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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.55 社長インタビュー

井上模型のファンに
―嫌な難しい仕事ほどチャンス―

NDES 代表取締役社長 渡辺 雅治
NDES
代表取締役社長
渡辺 雅治

渡辺 井上模型様には、昭和62年にGRADE/G-NCを導入いただいてから20年来のお付き合いになります。

御社は特に難しい形状を切削するような試作品を得意とされていますね。本日は、井上社長、井上常務に御社の事業や経営方針についてお話をお伺いしたいと思います。

井上模型製作所の事業

井上 昭和46年に、大阪市北区本庄西で井上模型製作所を創業しました。昭和56年に、業容の拡大にともない、ここ大阪市北区池田町に移転してきました。平成11年11月には、大阪市北区本庄西に北工場を建設し、本社工場と北工場と2拠点になります。

創業以来、樹脂加工をはじめとした数多くのワーキングモデル・デザインモデルを製作してまいりました。家電、自動車、半導体、航空機、宇宙開発、ホビー製品などの分野で3次元CAD/CAM(NDESのSpace-E)を駆使した切削試作品(樹脂、アルミ、真鍮)を得意としています。

製品の写真
製品の写真
製品の写真

マシニングセンターや複合旋盤を使った部品加工もありますが、約95%が試作品です。
主な製品としましては、深型のホットプレート。メーカーでは、お鍋に基板などを入れて実験してみて、おいしいお鍋ができるか、新しい機能がうまく働くかというようなことを実験されます。

ガスバーナーのコンロの部分は、一酸化炭素中毒など大変問題になりますので、これもシミュレーションだけではなく、実機で何ヵ月か燃やし続けるというような実験をされています。実験をしないとどうしようもないというところのお手伝いをさせていただいています。

アナログなものの例としては、ブラックバス用のルアーです。頭が大きい形のものや小さい形のものなどを作って、本当に釣りに行かれて、たくさん釣れたルアーを量産されます。硬いイメージがありますが、ホビー製品や人工衛星の部品など、ありとあらゆる分野の試作品を作っています。

独自の技術を確立

製品の写真

井上 送風機の羽の例ですが、送風機といえば送風力ですね。この羽は切削加工だけで削りだせばいいのであれば、どこでもできますが、これは切削加工の技術だけでは難しいのです。切りぬいて、曲げて、はめ合わせて、納める、ということが必要なのです。

普通はプレス屋さんの仕事ですが、羽を曲げるだけでもすごく大きなプレス型が必要になります。当社の場合は樹脂から始まっていますので、アルミを曲げるのであれば樹脂型でいけるなと感覚的なものでわかります。3次元の曲げ型を作れる技術と型を安く作れる技術とを融合しています。

また別の部分では、普通はプレス型を使うところを、切削でやってしまいます。この羽が簡単に2日でできるという技術を確立させています。この技術を確立させるのにはすごく苦労をしました。

お客様にはすごく重宝していただいていて、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、形を変えては試作品の実験のお手伝いをしています。

【面倒な仕事こそビジネスチャンス】

井上 最近の傾向だと思うのですが、図面をもらったときに、すごく面倒な、ああ嫌だなと思う仕事にこそ、ビジネスチャンスがあります。やりやすい仕事は、その時は利益が上がっても、その仕事がなくなったときに技術が蓄積できていないのです。

製品の写真

仕事がなくなって何かに転用しようとしても、もう簡単なことしかできない技術になってしまいます。面倒な嫌な仕事を大事にしてやっていきたいと思っています。得意なものとしては難形状の加工です。ここに特化しようと思っています。樹脂加工モデルから出発していますので、3次元面張り能力には自信があります。形状が難しくて3次元データーが作れない、 加工ができない"複雑形状"こそ、当社の得意分野です。

【5軸加工が柱】

井上 現在5軸加工に特に力を入れて業務を展開しており、5軸加工機が5台あります。最近でこそ試作屋さんにも5軸加工機は多少入りつつありますが、試作というのは、いつ仕事が来るかわからないので、3軸加工機の2~3倍もする5軸加工機は、儲かりそうにないからと入れないですね。決して儲かる機械ではないのですが、みんなが嫌がるもので、5軸で切削ができるということがクローズアップされてアピールになっています。3軸でもできるものなのに、これは5軸だからと仕事をいただいたりします。5軸という切り口がなかったら最近は営業しにくかっただろうと思います。5軸があるから3軸の仕事もうまく回ってきているというのが大きいですね。

【14人に21台のCAD/CAM】

井上 試作業で一番大事なものは何かというと納期対応だと思っています。当社のような規模の会社なら普通はCADが3台ぐらいだと思います。どうすれば早くできるか追及していった結果が、14人の作業者に21台のCAD/CAMです。

他社が5時間で作るものを、井上なら3時間でできますというのは、このレベルの高い加工業界の中で無理だと思います。ただ、事務所で図面の眠っている時間が結構長いのです。14人いると誰かが図面にかかれるわけです。ボトムネックを作らないようにしようという方針です。

CADのイメージ

CADの中でこれが一番いいというのはないと思っています。ここがよかったらあっちがちょっと、それぞれのCADで得手不得手があります。計算させながらシミュレーションをかけながら、使っています。

また、技術力の向上のために人材育成にも力を入れています。先輩が5軸の機械を使っていると、若い人たちも使いたいのです。でもCADが3台しかないと使える可能性が全くないのです。高いけれども頑張るのであれば買って一人前の人間に育てたいという教育方針です。各自が技術追求をよくしています。ものすごく頑張ってすぐに伸びてくる社員もいます。

納期が重要

井上 納期という点では、事務所で図面が眠っている無駄を排除して、その結果、他社よりも納期が早いと言っていただけます。

渡辺 他社よりも納期が短いというのは、すべての工程の中でどの部分が一番生産性がいいのでしょうか。

【納期は見積りから】

井上 一番早いのは営業です。納期は見積りから始まっているということをみんなに徹底しています。他社が1日かかって見積りしているところを、10分で見積りが出せれば、それだけで1日納期が早まります。納期は見積りからというのが一番の特長です。そして受注になった段階から仕事にかかるまでの早さです。ここは工夫で詰めることができるのです。

【同じレベルのことができる機械を揃える】

渡辺 仕事にかかるまでの早さには、設備の状態も人のアサインもいろんな要素がありますね。

井上 なるべく共通化できるような機械の体制を取っています。あまり機械個別のことを考えなくてもプログラムできるということです。Aの機械専用のプログラムを作らなければいけないというとAの機械が空くまで待たなければならないのです。少しはありますけれども、あまり機械専用のプログラムを作らなくてもいいので、同じレベルのことができる機械を数多く揃えているということです。

渡辺 準備の期間ですね。

井上 そうですね。実際そこに結構時間がかかっているのです。他社の人材よりも当社が優れているかというと、よくて同じだと思います。頑張ってやる気にさせるようなエッセンスはあると思うのですが、決して特別な人材ばかりがいるわけではありません。ここは工夫をしているところです。

設備も納期を早くするというところに効いてくるのですが、通常の試作屋さんが持っているよりも少し高い機械を設備しています。他社が1/100 の精度なら、当社はその1/100の精度は普通に出せる。本気になったら、3/1000、5/1000という精度を追える。切削加工として流通している2/100、3/100、多少高精度といわれるような加工を、苦労せずにできる機械を入れていることによって、仕事が早くできるというのもあります。苦労するということはすごく納期がかかる理由になります。苦労しなくてもいいように機械を設備しています。

5軸加工 試作で24時間加工に

井上 丸物には複合旋盤が必要です。旋盤だけ、マシニングだけでは、なかなか効率が上がらないので、5軸の複合旋盤を入れています。旋盤からマシニングに乗せ換えたトータル時間との勝負になりますので、工程集約ができます。この機械を入れたときに、「心配しなくても2台目を買うことになりますから」と言われましたが、やはり2台目を買うことになりました。

最近力を入れているのはAPC付き5軸マシニングセンターです。5軸は、加工前にすべての面の検証をしますから、加工が始まるまでに時間がかかります。全然進んでない、何やってるの、これでは使えないと言って5軸を諦められる会社さんも多かったりします。それを解消するためにパレットチェンジャーを設備しています。パレットチェンジャーというのは、同じ仕事があった時に入れ替えてどんどん量産していくのに向いていると思うのですが、作業台がたくさんあるということは、何人もで段取りができるということです。Aくんは1の作業台、Bくんは2の作業台と、昼間はセッティングの時間に使っています。夜機械にかけて帰り、朝来たら全部でき上がっているというのが理想です。このことを絶えず言っています。

5軸を使える社員も5人います。特に金曜日の夜は月曜の朝まで人が休んでいる間に機械が稼いでくれると最高ですから、そのような指導をしています。これも納期の短縮につながります。

そういう点ではコスト的なメリットも出てきます。あえて試作で24時間加工にどれだけ近づけるか、というところが今後のカギだと思います。

NDESに紹介してもらった加工シミュレーションソフトは、最近よく使っています。これはものすごく役立っています。夜遅くになってプログラムができ上がって、それから実機で検証しなければならないと、明日機械にかけようということになります。でもシミュレーションでお墨付きをもらうと、機械にかけて帰ることができます。これはすごく役立っています。計算時間がもう少し早ければいいのになという希望はありますが、すごく重宝して使っています。

すべての製品に品質保証

井上 自動車関連や関東方面の企業では当たり前ですが、出荷検査をすごく大事にしていまして、すべての製品に品質保証をして出荷しています。

【徹底した温度管理】

会社の写真

工場の取組みとしましては、24時間1年中ある程度の温度管理を実現しています。加工精度は、朝や夕方の気温が低いときと日中とでは、素材の伸び縮みなどで1/100 ミリずつズレが生じます。そういうことを起こさないためにも、温度管理を徹底しています。リピートの仕事があった場合に、温度管理ができていないと、夏と冬でプログラムを組みなおさなくてはならず、コストアップの要因になります。今日は暑いからZを上げ気味
に加工しようかと、より仕事が難しくなって、職人技が必要になってしまいます。

会社でできることはやって不安要素をつぶしておこうということです。納期は最速を目指しています。高品質は当たり前で、感謝を持ってお客様に対応しています。是非、井上模型のファンになっていただきたい、また仕事をお願いしたいと思っていただける会社、そういう思いです。

高品質

渡辺 納期というキーワードをお伺いしましたが、高品質というキーワードについて、どのような取組みをされているでしょうか。

井上 すごく感覚的な部分になります。お客様によっては、試作品で社内プレゼンテーションを行われますから、試作品の出来栄えによっては、設計者の方の思いが日の目を見ない可能性もあります。美術的な要素も強くあるのです。

図面の精度は守って当たり前、そういうところで差別化はできません。ただぱっと見たときに、「いいね、しゃきっとしてるね」というこだわりが、設計者の方の役に立ち、また仕事を出したいと思っていただけます。

渡辺 見た目がいいという、その要因は何ですか。

井上 やはりパスの出し方ですね。削れたらいいのではなくて、削り方、パスの出し方です。出たパスが気に入らないとそのCAM は使えません。どこかにこだわりがあるとしたら、こういう部分かもしれません。他社のものと自分のところのものを比べると、よくわかります。加工物を見ると、そこにこだわりを持ってパスを出されているかどうか、よくわかります。時間をかけるということとは違います。

これからの課題

渡辺 ご苦労されていること、経営、人、いろんな要素あると思いますが、現状の課題にはどのようなことがありますか。

井上 市販の機械で市販のCADを使っていますし、昔と違って今は、機械の性能が良く、どこも同じような設備を使っているので、技術レベルではそれほど優位性を保てない時代になっています。

渡辺 技術だけでは差別化するのが難しいということですね。

井上 1979年にマシニングを導入したのですが、その頃は試作屋さんにはマシニングがなかった時代でしたし、しかもいきなり3次元の自動プロでやりましたので、絶対的な優位性を感じていました。価格にしても技術にしても他社には負けないという自負はありました。でも今は、当社ができるものは他社もできる、という気持ちで取り組まないと絶対に負けますね。油断とか驕りがあるとすぐにダメになります。

そこをずっと進歩させていくには、ひとつは従業員の技術的な教育です。

工程ごとに担当者を置くのではなく、最初から最後まですべての工程を一人でこなす体制を整えています。技術者が全体の工程を把握しながらそれぞれの作業を行いますので、結果的に技術力が向上していきます。担当する仕事により、個人のレベルに差が出てきてしまいますので、みんなの技術を混ぜ合わせて一番いいものを選択していけると、簡単にもっと早く楽にみんなが稼げるようになるのですが、目の前の仕事に追われているので、なかなかできません。最高の技術を集めてみんなに分配していくというようなことを考えていきたいと思っています。

今年の状況

渡辺 1月から3月、4月から6月、7月以降の状況というのはいかがですか。

井上 2月までは「不況か?」と思っていました。3月は、ちょっと仕事が減ったかなあ。4月5月は、ああみんなこういう状況なんだ大変なんだと。受注も少なかったです。ちょうどこのときを狙って本社の1階の工場を改装しました。仕事が多い時はお客様に迷惑をかけるので改装はできないですから、5月に本社の1階を掘りなおして次の手を打てるように改装しました。6月7月は良かったです。回復しましたね。

メーカーさんはお盆休みが明けたらすぐに実験したいというニーズが多いので、試作業というのは、お盆の前はめちゃくちゃ忙しいのです。でも今年は普通で、やはり案件数が少ないですね。

ただ医療の分野やスポーツな分野など、ユニークな開発をされているところもあります。最近はいいなと思ったものには個人の方もお金をかけますし、いらないものはタダでもいらないという、安ければいいという時代ではありません。面白いところに目を向けられている会社、これは会社が元気な証拠ですから、そういう元気な会社さんとお付き合いできるということが光栄ですね。パワーもいただけますし、発想も柔らかいです。

NDESに期待するところ

井上 今の世の中は会社の統廃合が激しいですから、製造業でもITをどう使うかによって、その会社の未来や業績などが決まってくるぐらい重要なツールになりましたし、逆にそれを使わないようなやり方では今の競争の中では絶対に無理ですね。

私が最初にGRADEを使い始めたときは、面を張ってパスを出すだけでしたが、それに関係したいろんな使い方が増えてきましたね。

渡辺 GRADE時代から長い間弊社とお付き合いいただきましてありがとうございます。

井上 おかげさまで、一番最初に触れたCAD/CAMとしては運が良かったと言いますか、どんな機械にしてもシステムにしても最初に触れたものがいいか悪いかによってその後が決まってきます。

ディーラーさんが、ただ売ればいいというディーラーさんなのか、本当にその会社のことを考えた提案をしてくれるディーラーさんなのか、そこで紹介されたシステムがいいか悪いかもある程度運です。

そういう意味では運がよかったと思っています。日本で独立系のCADメーカーさんは、ほとんどなくなってしまいましたからね。NDESは完成度の高いシステムを作られているので、我々としてもそういう意味ではよかったなと思っております。

欧米で活躍しているCADは、大きなシステムが組めるとか、難なく設計できるという意味ではそれなりの実績があると思うのですが、どうしても大手企業が相手で、我々のような小さな会社が使おうとすると経済的にも無理がありますし、長年使ってきたシステムを捨ててまでというのはリスクがあります。

CADは相棒みたいなものですし、どのCADがいいと言う前に、どれだけ使いこなせるかということの方が重要です。そこはそこそこの性能のあるものを長い間使うというのが、一番その会社に効果をもたらすと思います。

渡辺 グローバルに製品設計をしているとCATIAが必要だと思います。私どももCATIA上で動くSpace-E V5という製品を出しています。

井上 そういう意味では私たちから見てもCATIAと連携されているのは間違いではなかったと思っています。世界的にトップのメーカーと組むというメリットはあると思います。

渡辺 GRADEの世界の延長ではSpace-Eを多くのお客様に使っていただいてますので、徹底して改良に取組んでいきたいと考えています。
本日は、お忙しいところを本当にありがとうございました。

会社プロフィール

会社の写真
創業 昭和46年11月
本社 大阪市北区池田町1-43
北工場 大阪市北区本庄西3-5-3
社員数 20名
業務内容 ・樹脂加工をはじめとした数多くのワーキングモデル・デザインモデルの製作
・5軸加工を柱とするアルミ・亜鉛・真鍮などの金属の切削