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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.55 システム紹介

EOSINTリポート

はじめに

EOS社の金属積層造形装置の最新機種である「EOSINT M 270」を例にDMLS(Direct MetalLaser Sintering)=金属の直接造形技術の最新状況をご紹介します。

DMLS第二世代

「EOS社のDMLS技術は1995年の第一世代となる「EOSINT M 250」の発売以来、材料、装置ともに改良が繰り返され、着実に進歩しています。

2004年には現行システムである「EOSINT M 270」が発売されました。M270で使用されるイットリビウムファイバーレーザ(波長10680μm)は、ビーム径を0.1mmまで絞り込めるため細部の表現力が向上し、表面粗度も向上しています。また可変スポット径の採用によりプロセスの最適化が図られ、高速リコータの採用と相まって造形速度が従来比30%向上しています。M270の登場以後、ステンレスやコバルトクロムといった一般的な工業素材をDMLS材料として適用するための材料開発が進められてきました。また、新材料の開発に伴いDMLSのプロセスもレーザ焼結から溶融へと進化し、造形物の機械特性を大きく向上させることになりました。材料に一般工業素材を採用した背景には、イットリビウムファイバーレーザの搭載や循環式抽気装置の採用等プロセスの改良により技術的に実現可能になったことと、欧米を中心にDMLS装置を最終製品の製造に適用するRM(Rapid Manufacturing)の流れが加速してきたことがあげられます。RMにDMLSを適用する場合、鋳造や機械加工等の従来工法との置き換えであることが多く、その場合、DMLSの造形品に対し従来工法で使用してきた材料と同様または限りなくそれに近い物性を求められます。また、それを最終製品として使用するには、定められた品質基準をクリアする必要があり、DMLS専用材料よりも一般工業素材を用いる方が物性テスト等による信頼性の証明、認証取得等にかかるコスト、労力を省力化でき、従来工法との置き換えがスムーズに行えるからです。そういった市場の要求に応える形で材料、装置の開発と改良が進められており、DMLSの応用範囲は拡大しています。

DMLS材料

DMLSには現在パイロットフェーズの材料も含め、10種類の材料がラインナップされています。

【DMLS専用材料】

DirectMetal20(DM20)は、ブロンズニッケルベースの混合粉末です。試作金型としての強度を残しながら、パーツ内部を多孔性の構造体とするスキン/コア造形法により完全溶融させる場合よりも早い造形スピードを実現しています。代表的な適用例としては、数千ショット程度の射出成形金型、インサート、機能試作部品等です。

【ステンレス鋼】

現在DMLS材料としてラインナップされているステンレスは、析出硬化系に属す17-4ステンレス(EOSStainless Steel GP1)と15-5ステンレス(EOSStainless Steel PH1)です。GP1の造形物は、降伏強さおよび硬度はそれほど高くありませんが、引っ張り強度[約1000MPa]、伸び率[約25%]と高い値です。
一方PH1は、造形状態での降伏強さ[約1025MPa]、硬度[30-35HRC]を達成し、H900相当の熱処理により降伏強さ[約1300MPa]、硬度[40-45HRC]が可能です。機能試作部品、オーダメイドの少量生産品や医療器具等の工業製品の生産に適用されています。

【構造用鋼/金型鋼】

このカテゴリには、DMLS材料としては超強力鋼であるマルエージング鋼が用意されています。マルエージング鋼(EOS Maraging Steel MS1)は、高い強度と優れた靭性を兼ね備えた鋼であり、DMLSでの造形品も同様の特徴を持ちます。また簡単な時効硬化処理により引っ張り強度[1900MPa]、硬度[約55HRC]を達成します。DMLSでは、材料特性を活かし、量産用インジェクション金型およびダイキャスト金型(アルミニウム等の軽合金)やインサート、工業分野の金属部品の製作に幅広く適用されています。射出成形金型で100万ショット、アルミダイキャスト金型で18万ショットの実績が報告されています。

【超合金】

DMLS材料としてコバルトクロム合金(EOS CobaltChrome MP1/SP2)とインコネル(EOS 718 Alloy)が用意されています。MP1およびSP2はコバルトクロムモリブデンベースの超合金であり、最大引っ張り強度[1150MPa]、硬度[35-45HRC]、耐熱温度[1150℃]を実現し、疲労試験では繰り返し周波数45Hz、繰り返し応力範囲0-440MPaの条件において1,000万回を達成しています。医療分野ではインプラント、工業分野ではタービンブレード等の強度と耐熱性が求められる分野に適用されています。SP2は歯科専用材料です。熱膨張係数(CTE値)がベニアリング材(セラミック)にマッチするよう最適化された材料であり、歯科用材料としてISO13485の認証とCEマークを取得しています。

インコネルは耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性に優れた材料ですが、難削性が高くDMLSでの造形は機械加工に対し大きなアドバンテージを有します。
現在この材料はパイロットフェーズですが近い時期に上市予定です。同時にNi基のハステロイX、インコネル625も現在パイロットフェーズに移行しユーザによるテストが実施されています。

【軽合金】

Ti6AlV4合金であるEOS Titanium Ti64を商品化しました。この材料の特徴は、高い機械特性と耐蝕性を備え、比重が軽く生体適合性が良いことです。DMLSの造形品は、鍛造部品と比較すると伸びが若干劣りますが、強度、硬度は上回っています。代表的な適用分野としては、航空宇宙、自動車レースのエンジン部品や医科歯科分野でのインプラント等があげられます。

またELIバージョンのTi6AlV4、純チタン材料も用意されています。

レーザ溶融加工された材料と一般的な工業素材との違い

鋳造や機械加工で使用される一般工業素材をDMLS材料として用いた場合でも、その製法の違いから造形物の機械特性は同じにはなりません。鋳造のTi64と鍛造のTi64では機械特性は異なるのと同様にDMLSでも従来工法とは異なった特性となります。DMLSの活用には、従来工法に対しての違いを把握し、目的とするアプリケーションに対しての適用可否を検証することが重要となります。

RM(Rapid Manufacturing)の現状

全世界でRP装置ユーザの20%が既にRMに着手しており、実績は増加を続けています。特にレーザーシンタリングRPの用途においては顕著です。その背景には前述したように、造形物の機械特性、経時的な安定性の高さや、材料選択の幅の広さといった他のRP技術に対する優位性があげられます。製作に複雑な工程を必要とする多品種少量生産品やインプラント、メディカルデバイス等の患者個人に適したオーダメイド品の生産といったアプリケーションが典型的なRMの適用例といえますが、RPの特徴である「デザイン・設計の自由度」を活かし、今まで一体で作れなかった形状や部品で構成されていたユニットを多機能な一つの部品に置き換え、工数、コストを低減する取り組みも活発化しており、RMに適した新しい設計思想についての継続した研究が行われています。

RM の課題と今後

課題として、まず材料種類が少ないことがあげられますが、これは、ここ数年で大きく改善されてきており、今後も選択の幅は拡大していきます。もうひとつは、生産設備としての成熟度です。RMとして機能させるには、高いレベルの再現性、品質管理、生産能力、信頼性などが必要です。材料が進化し、装置の開発が進み、試験基準、規格が確立されるに従いこれらも改善されるでしょう。もうひとつRMの考え方があります。日本ではRPに対し既存工法と1対1での完全な置き換えを求める傾向があります。一方RP/RM先進国の欧米では、DMLSは既存工法とはプロセスが異なる技術として認識され、設計段階から長所を引き出し、短所を他の技術でカバーするような取り組みが行われています。あくまでも道具、工法の選択肢のひとつという扱いです。これが多くのRM実績を生んでいます。

RMには多くの制約や越えるべき壁がありますが、一方で、新たな生産技術としての十分な利点があります。柔軟な姿勢で取り組めば、RMはより身近な生産技術となって、今までになかった製品を生みだす、または、今存在するものづくりの壁を突破する、革新的な道具になりえます。

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