人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.56 | システム紹介
Space-Eの有効活用「電極設計の効率化」
PLM事業本部 営業統括部 東日本営業部
東日本技術サポートグループ 加藤 孝一

はじめに

電極設計において「放電範囲の検討」は、設計者の経験や判断が必要になる重要な要素です。ここでは、現在一般的に行われている手法における課題を改善するために、Space-E/Modelerを利用した電極設計プロセスの一部をご紹介します。
まず、一般的な「放電範囲の検討」の手法を以下にあげます。

画面イメージ
CADの場合
画面イメージ
CAMの場合

1. CADの場合:フィレット面
最終加工Rと同じ半径のフィレット面を作成し、作成できた部分を放電範囲とする。

2. CAMの場合:加工シミュレーション
切削経路による加工シミュレーションで、削り残りを
色分布で検出し放電範囲とする。

3. 現場の場合:加工後、切削面を見て検討
実加工後に図面と金型を見て、仕上がりと削り残りから放電範囲を決定する。

現在の手法から見えてくる課題

フィレット面による放電範囲の抽出は、操作が手動になるため時間がかかり、見落としもあると考えられます。
加工シミュレーションによる放電範囲の抽出は、被放電物のCAM工程の後に電極設計を行うため、既に先行した切削済みの金型がある場合、"電極待ち"の状態になり、作業工程の自由度が少なくなります。

実加工後の放電範囲の判断は、経験豊富なベテランの方が行われますが、それでも放電範囲の見落としを防止できない場合もあると思います。また、ベテランの方が不在の場合、作業効率は確実に低下します。

電極設計を見直してみませんか

現在の手法の課題を解決するために、電極設計のプロセスの中でSpace-E/Modelerを利用した「放電範囲の抽出」、「放電部の寸法検討」、「電極台の検討」をご紹介します。

期待できるメリットとして、以下があげられます。

1.電極設計の工数削減
放電範囲を短時間で計算させることができます。

2.放電部位の見落とし防止
簡単な設定や操作で、分かりやすい結果が表示できるので、放電部位の見落としを防止できます。

3.放電加工工程の前倒し
設計段階で放電範囲を抽出できるので、他の工程を待つことなく電極設計ができます。これにより、全体の工期短縮も期待できます。

削り残し領域計算

ここでポイントとなる機能の「削り残し領域計算」です。

画面イメージ

「削り残し領域計算」

最終工具の工具長や工具径を指定することで、その工具で削り残る領域を、サーフェイス・ソリッドの混在モデルから、簡易かつ高速に検索して表示できます。

加工工程のツーリングの検討や、アンダーカット部から入れ子の割り検討などに活用が可能です。

電極設計プロセス

では、Space-E/Modelerの操作をご説明します。

■プロセス1. 放電範囲の抽出

画面イメージ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

「削り残し領域計算」で最終加工の工具形状と寸法、計算精度を入力し、対象モデルを選択すると計算が始まり、結果がエッジとして作成されます。

一般的なフィレット面による放電範囲の抽出では、ボールエンドミルの先端のみになりますが、「削り残し領域計算」ならホルダ径を入力することで干渉チェックができるため、実際のツーリングに近い条件の放電範囲が簡単に抽出できます。

■プロセス2. 放電部の寸法検討

画面イメージ

抽出した放電範囲から電極の放電部分の外形寸法を検討する場合、以下のケースが考えられます。

・領域から一定オフセットで取るケース
・領域からキリのいい座標で取るケース

今回は「領域からキリのいい座標で取る場合」で検討しました。
ここでは、「ワークプレーンモード」機能を使います。

電極の基準となるZ平面上にワークプレーンを設定し、その上で外形を作成します。表示されるグリッドの間隔を電極の寸法間隔に合わせておきます。
グリッド上に作図すれば、近いグリッドにオートで線が引けるので簡単にキリのいい座標位置で電極の外形が作成できます。必要に応じてモデルのエッジなども投影し、領域を閉じれば外形が完成します。

■プロセス3. 電極台の検討

画面イメージ

Space-Eには「電極(指示図出力)(ELEC)」がありますが、ここでは「カタログパネル」と「ワークプレーンモード」の使用例をご紹介します。

「電極(指示図出力)(ELEC)」と比べると、次のメリットがあげられます。

・電極台の形状がブロック、円柱以外でも登録、運用が可能です。
・電極基準位置を土台の側面にする場合、キリのいい基準位置を簡単、確実に設定できます。

あらかじめカタログパネルにサイズを標準化した電極台モデルを複数パターン登録しておきます。電極台の基準端面は左上隅とし、モデル配置原点と一致させました。基準のカドを面取りした基準マークも設けます。この電極台をワークプレーンモード上のグリッドにドラッグ&ドロップすることで、電極基準の座標点と電極台サイズの検討が簡単かつ確実に行えます。放電対象形状と電極台が干渉する場合、カタログパネルから配置したモデルを再配置するコマンドを使えば、いつでも簡単に電極台の位置が調整できます。

おわりに

今回ご紹介しました操作のようにSpace-Eは、コマンドの組み合わせ次第で作業効率をアップできる可能性を持っています。NDESは、今後も金型設計に特化した機能追加や改善はもちろん、お客様のご要望に沿った運用をご提案し、Space-Eがいっそう身近で信頼されるツールになるよう取り組みます。

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