろなものに利用できる」ことが浸透してきたのだと思います。しかし、「次はもっと強いものを」と要望はだんだんと高くなります。

最近は材料指定をされる場合もあり、この材料選択が当社の課題になっています。もっとお客様にカーボン入り、アルミ入り、ガラス入りなどの複合材料を知っていただき、どう活用できるのか、こちらから提案していくことが必要です。そのためには現在のEOSINT P730 と、造形サイズが小型の機械で小物を効率よく製作し、様々な材料に対応できる体制にすることが理想だと考えています。

【フィアログループのさらなる挑戦】

今後は新しい素材の提案もしていきたいと考えています。自動車で培った技術をさまざまな分野に活かしたいと、日常用品のデザインをEOSINTで製作することも行っています。車の家電化が進む中で、既存の自動車デザインにとらわれず、メーカへ逆提案ができるモデル提案をしたいと考えています。

そして、「独創性を伸ばす」ことの一つとして、日本人にしかできないきめ細かく配慮のいき届いたものづくりをしていきたいと考えています。

NDESへ

この約1年間、EOSINTがうまく運用できているのはEOS社とNDESのおかげだと思います。

EOSINTのユーザからすれば、材料は命でもあります。光造形でも同様だったのですが、メーカによってマシンが違うと材料も違い、その値段も違います。材料だけは、メーカの枠を超えた開発を目指してほしいと思います。世界共通の材料を粉末造形の世界で確立できれば、もっと可能性が広がります。

また、ラピッドプロトタイピング自体はかなり浸透してきたと思うのですが、粉末造形については今以上にアピールが必要だと思います。今後も今までのように、技術的なコミュニケーションが活発に行われることを希望します。フィアログループとNDES、EOS社が企業の枠を越えて社会貢献する明るい未来を創造したいですね。

おわりに

岩崎常務は小学生の時に交通事故にあい、大けがをされた経験をお持ちです。その経験から、EOS社も参加する医療プロジェクトの1つである義足の造形に取り組みたいと考えているそうです。「自動車とは違う方向から社会貢献があってもいいと思うのです」という言葉に、ものづくりの技術はさまざまな分野に広がっていることを実感しました。大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

社屋
社屋
所在地 〒350-1224 埼玉県日高市田木436-1
設立 1989年4月
資本金 1,000万円
従業員 50名
業務内容 自動車・オートバイを中心とした工業製品の開発業務全般。ランプ・シート・自動車内装部品等の設計・デザインモデル及び試作品製作他

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