人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.58 | システム紹介
3次元測定機オフラインティーチングツール
NX-CMM Inspection Programming のご紹介
PLM事業本部 営業統括部 営業企画部
生産技術システムグループ 酒井 康裕

はじめに

現在、設計部門では、3Dモデル中に製品製造情報(Product and Manufacturing Information:以降PMI)を記入し、すべてを集約できる3D図面になりつつあります。この3D図面を利用することで、製品を測定する場合、“図面レス”で行うことも実現できるようになります。しかし現状では、このPMIを読み取り、測定プログラムに反映するツールがないため、3Dデータから2D図面を出力し、その2D図面を見ながら、測定要素や公差情報を測定機やオフラインティーチングツールへ入力しており、これらの作業に大変な時間を費やしています。このため、測定部門では、この“図面レス”に対応することが課題となっていました。

この度、この問題を解決できる3次元測定機のオフラインティーチングツール“NX-CMMInspectionProgramming(以降NX-CMM-IP)”が販売開始となりました。

NX-CMM-IPの特長は、製品データに記入されたPMIから公差情報を含んだ測定プログラムを作成できることです。これにより、測定要素や公差情報を設定するための作業時間を大幅に削減できます。

また、設計部門で付加したPMIを元に、測定部門で製品を測定するプログラムが作成できるため、設計者と測定者の間で公差に対する相違がなくなります。

次に「NX-CMM-IP」の詳細をご説明します。

NX-CMM-IP の詳細について

図1 オフラインティーチング NX-CMM-IP
図1
オフラインティーチング NX-CMM-IP

NX-CMM-IPは、Unigraphics/NX(以降UG-NX)上で動作します。製品を測定するプログラムを作成するには、まずUG-NXに測定対象である製品のデータと3次元測定機やプローブなどのデータを表示させます。次にNX-CMM-IPに切り替えて、測定プログラムを作成します。(図1)

■製品製造情報(PMI)の自動取り込み

図2 3次元モデル空間のPMI(左)PMI自動取込コマンド(右)
図2
3次元モデル空間のPMI(左)
PMI自動取込コマンド(右)

PMIは、3次元モデルの空間に図2左のような公差情報で表現されます。「PMIへのリンク」コマンド(図2右)を実行することで、このPMIを測定要素と公差情報に変換し、NX-CMM-IPに取り込みます。この取り込まれた情報を元に、オペレータは、各測定要素に測定方法を指示し、測定プログラムを作成します。

■測定要素の追加

図3 追加できる測定要素
図3 追加できる測定要素

前述のPMIの自動取り込みだけでなく、測定する要素を追加することもできます。追加できる要素は、点・平面・円筒・サーフェスなどがあります(図3)。
これにより、さまざまな測定プログラムが作成できます。

■公差情報の追加

図4 追加できる公差情報
図4 追加できる公差情報

測定する公差情報を追加することもできます。追加できる公差情報は、幅・間の角度・座標公差・直径などの“寸法公差”と、平面度・位置・面の輪郭度公差などの“幾何公差”があります(図4)。

図5 データム付き公差情報とデータム(赤枠)
図5 データム付き公差情報とデータム(赤枠)

また、データム付き幾何公差(図5)も追加できます。データムとは、公差範囲を表すときの基準のことです。(図5赤枠)

■測定パスの作成とシミュレーション

図6 各測定要素の測定方法(左)/円筒の測定方法(右)
図6 各測定要素の測定方法(左)/円筒の測定方法(右)

平面や円筒など、測定要素の形状ごとに設定された測定方法(図6)に従って、例えば、円筒は高さを断面の数で3箇所、一箇所当たり4点、合計12点で計測するという測定パスを自動的に作成できます。また、各測定要素形状のどの位置を測定するのかを、マウスで指示することもできます。

図7 シミュレーション
図7 シミュレーション

オペレータは、シミュレーションで製品とプローブとの干渉の有無を見ながら、作成した測定パスの動きをPC上で確認できます。もし、干渉を見つけた場合は、回避するように測定パスを修正できるので、干渉していない測定プログラムを作成できます。

■自動干渉回避パスの作成

次期バージョンでは、自動的にプローブと製品が干渉しない測定パスを作成する機能を搭載する予定です。

■測定プログラム出力

NX-CMM-IPから出力できる測定プログラムは、3次元測定機で幅広く採用されているDMISフォーマットです。さらに、カスタマイズ可能なポストプロセッサ方式を採用しているので、さまざまな測定機メーカのプログラム出力に対応できます。また、オプションとして測定プログラム実行ソフト”CMM InspectionExecution”があります。NX-CMM-IPから出力された測定プログラムを”CMM Inspection Execution”で実行することで、データム付き幾何公差(図5)を評価することもできます。

おわりに

このNX-CMM-IPは、3次元測定機をご使用いただいているお客様の品質部門に対して効率アップを図れる製品です。ここではご紹介できなかった機能もありますので、お気軽にお問い合わせください。

最後に、株式会社ミツトヨ様と共同で、7~9月に「検査工程自動化と品質管理セミナー」を開催します。
ご関心をお持ちのお客様は、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。

検査工程自動化と品質管理セミナーの日程
7月 7/28 ミツトヨ大阪 7/30 ミツトヨ福岡
8月 8/25 ミツトヨ宇都宮 8/26 ミツトヨ川崎
9月 9/1 ミツトヨ安城